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エコ・フレンドリーに敏感なフランス人、Rで始まる3つのキーワードとは? Posted on 2021/08/03 ルイヤール 聖子 ライター パリ
フランスに住むようになって発見したのだが、こちらの国民には「断捨離」という美徳がない。携帯電話しかり。例えスマホの画面がボロボロに割れていても「まだ通話できるから」と言ってすぐに買い替えようとはしない。
フランス人は圧倒的に「捨てない」人が多い。物を捨てることを嫌がる。どうやら彼等には「捨てる」ことに抵抗があるようだ。
そんな国民性だからこそ、「エコ・フレンドリー」の概念はすんなり浸透したのだと思う。
パリのショップでよく見かける「リサイクル、サステイナブル、ゼロウェイスト」をテーマにしたプロモーション活動。マレ地区のセレクトショップ「Merci Paris(メルシー・パリ)」でも積極的にプロモーション活動が行われていた。
ところで、どこかまだ“西洋的”なこの意識改革だが、我々は急がなければならない。
最近のパリでは雪を見ることが少なくなった。日本の夏も30年前とは違い、まるで亜熱帯のような気候に変わってしまった。
現在、新型コロナ・ウィルスの猛威が世界中を恐怖に落とし入れているが、温暖化で南極や北極やシベリアの雪が解け、そこから眠り続けていた未知のウィルスがよみがえりつつある。
人類がバラまいてしまった“エゴ”は、回りまわって人類を攻撃してしまうのだ。
それを食い止めることができるのもまた、人類でしかない。
『La deuxième vie des choses(モノに第二の命を)』とネオンライトで書かれた「Merci Paris(メルシー・パリ)」の装飾ディスプレイ。
エコ・フレンドリーが決して敷居の高いものではない、と感じさせてくれる3つのワードがフランスにはある。
・Reduire…削減、ゴミを減らすために行動をする
・Reutiiser…再利用、使い捨てではなくモノに第二の命を与えて中古品を利用する
・Reparer…リペア、修理する
この“R”で始まるキーワードこそ身近でエコ活動を始められる、最たるもの。フランスでは本来のモノ作りが、少なからず“原点回帰”を意識し、多少コストは掛かっても“こだわりを持って良い物を作り続ける”ことにシフトしている。
仮に人類がエコ・フレンドリーを気にせず、このままの経済活動を続けるのならば、21世紀末には世界の平均気温が4度も上がってしまう。人間がまともに生活できる環境でなくなるのは火を見るよりも明らかである。
産業革命以降の平均気温の上昇を2度未満に保ちつつ、1.5度に抑える努力を追求することを世界の目標として定めた「パリ協定」が2015年に採択された。
それにともない、フランス政府は2016年7月1日から、スーパーマーケットでのプラスチック袋の提供を全面禁止に。
ただ、それだけでは俄然足りない。問題なのは、CO2を削減する技術も知識もあるのにも関わらず、それを実行に移していない世界各国の十分な政策と規制がないこと。もう政策を待たずに個人が各自で取り組み結果を出すしかない、というところまで来ている。
日本人の「断捨離」美学とフランス人の「捨てない」美徳は、実は表裏一体なのではないかと考える。
「断捨離」はもともと、もったいないという固定概念により凝り固まってしまった心を、ヨガの行法である断行・捨行・離行を応用したもの。
2009年に作家のやましたひでこ氏が、著書である『新・片づけ術「断捨離」』にて提唱したのが「断捨離」ムーブメントのきっかけとなっている。
ここで注目したいのが「離行」。それは、モノや人への執着から離れること。
新しいモノに執着しない点を考えると、日本もフランスも真逆のようで少し似ている。
人間には「余白」が必要だ。空間においても、思考においても。脳にだって“3R”が必要なときがしばしばある。
自然界からの猛烈な反発がくる前に(もういささか遅いかもしれないが)。生き物たちが消えてゆく前に。急ごう。
Posted by ルイヤール 聖子
ルイヤール 聖子
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猫と香りとアルザスの白ワインが好き。