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日本とこんなに違う、フランスの焼き鳥事情 Posted on 2022/09/11 ルイヤール 聖子 ライター パリ

 
日本の焼き鳥は海外でも人気があります。
しかしここフランスにおける焼き鳥は、独自の進化を遂げ(過ぎ)ている気がします。
パリを中心に、日本人経営でない和食屋さんはフランスに多くあります。
そして彼らの営むお寿司屋さんにはなぜか、焼き鳥メニューが必ず存在しているのです。
 



日本とこんなに違う、フランスの焼き鳥事情

 
例えば、そういったお店でセットメニューを頼むとします。
すると来るのは写真のような、お刺身、2、3貫のお寿司、巻き寿司、焼き鳥丼、キャベツのマリネサラダ、味噌汁、です。
どう考えてもご飯の量が多い…のですが、ほとんどの和食店(日本人経営以外)ではこういったセットを提供しています。

ただそれ以上に驚くのが、フランスの焼き鳥がオリジナルの域を超えて、もはや「鶏」ではなくなっているところ。
今回ご紹介したいと思ったのは、そのなかでも定番中の定番である「牛肉チーズ串」です。
 

日本とこんなに違う、フランスの焼き鳥事情

地球カレッジ



 
フランスではこの牛肉チーズ串があまりにも流通しているものですから、YAKITORIの代表といえばこれ、と思っている方が多いです。
肉厚のチーズに、薄切りの牛肉を巻いてタレでいただくスタイルで、アジア系の惣菜店や冷凍食品店にも売られています。

最初の頃こそ食べるのを拒否していた私ですが、いざ食べてみると、普通に美味しい。
焼き鳥の先入観を外せば、それほど気になりません。
ところで日本の焼き鳥は、寿司、ラーメン、餃子と同じくらいフランスで人気があります。
ベジタリアンやヴィーガンを除けば、ほぼすべての人が好き!と感じる食べ物なのではないでしょうか。
ですから焼き鳥も、「フランス人の口に合うようにどんどん進化を遂げていった」という解釈になります。
ネタはサーモン、ホタテ、海老、鴨など何でもござれ。焼き鳥というよりは、ほとんど串焼き料理ですね。
ただしホルモンだけは好まないようです。
 

日本とこんなに違う、フランスの焼き鳥事情

※ネギマとあるのに、ネギのない焼き鳥も



 
もう1つ、フランスの焼き鳥の特徴といえば、味付けがタレ一択であることです。
素材の味を楽しむには塩だけの焼き鳥が良いような気もしますが、なぜかフランスにはない。
つまり、フランスの人々は焼き鳥のタレが大好きなのです。
これはやはり、フランス料理のソース文化から来ています。彼らはたっぷりのタレで焼き鳥を、そして余ればご飯にかけて食べたりしています。(タレはゆるめです)
 

日本とこんなに違う、フランスの焼き鳥事情

 
冷凍食品の焼き鳥も特徴的です。
大手ピカールには「Japon」という和食シリーズがあって、焼き鳥は3種類もあります。
その中の焼き鳥セット(12本入り、写真左下)はなかなかに衝撃的でした。
セット内容はこうです。
“ショウガ&ピーナッツソースの焼き鳥”、“レモングラス&ココナッツミルクの焼き鳥”、“醬油タレのつくね”と、つくね以外はもう日本ではない。
かなり甘いタレのつくねだけが唯一、和食らしさを保っていました。

フランスには「brochettes(ブロシェット)」という立派な串焼き文化があります。
これは肉や野菜を長めの串に刺したもので、家庭でもバーベキューなどでよく食べられています。
ということで、こちらの焼き鳥はフランス流にアレンジが効いていてほぼ串焼き、なおかつタレが主流となっています。
もしフランス人が本場日本の焼き鳥を食したら、そのクオリティの高さに驚いてしまうかもしれませんね。
 

自分流×帝京大学



Posted by ルイヤール 聖子

ルイヤール 聖子

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2018年渡仏。パリのディープな情報を発信。
猫と香りとアルザスの白ワインが好き。