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自分流塾「ここに突破口あり!長年、続けてきた自分流塾が一冊の本になりました。」 Posted on 2023/03/25 辻 仁成 作家 パリ

新刊のお知らせである。でも、普通のお知らせではない。
長年、デザインストーリーズ紙面で連載を続けてきた「自分流」がまとめられ、光文社から「自分流~光る個性の道を行く」と名付けられ、発売されたのだ。めでたい。
この連載は、個性とは何か、自分らしさとは何か、このめんどうくさい世の中で、自分らしさを失わず、周囲に翻弄されず、自分をしっかりと持って生きていくにはどうしたらいいのか、を父ちゃんの63年間の経験をもとに書いた、熱血メッセージなのだ。
とにかく、生きることは面倒くさい。ぼくは携帯のメモ機能によく考えたことを殴り書きしているのだけれど、それはだいたいこの生き難い世界への強い反骨メッセージなのである。たとえば、
「死にたいと思ってもいいけれど、本当に死んだらダメだ」
とか、
「死ぬのさえも面倒くさいんだよ!」
とか、
「逃げてもいいけど、負けんじゃねーよ」
とか、
「果たして自分が壊れるまで人にやさしくしていいのか?」
などなど、その時の自分に向けて、思ったことを書き殴っている帳面があるのだ。
そこのタイトルがまさに「自分流」なのであった。
こういう世界なのだから、自分流を持って生きた方が楽だ、と書かれてあるのである。
そこから、この連載がはじまった。

自分流塾「ここに突破口あり!長年、続けてきた自分流塾が一冊の本になりました。」



つまり、本書は、自分自身へむけたこの世界を生き抜くための一冊なのであった。
それを連載したら、多くの読者の心に届いたようで、その中の一人が、光文社の編集者Hさんなのであった。
ある日、Hさんから
「辻さん、これわたしのために書かれたエッセイなんです。うちで、ぜひ、本にさせてください」
というメッセージが届くことになった。
この本は、ぼくもそう思って自分に向けて書いたし、そういうものを読んだ誰かが、これは私に向けて書かれた一冊なんだ、と思ってもらえたらいいな、と思って書いた。
ぼくは、光文社で、というよりもHさんがまとめて世に出せばいいんじゃないか、と思った次第なのである。
「自分流」っていうのは、まさに、自分で自分をばんばんするということだから、自分で自分のケツを叩くでもいいし、自分で自分を励ますでもいいが、とにかく、自分で問題を解決して、自分らしさを取り戻すための哲学なのである。
そういうエッセイばかりが集められた本書は、元気がないあなたを心底やる気にさせる一冊であるに違いない。
たまたま、光文社から出ただけで、そこは重要じゃない。
でも、光文社の営業部の中の誰かにもきっと届くと思うし、その営業の方が、届けた書店の店員さんにも響く本なのではないか、と思うのである。
じっしつ、辛い世の中だけれど、悲観する必要もない。
なぜなら、そこに自分がどっしりとあれば、ぜったいに、負けることなんかないからだ。
じゃあ、どうやって自分らしさを見つけるのか、ということである。
ぜひ、この一冊を手に取って貰いたい。
ここに突破口がある!

自分流塾「ここに突破口あり!長年、続けてきた自分流塾が一冊の本になりました。」



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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。