PANORAMA STORIES
プロヴァンス流 人生を謳歌する術 Posted on 2017/03/22 町田 陽子 シャンブルドット経営 南仏・プロヴァンス
フランスでは、かかりつけ医は自分で選び、契約をしなくてはいけない。
なので、別の町に引っ越しをしたあとは、新しい医者探しが必須。
昨年末に引っ越した私たちは、年が明けてずいぶん経ってから、慌てて探し始めた。
さっさとやらないと健康保険が下りないどころか、ペナルティまで払わされるらしい。
あるドクターを知人から紹介され、初めて訪れた待合室でのこと。
30分ほど待っている間に、ふと見ると、診察室のドアに、こんな手書きの貼り紙があった。
「こんな人を知っています。タバコをやめ、お酒をやめ、セックスも飽食もやめ、彼はたいへん健康になりました。自殺するその日までは」
ドアを開けて中に入ると、初めて会う目の前の医者は、花柄のカラフルなシャツに黒のスリムジーンズ。年の頃は47歳くらいだろうか。すらりと背が高い。
医者というより、ミュージシャンみたい。聴診器より、ギターのほうが似合いそうだ。
にっこり微笑みながら手を差し出し、握手しながら、「どうされましたか?」と先生。
私は、病状の説明ではなく、「先生、あの貼り紙、面白いですね」と言った。
先生は、「あぁ、あれ。ブルターニュの人なんだけどね。ホントのことなんですよ」
私「事実としても興味深いけど、先生がなぜそれを書いて貼ったかのほうが興味あります。だって、ここ病院でしょう? ふつうは、タバコもお酒もやめろという場所ですよね」
あはは、と大笑いしたあと、
「僕は医者という立場上、アドバイスはするけど、禁止はしない。人生に禁止はいかん。あれもダメ、これもダメじゃぁ、生きている意味がない。人生は楽しむものですからね」
もともとフランス人を含むラテン民族は、決して禁欲的ではないように見受けられるが、それでも昨今はタバコやお酒には厳しいし、わざわざ、このような文言を貼っておくということは、禁欲的生活を強い(られ)ている人がそれなりにいるのだろう。
ドクターは私の症状や検査結果にもいたって楽天的で、「これはもう、遺伝だからね、食べ物とかは関係ないから、しばらくこの薬飲んでみて」と言って、処方箋をさらさらと書いてくれた。
私はその場で先生と契約を結び、今後よろしくお願いしますと握手を交わし、お別れした。
こんな医者なら、病気になったときも気楽に相談できそうだ。
私は東京からプロヴァンスに移り住み、20年来の偏頭痛も、扁桃腺炎も、足の甲の変形も治ってしまった。
嘘のようだが、移住後、ふと気がついたら、治っていた。
我が家にお泊りにいらっしゃった、ある日本人女性のお客様も、3泊目の朝、
「私、毎日頭痛薬を飲んでるくらいの頭痛もちなのに、ここに来てから、ぴたりとおさまってるんです。どうしてかしら??」
ダヴィッドがいつも言っている。
「ここには光セラピーがある」
1年のうち300日は晴れるというプロヴァンスでは、皆、戸外が大好き。
高いビルもないので、広々とした青空がいつも見える。
日当たりのいいカフェテラスで全身に太陽を浴びている人たちは、誰もが幸せそうだ。
ここでは、太陽が当たる席が一等席。
そういえば、血液検査でビタミンDが不足していたときなど、医者から「外で太陽にたっぷり当たっていらっしゃい」と言われたことが何度かある。
生粋のプロヴァンス人である、相棒のダヴィッドを観察しているとよくわかる。
彼は、禁欲とは真逆なエピキュリアンであり、家では短パンひとつで、テラスで太陽を浴びるのが至福の時。
ぽっくり亡くなる人がプロヴァンスに多いのも無関係ではあるまい。
美食、お酒、タバコを愛するある男性(60代後半)は、大好きなレストランで食事中にぽっくり。
別の男性は、病気であったが、ラスベガスへ若い妻と旅行へ行き、カジノで一儲けしたあと、外のベンチでぽっくり。
嘘のような、本当の話。
人生を謳歌したいなら、プロヴァンス人を見習うといい。
<外へ出たくなった人へ>
ピクニックのお供に・・・
南仏のサンドイッチ「パン・バーニャPan Bagnat」のレシピ
※南仏にはパン・バーニャ専用のパンがありますが、日本では手に入らないので、バーガー用のバンズ、バゲットなどを使用。
①バンズ、またはバゲットを横にカットする(完全に切りおとさず、上下をつなげておく)。
②中に、オリーブオイルで軽く味付けしたレタス、トマト、ツナ、そして、アンチョビ、種を取った黒オリーブ、ゆで卵をはさむ。
これで完成。
つまり、ニース風サラダをはさんだサンドイッチなのです。
その他、お好みで、細長くカットした黄色や赤のパプリカを入れると、色鮮やか!
Posted by 町田 陽子
町田 陽子
▷記事一覧Yoko MACHIDA
シャンブルドット(フランス版B&B)ヴィラ・モンローズ Villa Montrose を営みながら執筆を行う。ショップサイトvillamontrose.shopではフランスの古き良きもの、安心・安全な環境にやさしいものを提案・販売している。阪急百貨店の「フランスフェア」のコーディネイトをパートナーのダヴィッドと担当。著書に『ゆでたまごを作れなくても幸せなフランス人』『南フランスの休日プロヴァンスへ』