PANORAMA STORIES
不屈な精神力って何だろう Posted on 2016/11/07 岡崎 慎司 プロサッカー選手 スペイン・カルタヘナ
諦めない気持ち、這い上がる気持ち、周りを見返してやりたい。
そんな熱い思いを持ち続けるって実はそんなに簡単じゃないってことを僕は知ってる。
実際、サッカー以外のことでいえばほとんどのことが妥協だらけだ。
好きなコンピューターゲームでさえクリアの途中で必ず挫折し、時には退屈になって、放り出してしまうことがしょっちゅう。一人暮らしをしてた頃、掃除、洗濯、食べることにしたって、本当にやらなきゃいけない状況にでもならない限り、僕はやらなかった。
いざ何かをやろうと思い立っても、3日坊主で終わることがほとんどだった。
やらなければやらなくたって気にならないし、誰にも咎められることもない。
僕がそれらをやらないからといっていったい誰に迷惑がかかるのだろう。
そう思っていた。
じゃあ、何故サッカーはやり続けることが出来てるのか?
じゃあ、何故その他のことは続かないのだろう?
「不屈の精神とは何か」と人に問われたことがあった。
不屈であるかないかということよりも、やり続けたいと思うからこそ不屈の精神力が湧き上がってくるのだ、と僕は思う。そもそも諦めない気持ちとか不屈とか意識して物事に挑んだことがない。
やりたいか? やりたくないか? やりたいならどうする?
今の現状を受け止めた上で僕は行動をとる。シンプルだけどこれの繰り返ししかないような気がする。
「やりたいからやる」というだけでは、不屈とは言わない。
僕の中の不屈とは現状を受け止めた上で行動するということだ。そこまでやってやっと自分の中に逆境に立たされても諦めない意志が生まれる。
努力というのは実は第三者が見て判断することなんかじゃない。
現に僕は「努力してるね」と言われることが大嫌いだ。
どれだけ妥協や失敗を繰り返してきたであろう。
でもそれを受け止め反省して僕はサッカーを続けてきた。
逆に、自分はすごく努力してるだなんてうぬぼれたら、サッカーを続けることなんか出来なかったのじゃないか?
やりたいからやる。
そして続けるためには現状を受け止めないとならない。
現状を受け止める。
こんな姿勢で僕は今までサッカーと向き合ってきた。
もちろん今だから言葉で思いを説明出来るが、子供の頃は出来なかった。
僕はいつからこんな風に考えることが出来るようになったのだろう。
中学生の頃、僕は足が遅いというコンプレックスを抱えていた。
たぶん、あの頃からだったと思う。
サッカーをやるには普通の速度だと気付いてしまい、焦り出した。ありとあらゆる走るトレーニングを取り入れた。
しかし、小学生の時のように足で勝負するタイプではなくなっていた。いつしか「俊足」と言われるのが僕のコンプレックスになる。実は、今でもチームメイトの中では遅い方だと自覚している。
けれどあの頃からだった。
どうやったら足が速くなくても勝てるのか、どうやったら足が速くなくても試合に出ることが可能か、どうやったら俊足でなくてもゴールを決めることが出来るのか? と考えるようになるのは・・・。
自信と不安の危ういバランスの中で、まさに自分自身を保とうとする時、僕は不屈の精神に辿り着く方法を見つけることが出来た。
そして乗り越える壁が大きければ大きい程、自分はまだ試されているのだということに気が付いていった。
このまま俺は終わるの?
いいのかそれで?
やれること全部やったか?
いいのかそれで?
自問自答を繰り返したその先にこそ、一筋の光がある。
誰もが想像してなかったことを出来た時にこそ、不屈であることの快感を味わうことが出来る。
僕が絶対に諦めない理由は、がむしゃらに我が道を突き進むことを、誰かに認めてもらいたいと思い続けてきたからかもしれない。
僕はコンプレックスの塊なのかな?
人間、コンプレックスは大事だよ。
そのコンプレックスが僕を強くタフにさせている。
それが不屈の源にある。
Posted by 岡崎 慎司
岡崎 慎司
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プロサッカー選手。1986年4月16日、兵庫県宝塚市生まれ。滝川第二高校を経て2005年、Jリーグ清水エスパルスに入団。チームの中心選手として活躍する。2011年ドイツ・ブンデスリーガのVfBシュツットガルトへ移籍。2013年マインツでプレー後、2015年イングランド・プレミアリーグのレスター・シティに移籍。レスターがプレミアリーグ初優勝。現在はFC CARTAGENA、カルタヘナ活躍中。ポジションはFW。