PANORAMA STORIES
初夏にオススメ、さっぱり羊のチーズ。 Posted on 2018/07/10 久田 早苗 チーズ熟成士 パリ
6月の半ば、エクス・アン・プロヴァンスとアヴェロン地方に行ってきました。
緑の一番きれいな季節で、羊さん達も群れをなして気持ちよさそうに寛いでいました。
羊と言えば、通常そろそろ種付けが行われる頃です。
羊が群れをなすここ、アヴェロン地方には有名なチーズとして”オッソイラテイ”と”ロックフォール”がありますが、原料となるお乳は6月中旬で終盤を迎えます。
お腹に子供を授かると出産までお乳が出ません。ですから製造もストップします。
6月から11月まで硬いチーズやロックフォールは製造から熟成の作業に変わります。
この地方の特色は何千もの昔、幾たびか起きた地殻変動によって洞窟が多数存在している事です。大きな洞穴は年間10度を保ち、わずかな隙間はサーキュレーターの役目(冷たい空気を中へ、温まった空気は外へ)をします。
チーズにとっての最適な自然カーヴです。
そこで出会うのは、羊のハードチーズなど、日本ではまだあまり知られていない珍しいチーズばっかり!
その美味しいチーズを見つけ出し、世の中に送り出すことが熟成士の仕事でもあります。
その名は”LE MAROTTE”、とても甘みがあって、濃厚で塩ミルキーのような味わいです。
写真の小さいサイズは700g程。シッカリとした組織に出来上がっているので丸ごと手に入れても、長く楽しんで頂けます。
こうした硬めで自然外皮が付いたものは、フランスでは「トム」と呼ばれ親しまれています。
チーズを購入するときは、特にチーズの名前を指定することなく、「今日のお勧めのトムはなぁに?」という言葉で始まります。
フランス人のお客様は、チーズを名前のあるもので選ぶのではなく、チーズ屋さんがお勧めする、今日買って一番美味しくたべれるトムをを選んでいかれます。
専門店の良いところは、状態を熟知した販売員がいて、客の好みに合わせた状態を選んでくれるということでしょうか。
フロマジュリー・久田も、お客様を満足させ、飽きさせず、信頼されるチーズ屋さんでありたいと思います。
トラディショナルのものも欠かせませんが、目新しいチーズを展開して、お客様に”新鮮さ”を与えられる楽しみは、商売とはいえ、人生の喜びにもつながります。
旅の楽しみ、季節の変化、人との出会い、チーズとの出逢い……。
チーズを通して様々な喜びを経験させていただいています。
<チーズ豆知識>
羊のミルクは牛に比べて一頭からたくさん取れませんが、「部止まり」と言って、水分が少なめでチーズとして使われるものが多く含まれています。
フレッシュは爽やかで、瑞々しく癖もなく、酸味も少ないので朝からヨーグルトの感覚で食べて下さい。
硬質になればなるほどミルクの甘さが際立って味のある高級感ある存在になります。
ワインとの相性は、フレッシュチーズだとロゼ、白の甘口が暑い時良いマリアージュになります。
ハードは、シャンパーニュや白の辛口などがお勧めです。
暑くなって食欲が落ちる時は、ひとかけらのチーズで元気を取り戻してくださいね!
Posted by 久田 早苗
久田 早苗
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チーズ熟成士 株式会社 久田 取締役 副社長。1985年、東京立川市にチーズ専門小売店「チーズ王国」1号店を開店。2004年にはパリ16区に「Fromagerie HISADA」、2010年にはパリ1区に熟成チーズの販売とチーズカフェを併設したSalon du Fromage HISADAをオープンする。2008年、日本人で初めてのチーズ熟成士最高位の称号「Maitre Fromager」を受勲。2013年にはフランス共和国農事功労賞シュヴァリエ勲位、2015 年にはフランス共和国農事功労賞オフィシエ勲位を綬章。