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冷たいお茶や梅酒にも合う!? 今が旬の青かびチーズとは? Posted on 2017/06/06 久田 早苗 チーズ熟成士 パリ
今月は、旬のチーズとして、ロックフォールをご紹介します。
皆さんもよくご存じ、ロックフォールはフランスを代表とする羊のミルクから作られた青かびのチーズ。
本格派、ブルーの王道ともいえる存在です。
世界三大ブルーとして名高いのは、
イタリアのゴルゴンゾラ、イギリスのスティルトン、そして、フランス、ミディピレネー地方のロックフォール。
ロックフォールは1年を通して市場に並んでいますが、羊のミルクが出なくなる6月から7月にかけて羊の種付けが始まり、5か月間の妊娠期間を経て、子羊の誕生。そしてまた羊がミルクを出す、というサイクルが始まります。
すなわち、製造できる期間は12月の中旬から6月末の間まで。それに加え、製造に入って出荷できるのが3か月後というAOPの規定がありますから、出来立てのほやほやを召し上がるには、例えば12月半ばに初作りされたロックフォールが市場に出回るのは、3月後半から4月にかけて、ということになります。
美味しくなるにはさらに熟成が必要で、名だたるメーカーさんはさらに1、2か月と長期熟成させて塩気がまろやかな状態に仕上げて出荷します。
ですから、5月の終わりから6月の初めにかけ、有名なチーズ屋さんの店先には美味しく仕上がった「今シーズンの新物」が登場するのです。見た目は全く同じようなので、気が付く人はそれほどいないと思いますが、今年は意識して「新物」に挑戦してみましょう。
暑い季節にそんなお味の濃いものは…という方もいらっしゃるでしょうが、暑い時にこそ塩分補給でミネラルを体に取り入れましょう!
また、ロックフォールには梅酒のロックがとても合うのです。梅酒の程よい糖度がロックフォールの塩気と相成り、タンパク質も豊富なので、疲れた時など、ぐっと元気が出ますよ。
また、お酒が苦手な方には渋めの水出し緑茶や、フランス人も大好きなほうじ茶と合わせてみてください。
意外や意外、相性バッチリなのです。
ロックフォールはチーズの中でも王様的な存在。
1925年に一番初めのAOP(AOC)を取得、次のAOPは1955年の「サンネクテール」ですので、ダントツに早く、原産地呼称によって保護されて、AOPの中でも規則は厳しく、この土地で作られ、ロックフォール・シュル・スールゾーン村の自然熟成庫で最低3か月を過ごさなければなりません。.
日本では「強すぎる」とか「香りが嫌い」と言われるこの独特な風味を持つロックフォールですが、パリで暮らすようになり、フランスの家庭では当たり前、子供たちも大好物のチーズだということに驚きました。
<チーズ豆知識>
Roquefort フランス最古のチーズ 羊乳製 脂肪分52% ブルーチーズ
ラコンヌ種という羊から作られる。
ホールのままでは出荷されず半円形にカット(中にしっかりとしたブルーが生えているか確認し、完璧なものがその名を名乗れる)
ねっとりとした白い組織にきれいな青かびが生えている。
しっかりとした深みと余韻の長い旨味があり熟成の長いものは組織も滑らかで、口の中でとろけます。
独特な芳香があり、塩味はやや強め、脂肪酸の鋭い風味が感じられるため伝統的な肉料理のソースとしてもよく使われる。
Posted by 久田 早苗
久田 早苗
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チーズ熟成士 株式会社 久田 取締役 副社長。1985年、東京立川市にチーズ専門小売店「チーズ王国」1号店を開店。2004年にはパリ16区に「Fromagerie HISADA」、2010年にはパリ1区に熟成チーズの販売とチーズカフェを併設したSalon du Fromage HISADAをオープンする。2008年、日本人で初めてのチーズ熟成士最高位の称号「Maitre Fromager」を受勲。2013年にはフランス共和国農事功労賞シュヴァリエ勲位、2015 年にはフランス共和国農事功労賞オフィシエ勲位を綬章。