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ドイツのクリスマス飾り「アドベント・クランツ」で温かく穏やかなひと時を Posted on 2022/12/14 中村ゆかり クラシック音楽評論/音楽プロデューサー ドイツ、エッセン

11月も終わりに近づくと、ドイツが最も輝いて見える季節、そう、ドイツ人にとって最も大切なアドベントの季節がやって来る。
コロナ禍の今年、街を彩る風物詩のWeihnachtsmarkt(クリスマス・マーケット)は中止に。緩やかなロックダウンの再延長も決まり、友人や知人と毎晩のように美味しいものを囲んで過ごす、アドベントの華やいだ時間は、とうてい持てそうにない。

いつもとは違うこの季節。それでも、やはり1年に一度の大切なクリスマスであることに変わりはない。温かく穏やかな気持ちで、この季節を過ごすために、ドイツ人の友人たちも、それぞれに自宅を飾り、お祝いの準備を整えている。

ドイツのクリスマス飾り「アドベント・クランツ」で温かく穏やかなひと時を

数あるドイツのクリスマス飾りの中でも、アドベント・クランツAdventskranzと呼ばれるクリスマスのリースは、ドイツの伝統的な木製のクリスマス飾りや、ツリーなどと共に、一家に1台置かれるドイツのクリスマス飾りの定番だ。アドベントAdventとはキリストの降臨を、そしてクランツKranzは冠、輪(リース)を意味し、常緑樹の枝を用いてリースが作られる。

このドイツのアドベント・クランツ、日本でお馴染みのクリスマス・リースとは違い、扉や壁に掛けて飾らない。もちろん壁掛けタイプも存在するが、多くの場合、食卓やリビングのテーブルなど、生活空間の中心に水平に置かれ、その上に4つの蝋燭を飾る。そして、待降節と呼ばれるクリスマスまでの4週間、4回訪れる日曜日が来るたび、飾られた蝋燭1本一本に火を灯して、来るクリスマスを待ち望むのだ。

ドイツのクリスマス飾り「アドベント・クランツ」で温かく穏やかなひと時を



ドイツのクリスマス飾り「アドベント・クランツ」で温かく穏やかなひと時を

そもそも柔らかな光と影を生む蝋燭の火は、陽の光を感じることのない、暗く寒いドイツの冬の生活の中で、なくてはならないものだ。そんな蝋燭の中でも、アドベント・クランツに飾られる蝋燭は、ドイツの暮らしの中で間違いなく格別なものと言える。クリスマスが近づき、日曜日を重ね、灯された蝋燭の火が増えていくたび、穏やかで温かな気持ちが幾重にも重なっていくように感じる。

例年であれば、アドベントの期間、このアドベント・クランツを囲んで、夜は食事会、日中はクリスマス特有のスイーツ会(伝統的には女性のみの女子会が多い)が開催される。とにかく甘いものが大好きなドイツ人。料理は苦手でも、甘いものは得意!という人がたくさんいるほど、お菓子作りは彼らの日常の中にある(欧州第1波のロックダウン下で、ドイツのスーパーから最初に無くなったものの一つが粉ものだったというのは、いかにもドイツ人らしい)。

ドイツのクリスマス飾り「アドベント・クランツ」で温かく穏やかなひと時を

ドイツのクリスマス飾り「アドベント・クランツ」で温かく穏やかなひと時を



そんなドイツ人のクリスマスの準備は、クッキーを焼く事から始まると言われる。多い人は10種類以上、とにかく大量のクッキーを数日かけて焼いていく。あまりに重労働なので、私もこれまで何人かに助っ人に呼ばれたこともある。ドイツではアドベントの時期、職場でも自宅でも、必ずテーブルにクッキーが置かれ、来客や家族と楽しむことが習慣になっている。
実は甘いものが苦手な私。この時期のドイツ人による甘いもの攻めは毎年恒例の拷問のようだったけれど、今年はそんな甘いものが攻めて来ないことすら、寂しくも感じる。

ドイツのクリスマス飾り「アドベント・クランツ」で温かく穏やかなひと時を

ドイツのクリスマス飾り「アドベント・クランツ」で温かく穏やかなひと時を

ドイツのクリスマス飾り「アドベント・クランツ」で温かく穏やかなひと時を

今年は11月29日が、クリスマスまでの4つの日曜日の最初の日曜日=第1アドベントにあたる。コロナ禍で迎えるいつもと違う季節だけれど、蝋燭にも心にも、変わらない温かな火を灯していたいと思う。緑の枝と蝋燭があれば簡単に作れるアドベント・クランツ。ぜひご自宅に飾って、クリスマスの季節を愉しんでみてください。穏やかなアドベントを、世界中でたくさんの人が迎えられますようにと祈って止みません。

ドイツのクリスマス飾り「アドベント・クランツ」で温かく穏やかなひと時を

編集部より。
この記事は2020年、コロナ禍が今よりもひどかった時期に書かれています。筆者の中村さんより、以下の追伸が当時ありました。


コロナ禍で大変な思いをしている飲食店や文化施設の協力を得て、音楽で人と街をつなぐというコンセプトのもと、小さなMVを作りました。出演する3組の演奏家も、大変な思いをしています(最初のチェリストは、留学するNYのジュリアード音楽院に3月から戻れずにいます)。
ぜひ皆様に、ご覧いただければ幸いです。

https://youtu.be/msaDjEXeKJk



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Posted by 中村ゆかり

中村ゆかり

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Yukari Nakamura
専門は、フランス音楽と演奏史。博士課程在学中より、音楽評論とプロデュースを始める。新聞、雑誌、公演プログラム等の執筆、音楽祭や芸術祭のプロデュース、公共施設、地交体主催の公演企画、ホールの企画監修などを手掛ける。また5つの大学と社会教育施設でも教鞭を執る。2016年よりドイツ在住。