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自分流塾「合言葉は熱血、この意味を説く」 Posted on 2022/12/10 辻 仁成 作家 パリ

ぼくは自分を奮起するためのいくつかの言葉をつねに携帯している。
その中でも、「熱血」という言葉は即効性があるので、人生に躓きそうになった時とか、起き上がれない時とか、心が折れそうな時など、頻繁に口ずさんでいる。
「熱血~」
力をこめて、繰り返し唱える時、ぼくは停滞しそうな我が人生を打破しはじめている。もちろん、ただの言葉なのだが、されど言葉だ。
単純明快でエネルギーに満ちた言葉の復唱は、眠っている底力を奮い立たせる効果がある。少なくとも何もせず布団の中で蹲っているよりは有効ではないか。
言葉には言霊が宿っている。
奈良時代に書かれた「古事記」にすでに言霊に関する記述がある。
日本人は古くから言葉の中に魂が宿っていると考え、それを実践してきた。
なので、祝辞などはより厳正に言葉が選ばれた。
難しいことはさておき、単純に、前向きな言葉に囲まれていると、上昇しかイメージされないので、これは大変有効なのである。
大丈夫、絶対大丈夫、と言い続ける方が、もうダメだ、ダメだ、というよりは間違いなく上昇運を運んでくるでしょう。

自分流塾「合言葉は熱血、この意味を説く」



ぼくはこれを「熱血」に置き換えている。
いい言霊が宿った言葉の優れた特徴は、その言葉を連呼すると、眠っていた自分の勇気が奮い立ってくる、という点であろう。
言葉の力で、自分を奮い立たせ、勇気を引っ張りだすのである。
もう終わりだ、もう無理、と言い続ける人間が、立ち上がれるわけがないのは自明だ。
このような後ろ向きな言葉は決して使っちゃいけない。
なぜなら、言葉が現実を引き寄せるからである。
元気が出る言葉には明るい未来がやってくる。暗く沈んだ悪い言葉にはそれにふさわしい現実しかやってこない。
何度も、ここで言い続けてきたことだけれど、人への悪口や陰口というものは、必ずなにがしかのブーメランを言った本人へとぶつけてくる。
そもそも悪口は邪気を呼ぶ。邪気は悪口や汚い言葉が大好きなのである。
理由はその汚い言葉の中に悪い言霊が生じるからである。
悪い言葉を吐き続ける人の心に邪気が堆積していく。そして、最終的にその悪い言霊に滅ぼされてしまう。
美しい言葉、清い言葉、優しい言葉を選んで生きていれば、自ずと、善い言霊によって、悪が浄化され、魂も澄んでいくのだ。
これが言霊の恐ろしさであり、言霊の有難さでもある。

自分流塾「合言葉は熱血、この意味を説く」



自分を奮い立たせたければ、他人を押しのけるような言葉は紡がず、熱血、と叫んでいるのが正解なのだ。
「熱血」
と言い続けて、自分をその気にさせる。
これこそ、誰にも迷惑をかけない、真の前向きの第一歩なのである。
人間をポジティブにさせる一番の道具は「言葉」なのだ。
自分を奮い立たせることが、夢を実現させる一番最初の仕事ということになる。
その後、それを実現させる「努力」へと続く。有言実行、ということだ。
「言葉」と「努力」が結びつくといつしか「運」が生まれてくる。
なので、合言葉は熱血、なのである。
よい。

自分流塾「合言葉は熱血、この意味を説く」



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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。