朝ごはんの時間が、毎日のささやかな楽しみとなっている。まず、起きたてに飲む目覚めのコーヒー。まだ眠たいぼんやりした脳内にじんわりとカフェインが染み渡る。私の１日はそうして始まる。
コーヒー自体に特にこだわりはないので、インスタントを愛用。食べているものはいつも決まっていて、果物とパン、ジャムにバター、そしてヨーグルト。これは日本にいるときから変わらない。でも、朝ごはんの時間をこんなにも待ち遠しく感じるようになったのは、間違いなくフランスに来てからのこと。その理由はクロワッサンでもパンオショコラでもなく、ずばり、ヨーグルトなのだった。
 

 
フランスは言わずと知れた酪農国家。バターやチーズがおいしいのはもちろんのこと、ヨーグルトの存在を忘れてはいけない。スーパーに行ってまず驚いたのが、その量の多さ！こっちの端からあっちの端まで全部ヨーグルト、という具合に、棚一列全部を占領している。日本で見るヨーグルトコーナーのおよそ５〜６倍はあるのではないかと思われる。これだけ多いと、いつもウロウロしながら今日は何にしようかなあと迷ってしまう。お値段は大体どれも４パックのセットで2~3ユーロ台。味の付いてないナチュラルだと、探せば1ユーロ以下で買えるのもあり、試してみたらこれもなかなかおいしい。最安値商品でもおいしいのは、きっと牛乳自体の質が良いからなんだろうなあ。
 

 
味の種類も無限大。バニラやフランボワーズ、レモン、プルーンなどの定番から、パッションフルーツやキウイ、アプリコット、マンゴー、いちじくなど、あるゆるフレーバーが存在する。Citron vertというのも見かけ、直訳「緑のレモン」？と思ったら、これはライム味なのだそう。普通のレモン味よりもほのかに苦味があり、爽やかさが感じられた。他にも、上の写真のように山羊さんの絵が書いてあったら、それは山羊のミルクから作られたヨーグルト。山羊のチーズも結構匂いが強めだけれど、ヨーグルトはそれに輪をかけて癖が強い。羊のヨーグルトの方がまだマイルドなので、最初に挑戦するなら羊からがおすすめ。
 

 
そして何よりも特筆したいのはこれ、ココナッツ(Noix de coco)味！もう本当にこれ、衝撃的なおいしさだった（レベチ、というやつです笑）。ココナッツ味があるというのを最初に知ったのは、ホストマザーから「食べてみる？」と一口味見させてもらったとき。ヨーグルト革命が起こった、と思った笑。冗談抜きで。ココナッツの優しい甘さとヨーグルトの滑らかさがとにかく相性抜群で、特有の風味があり、今までに食べたことのない初めての味だった。種類もメーカーごとにたくさんあって、甘さがあるものとないもの、果肉の粒が入っているもの、ココナッツミルクから作られたものなど、片っ端から試してみた。結果、ココナッツのフレーバーならどれもハズレなくおいしいということがわかり、他の味が全く目に入らなくなるほどハマってしまった。ヨーグルトを食べてよもや感激する日が来ようとは、正直思ってもみなかった。日本では食べたくて食べていたというよりも、健康のために毎朝摂取していたようなものだったので、ここまでヨーグルトを好きになったのには自分でも驚いている。
 

 
好きが高じた結果、本物のココナッツにも手を出してしまい（フランスでは1ユーロくらいでスーパーに売られている）、無知な私は買った後で割り方を知らないことに気がついた。検索して驚愕し、大変な思いをしながらあの手この手を使ってなんとか殻を粉砕し、削り取った果肉をココナッツヨーグルトに振りかける、という贅沢な食べ方もしてみたのだった。自分でも思い出すと滑稽だが、要はそれくらい、ココナッツ味の魅力に取り憑かれていたわけである。
 

 
今や朝ごはんのお供に欠かすことのできないヨーグルト。冷蔵庫にいくつかストックしておき、今日は何にしようかなと選ぶ時間は毎朝の小さな幸せである。1日の始まりは、おいしい朝ごはんから。