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パリの素敵な壁紙デザイン。18世紀のサヴォワール・フェールを現代に! Posted on 2023/08/05 ルイヤール 聖子 ライター パリ

 
パリの美術館で、お宅で、ブティックで見かける、素敵な壁紙。
そのシックな色合いとモチーフは、内装の雰囲気を一段も二段も高めてくれます。
 

パリの素敵な壁紙デザイン。18世紀のサヴォワール・フェールを現代に!

 
歴史の長いフランスの壁紙技術ですが、インテリアとして需要が高まったのは18世紀のことだったと言います。
しかし壁紙は現代のようなロール状ではありませんでした。
35×45cmという決められたサイズで、その一枚一枚を壁面に丁寧に張り重ねた上で、一つの壁紙としていたそうです。
これは「ドミノ印刷」というフランスならではの製法でした。
ところが時代の流れによって、次の世紀にはこのサヴォワール・フェール(savoir faire、職人技)が失われてしまっていました。
 



パリの素敵な壁紙デザイン。18世紀のサヴォワール・フェールを現代に!

 
パリにはそんな、18世紀の職人技を蘇らせたアトリエ兼ブティックがあります。
バスティーユ広場近くにある「Antoinette Poisson(アントワネット・ポワソン)」です。
このお店は、実際に18世紀の美術(内装)修復を手がけていた3人の若手アーティストによって作られました。
 

パリの素敵な壁紙デザイン。18世紀のサヴォワール・フェールを現代に!

 
デジタル全盛期の今、お店に並ぶのはハンドメイドの紙製品。
隣接するアトリエでは熱心に作業する職人さんの姿もありました。
彼女たちはフランス産の手すき和紙を使って、18世紀の印刷機を用い、模様を1枚ずつ手で彩色していくそうです。
こうして出来上がった装飾紙は「ドミノペーパー」と呼ばれます。
 

パリの素敵な壁紙デザイン。18世紀のサヴォワール・フェールを現代に!

※ドミノペーパーは壁紙のほかに本の装丁、引き出し・戸棚の内張りとして使われていたそうです。



 
ではドミノペーパーをどのように蘇らせたのか。
実際の壁紙も並んでいましたが、特に素敵だなと思ったのはこちらのランプ・シェードです。
それも手作業のため、同じものは一枚たりとも出来ない、ということでした。
 

パリの素敵な壁紙デザイン。18世紀のサヴォワール・フェールを現代に!

パリの素敵な壁紙デザイン。18世紀のサヴォワール・フェールを現代に!

※収納ボックスやノート、文具類も。



 
オリジナル香水のパッケージ・デザインもさすがで、他にないほどのキュートさでした。
普通ならシンプル一辺倒な試香紙のデザインも、この通りの華やかさです。
 

パリの素敵な壁紙デザイン。18世紀のサヴォワール・フェールを現代に!



 
ドミノペーパーのデザインは、フランスの歴史的な書物、オブジェからインスピレーションを得ることが多いそう。
主には植物や鳥、幾何学模様だそうですが、そう言われてみると、パリにある美術館の壁紙が特徴的であったことを思い出します。
フランスには中世美術(内装など)専門の修復士さんがいらっしゃいます。
彼らは昔あったデザインを忠実に再現し、古美術に第二の人生を与えています。
しかしアントワネット・ポワソンの作品モットーは、過去に敬意を払いながら未来を組み合わせていくこと、なのだそうです。
 

パリの素敵な壁紙デザイン。18世紀のサヴォワール・フェールを現代に!

 
ブティックの周辺には陶芸工房や絵のアトリエもあって、パリの豊かな芸術シーンを感じることができます。
こうしたオープンスペースが多いのも、パリがアートの都と呼ばれる所以なのかなと思います。
 

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Posted by ルイヤール 聖子

ルイヤール 聖子

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2018年渡仏。パリのディープな情報を発信。
猫と香りとアルザスの白ワインが好き。