PANORAMA STORIES

失敗しない毎日と失敗続きの毎日と Posted on 2017/03/18 ワダシノブ イラストレーター イタリア・トリノ

失敗しない毎日と失敗続きの毎日と

失敗しない学校選び・失敗しない受験・失敗しない就活・失敗しない合コン・失敗しない離婚・失敗しない病院選び・失敗しない年金生活・失敗しない終活・・・。
ありとあらゆる分野の「失敗しない」というキラーフレーズ。
この通りにステップを踏めば失敗しない。服をこう着れば失敗しない。ふむ。

でも失敗ってなんなんだろう? と考えてみる。
「失敗 やってみたことがうまくいかないこと・し損なうこと。(広辞苑)」

それなら、失敗することは私のイタリア生活そのものだ。
「やってみたことがうまくいかないこと」は私にとっては当たり前だから。失敗のセミプロ。

送った荷物がいつになっても届かない。
買物にいけば、閉店までまだ時間があるのに、店に入れてもらえない。
買ったノートは英語のノートのような予想外の罫線がetc
 

失敗しない毎日と失敗続きの毎日と

いちいち失敗をカウントするのが馬鹿らしくなるほど、毎日失敗だらけ。
お店の人に嫌な顔をされたりしながら日々を送っている。もちろん、人から怒られれば凹むし腹も立つ。
毎回、次回からはもっと上手くやるぞと心に誓っている。
(実際は、怒られたら、あいつのとこにもう行くもんか! と心の中で悪態をついて終わりだけど。)

が、失敗が多いことにも良い点はある。それは、失敗する自分に慣れるということ。
「私がダメだから・・・。もっと良くなるように反省・・・」と自省するのではなく、
「ま、そういう日もあるよね。今日は運が悪かった。次行ってみよう!」と、受け流せるようになるのだ。

そして、自分がよく失敗する人間だと認めると、人の失敗にも寛容になれる。どんなに準備をしていても人は、失敗する。気づくと私は日本の役所で待たされてもあまりイライラしなくなっていた。

イタリアの人々は失敗に慣れているからは他人の失敗にも寛容なのかもしれない。
たとえ電車が10分遅れても(もちろん文句は言うけど)声を荒げて駅員や運転手に詰め寄ったりはしない。乗務員に切れたところで、「仕方ないでしょう。それは私のせいではない。」という返事が返ってきておしまい。
遅延や事故は起こるもの、だって人は失敗するのだから。そして、他人の失敗を責めるではなく、軽口を叩いて(嫌味だったりすることも多いけど)先に進んで行く。失敗を責めても仕方ないから。

朝から目一杯予定を詰め込んで、タスクをこなしていくような生活はここではできない。
仕事して、買物して、銀行に行って、ついでに病院に行って、役所に行って、帰ったら荷物を受け取るという秒きざみの生活は日本以外では不可能だ。
 

失敗しない毎日と失敗続きの毎日と

10のことを1日でするために、急いで急いで必死になってなんとかやっちゃう日本。
10のことが10日でも終わらないイタリア。
効率では日本が優る。だけど、効率が良いからってなんなんだろう? と思うこともたくさんある。
その10のすべきことって、言ってるけど。本当に全部すべきこと? という問いが存在していないから。
全てできないと失敗って誰が決めたのだろう?

日本では人々は失敗しないよう注意を払って、最短時間で目一杯のタスクをこなしている。
そして。大体の場合目一杯すぎる。
イタリアから見ると日本の生活は、「全てのタスクが失敗せずに終わったら、のんびり過ごす。つもりだったけど、空いた時間に更に別のタスクが追加され、更に忙しくなる。」っているようにみえるのです。

何のための時短? 失敗しないからなんだ?
「失敗したけど、楽しかった。」と言ってしまう。
「失敗したと思ったけど、最終的にはよかった。」なーんてこと、たくさんあるんだから。
と、失敗のセミプロである私は思うのだ。

これは、クリスマスプレゼントが2月の終わりにやっと届いたことへの、負け惜しみなんかではないはず・・・
なんだけどなぁ。
 

Posted by ワダシノブ

ワダシノブ

▷記事一覧

SHINOBU WADA
イラストレーター。マンガも描きます。広島生まれ。2007年夫とともにイタリアに渡る。子ども2人。夏は広島、秋春冬はトリノの2拠点生活。合気道の修行中。