PANORAMA STORIES

「星になった写真家のポエム・フォト」 Posted on 2021/10/09 七種 諭 写真家 パリ

編集部より。

ここに掲載された、2本のフォト・ポエムは、2021年9月28日に急逝された写真家、七種諭氏が、2016年10月と11月にデザインストーリーズに発表した、フォトエッセイの再掲載になります。少しシニカルな恥じらいを持つ優しいまなざし、彼の独特の視点をお楽しみください。デザインストーリーズ創刊にご尽力くださった諭さんの優しさを編集部一同、忘れません。ご冥福をお祈りいたします。

「星になった写真家のポエム・フォト」



 

『電信柱』

 

7月中旬、墓参りを済ませ五島列島へ足を伸ばした。
夏休み前で海辺には誰もいない。
素晴らしい!
至ってシンプルな島の生活。
借りた古民家から港を見下ろすと傾いた太陽にグラフィカルなシャープな電線ライン。
懐かしい風景+島の時間を告げるチャイム。
これまた素晴らしい。
今住んでるパリには電線も電信柱もない。
日本の電信柱は何とも説明し難く、日本の自然、生活に美しく溶け込んでいる。
素晴らしい。
 

「星になった写真家のポエム・フォト」

かくれんぼの鬼が目を閉じて数を数える柱。
夏祭りの暗く寂しい帰り道、友達と。
後ろから追いかけて来ると思う鬼火が消えた。
やっと後ろを振り返ったら、街灯の付いてる柱がぽつん。
辛いマラソン大会の小刻みな目標となる柱。
一度は登ってみたいと思った、木の黒い柱。
一人夕焼け雲を眺める時に、もたれた柱。
電信柱は原風景の一部、、、
アーカイブを探してみると結構たくさん撮っているよ、電信柱。
夏の蒼空に立つ力強い電信柱。
素晴らしい。
 

「星になった写真家のポエム・フォト」

電信柱が消滅するらしい、少し悲しい。
日本人の心象風景がまた失われる。
名月に程遠い平凡な月+電線も郷愁を呼ぶ。
遠いところ+電線。
素晴らしい。
なぜかな、子供の頃に叱られたことを思い出す。
雲、人々の生活を眼下に見る日本の象徴+電信柱。
不完璧なのに完成された美しさ、と思うのは僕だけ?
素晴らしい。
電信柱は感傷的な醜いもの?
 

「星になった写真家のポエム・フォト」



 

『下を向いて歩こう!の勧め。』

 

生きているといろんなところでいろんなものと出会っているのですが、上を見てるために見逃したり、急いでいるので見落としたり、その素晴らしさに揺り動かされる時間がなかったり。
大変残念です。
下を向いて歩くといろんな発見があります。
僕が絵描きなら、具象的なものからアブストラクション視覚芸術的なもの。
学者ならばおそらく自然、怪宇宙、目に見えない大巨人の微生物を想像させてくれるもの。
作家ならParisの生活感、浮浪者の足跡、子供の物語などに膨らませてくれるヒントとなる小さな素晴らしいもの。
たくさんのいろんな発見に出会えます。
 

「星になった写真家のポエム・フォト」

海岸で見つけた魚の骨と流れ着いたガラス瓶のかけら。
素晴らしいコンポジション、ちょっとシュールな感じ。
パリの道端に置いてあった牛乳の空き瓶と生活に疲れたテーブル。
どうぞご自由にお持ち帰りくださいと書かれたメッセージカード。
夕方には全てが消滅していた。
太陽の光を浴びて美しい、宇宙からの隕石? 
パリの道端で。

砂浜にて、海水と風の共作。
自然、偉大、素晴らしい。
ばらまかれた朝食、パリの道端に。
小さな子供がパンを買いに走り、紙袋が破れてしまったのかな? と想像する。
ゴミを取ればまだ食べれる?、、、ううん、後は鳩の餌食。
これまた素晴らしいコンポジションではないですか?
もしかすると最近は日本では見かけないかもしれませんね?
オイルの漏れる車なんてもう走ってないか、、、、パリは沢山走ってますよ。本当に? 
ああ、なんて、宇宙的!
 
光り輝く細菌の模様にも大きな宇宙が存在しそうで楽しい。
いろんなものが道の端っこに居て何かを伝えてくれてます。
たまには頭を下げて歩くのも楽しいもの。
それは無数のマンホールです。

これはどこだったのだろう?

ミラノ?
 

「星になった写真家のポエム・フォト」

「星になった写真家のポエム・フォト」

「星になった写真家のポエム・フォト」

「星になった写真家のポエム・フォト」

グランパレの白いカーペット越し、多くの人に踏まれて美しい。
マンホールをフランス語ではPlaque d’égout。
フランス語にするとアート感が高まって聞こえるのは僕だけかな?
これらをよーく見ると微妙にいくつもの芸術のムーブメントを経て、このデザインに到達した歴史を感じる。
なんてね?
幾何学構成絵画のベースになった黄金比やロシアの構成主義、伊太利亜フューチャリズム、ノンフィギュラティフ、フランスのアンフォルメル、抽象絵画、ミニマルアート、具体派、初期フランクステラ、、、っっっっっっもう疲れる。勉強嫌いには向きません。

やっぱりグッとくるのはこれ!<松>浪花節的で立派!
これです。
人に踏まれ、車に踏まれ、犬のうんちに耐え、雨、風にさらされてなお美しい輝き。
日本人です。

おぢか島の下水マンホール

下を向いて歩こう!!!!!たまには
 

「星になった写真家のポエム・フォト」

 

七種 諭(Satoshi Saikusa)写真家

 
1984年に渡仏して現在に至るまでVogue Paris,Numero,i-D,Flair,Harper’s Bazaar UK、10、GQといった最先端のファッション雑誌とコラボレーションを続ける。数々の有名メゾンの広告撮影に携わり、コマーシャルフィルムも多く手掛ける。ポートレートでは、Monica Bellucci,Angelina Jolie,Sofia Coppola,Vanessa Paradisをクライアント・リストにもち、アーティストやセレブリティーの間でも評価が高い。アートの活動として2010年にSt Germain des Présに本格的なヴンダーカンマー(驚異の部屋)のギャラリーDa-endをオープン。自ら作家としてVanite,Curiosaシリーズを創作する傍ら、ギャラリストとしてアートフェアに出展、2014年にはUNDERCOVERとのコラボレーションで限定エディション作品を製作、2016年に成山画廊にて個展を開催など活動は多岐にわたる。
 

「星になった写真家のポエム・フォト」

※本写真のみ、Portrait Photography by Takeshi Miyamoto

自分流×帝京大学
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Posted by 七種 諭

七種 諭

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Satoshi Saikusa
写真家。1984年に渡仏して現在に至るまでVogue Paris,Numero,i-D,Flair,Harper’s Bazaar UK、10、GQといった最先端のファッション雑誌とコラボレーションを続ける。数々の有名メゾンの広告撮影に携わり、コマーシャルフィルムも多く手掛ける。ポートレートでは、Monica Bellucci,Angelina Jolie,Sofia Coppola,Vanessa Paradisをクライアント・リストにもち、アーティストやセレブリティーの間でも評価が高い。アートの活動として2010年にSt Germain des Présに本格的なヴンダーカンマー(驚異の部屋)のギャラリーDa-endをオープン。自ら作家としてVanite,Curiosaシリーズを創作する傍ら、ギャラリストとしてアートフェアに出展、2014年にはUNDERCOVERとのコラボレーションで限定エディション作品を製作、2016年に成山画廊にて個展を開催など活動は多岐にわたる。