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挫折と決意で築いてきた僕と日本代表の関係 Posted on 2017/04/23 岡崎 慎司 プロサッカー選手 スペイン・カルタヘナ

小さい頃からプロサッカー選手になって日本代表に入るという夢を持っていた。
その後、フランスW杯、日韓W杯、ドイツW杯、あるいはフレンドリーマッチやW杯予選などを見るようになり、正直なところ、それがあまりに凄すぎて、自分には手の届かない大会なのかなとも思うようになっていった。
そんな遠い存在を夢みて追いかけるより、身近な目標の方が僕には大事じゃないか、と。
プロになってからも僕の中で日本代表が目標になることはなかった。
それよりも、”どうやったらプロのサッカー選手として生き残れるのか” を見つけることに必死だった。

そんな僕の意識を大きく変えたのがオリンピックだった。
日本を代表して臨む初めての国際舞台だった。
僕はその時、本気で「メダルはとれる」と信じていた。
でも、結果は3連敗。結果以上に強く味わった敗北感を今でも忘れることができない。
あの時、国際舞台で負けることがこんなにも恥ずかしくて、悔しいものなのかと実感することができた。

僕の目標は変わった。

”世界を相手に戦える選手になりたい” 
単純な話だけれど、それだけで練習や試合へのアプローチまでもが変化した。
そして、その3ヶ月後、ついに僕は初めて日本代表に招集されることになった。
当時、僕はJリーグで好調だった。勢いもあり、初招集で初先発を手にすることさえできたのだ。

ヨーロッパで活躍する選手が中心だったが、時には国内組のみで臨む試合もあった。
試合に出るチャンスは少なくなかった。
日本代表として試合に出場しているうちに、僕の中である感情が芽生えるようになる。
”自分は日本代表としてふさわしいのか?”
なぜそんなことを思うようになったのかわからない。
しかし、この懐疑心を抱きながら、僕はJリーグで、そして日本代表としてプレーをし続けていくようになる。

若さと無謀さと勢いがあり、日本代表としてたびたびゴールを奪うことになる。
けれども勢いだけでは長く続かない。
南アフリカW杯では、国の代表として戦うプレッシャーに負け、弱気になり、先発から外されてしまったのだ。
ベスト16進出で沸く日本チームの中で、僕だけ悔しさでいっぱいであった。
あの悔しさを味わった時、僕は、「日本代表に必要なのは、強いメンタリティーと戦う気持ち、そして世界での経験」なのだと気が付いた。
「海を渡り、異国の厳しい環境の中で経験を積もう」と決意するようになる。
日本代表に対する意識が変わり、日本代表に生き残ることに固執するより、まずは世界と戦える技術、そして自信、メンタリティを身に付けたい、と思うようになった。

半年後、ドイツのシュトゥットガルトに行くことが決まる。
試行錯誤の連続で、どうすればヨーロッパでFWとして活躍できるか、が課題であった。
必死だった。自分を追い込んでいた。もう後がなかった。結果を出すしかない。
負けん気が後押しし、マインツではシーズン15ゴールを掴むことができた。よし、やれる、と思った。
でも、そう簡単に世界の壁を乗り越えることなどできやしない。そんなに甘いものじゃないのだ。
血がにじむ思いと努力を繰り返しても、そこには常に、さらに上の壁が立ち塞がる。
最高のコンディションと強い思いで臨んだブラジルW杯だったが、チームとしても、個人としても、あっけなく力負けしてしまった。

もう、次の世代のために日本代表を退いた方がいいんじゃないかとさえ考えた。

サッカーをやめようかとさえ思ったブラジルW杯。
再び無心でサッカーと向き合えるようになるまでにさらに2年の歳月を要した。
2年経ってようやくまた、サッカー選手としてもっと上を目指さなきゃ、というシンプルな情熱、意気込みを取り戻すことができたのだ。
そして、今、僕はプレミアリーグでプレーしている。

日本代表として戦うことは誇りであり、日本代表やクラブチーム、沢山のサポーターのためにプレーしないといけないという責任もある。
日本を代表するサッカー選手であるというプレッシャーと戦い続けることが、自分を成長させてくれたのだとも思う。
だけど、責任や名誉、プレッシャーに捉われすぎると自分の成長を止めてしまうこともあるのだ。
だから僕はもう自分のスタンスを変えない。苦杯をなめ続けるという苦い経験を超え続けてきたことで、自分には自信が生まれたのだ。裏打ちされた揺るぎのない自信だと思う。
日本代表というイメージに合わせるのではなく、自分がやっていることがいつか日本代表に還元されればいいんだ、と思った。

シンプルに自分の夢や目標と対峙するということ。
何かのために、などと狭めてはいけない。自分の意志で。

僕と日本代表は切っても切れない関係になった。
これからも呼ばれ続ける限り、僕は日本代表のために戦う。W杯だって諦めない。
その強い気持ちは昨日今日生まれたものじゃないからだ。

去年、僕は日本代表として100試合出場を超えることができた。
そして先日、日本代表として通算50ゴール目を決めることもできた。
それは僕が歩んできた道のりなのだ。長く曲がりくねった険しい道のりであった。
しかし、気負いはなく、もはや一点の恥もない。続く道の先へと歩み続けることができる今の自分を誇りに思い、ファンに感謝をしている。

僕にはまだ次の試合が待っている。さらに高い壁が聳えている。乗り越えてみせる。
 

挫折と決意で築いてきた僕と日本代表の関係

Posted by 岡崎 慎司

岡崎 慎司

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Shinji Okazaki
プロサッカー選手。1986年4月16日、兵庫県宝塚市生まれ。滝川第二高校を経て2005年、Jリーグ清水エスパルスに入団。チームの中心選手として活躍する。2011年ドイツ・ブンデスリーガのVfBシュツットガルトへ移籍。2013年マインツでプレー後、2015年イングランド・プレミアリーグのレスター・シティに移籍。レスターがプレミアリーグ初優勝。現在はFC CARTAGENA、カルタヘナ活躍中。ポジションはFW。