PANORAMA STORIES
週末の森散歩 Posted on 2024/11/18 堀内 ありさ 学生 サンジェルマン・アン・レー
天気の良い休日には、近所のお城までお散歩に行くことにしている。
「お城までお散歩」
日本ではちょっと考えられないフレーズ。ああ、ヨーロッパ、それもフランスにいるんだなぁとしみじみ感じてしまう。まずはちょっとパン屋さんで寄り道をして、おいしいヴィエノワズリー(お菓子パン)を用意。散歩のお供は大体シューケット!
軽くて小さい一口サイズのシュー生地で、優しい卵の味がふんわりと広がる。口に入れたら一瞬で溶けちゃうから、気がついたらいつの間にかなくなっている笑。
以前ご紹介したサンジェルマン・アン・レー城の真向かいは、教会になっている。そこの石段に腰かけて、お城を見上げながらシューケットを食べるのが、週末のささやかな楽しみ。ここでぼーっとしながら、道ゆく人たちを観察するのもまた面白い。
お城の隣の庭園も美しいお散歩コース。ここの庭を作ったのも、ヴェルサイユ庭園でおなじみの、ル・ノートルさん。
庭の敷地はとにかく広い。遊具で遊ぶ子どもたち、ピクニックをしている人たち、昼寝している人、わんちゃんのお散歩をしている人など、みんな色々。カフェも3つくらいある。
原っぱを横切る騎馬警官にも遭遇。わぁ、こんな所に馬のお巡りさん!と思って急いで写真を撮ったけど、周りは誰も反応していなかった笑。どうやらいつものことらしい。
そうそう、ここから見えるパノラマも最高。遠くにはラ・デファンスのビル群や小さなエッフェル塔がうっすらと見えて、ちょっとした景勝地となっている。
公園を突っ切ってさらに奥に進んでいくと、いよいよそこは森の入り口。ガイドさん情報によると、サンジェルマン・アン・レーは全体の75%が森で覆われているんだとか(え、ほぼ森じゃん笑)。それにもかかわらず、私はここに来てからまだ一度も森の中へ入ったことがなかった。特に何か理由があったわけじゃないのだが、迷ったら嫌だなというのと、何となく物騒なイメージなのもあって、いつか行ってみようくらいにしか考えていなかった。しかし、2ヶ月が過ぎてもまだ行こうとしない私に、痺れを切らしたホストマザーは言った。
「この街の魅力は森です。森に行かないとこの街の魅力は分かりません。」
「はい行きます。」(即答)
ということでようやく森の中へ。
まだ明るい時間だと、歩いている人も一定数いる。とはいえ初めての場所で迷ったらやっぱり怖いので、右や左に曲がったりせず、ひたすら真っ直ぐ進むことに。森には終わりがないから、どこかで引き返して来ないとならない。
しかし、そんな心配もよそに、私の心は早くも森の魅力に捉えられてしまった。一歩足を踏み入れると、辺り一面がしんとした静寂に包まれる。奥に進めば進むほど、緑の輝きはより一層神秘の色味を帯びてくる。静けさの中を漂う鳥のさえずりと、微かな葉のさざめきが耳に心地良い。見上げると、澄み渡った青空が時折覗く。これが森の魅力か…。なんか、精霊が出てきたのかと思うような写真まで撮れてしまった。このまま光の絨毯を歩き続けて行ったら、どこか別世界に誘い込まれてしまいそうな気がした。
そしてこの日は迷うことも異世界へ連れていかれることもなく、無事地上へ戻って来られた。たしかに、こんなに素敵な森が近くにあって、行かないのはもったいない。季節や天候、時間帯によっても、見える景色はまた変わりそう。勉強に疲れたら、お城の横からお庭を通って、また森の中までお散歩しに来よう。
Posted by 堀内 ありさ
堀内 ありさ
▷記事一覧大学4年生、文学部。フランス、サンジェルマン・アン・レーに交換留学(2024-2025)。
ピアノと外国の児童文学が好き。