PANORAMA STORIES
ミツバチの巣 Posted on 2021/09/24 清水 玲奈 ジャーナリスト・翻訳家 ロンドン
「ミツバチの巣」というカフェで味わう絶品キャロットケーキは、イギリスの隠れた定番スイーツ
2015年創業、西ロンドン・イーリング地区にある自然派のカフェ。
レバノン料理のお惣菜、ファラフェルやフムスをトッピングできる健康的で栄養満点のサラダのほか、ピタパンのサンドイッチ、新鮮な果物と野菜で作るオーダーメイドのスムージーが自慢だ。
「ミツバチの巣」という名の通り、店内も蜂の巣のような作り付けの棚がアクセントになっていて、地元イーリング産のびん入りはちみつを販売している。
そしてこの店名には、甘い物好きが集まる店という意味合いも込められている。
というわけで、デザートには自家製のケーキが欠かせない。
イギリス人が好きな派手な7色のレインボーケーキやダークなチョコレートケーキも魅力的だが、ここでのダントツ人気商品はキャロットケーキ。
グルテンフリーのタイプもあるが、この日は「キャロット&ウォルナットケーキ(Carrot and walnut cake)」(3.50ポンド)を選んだ。
キャロットケーキのスポンジは、ふわふわで柔らかいけれど、しっとりもっちり。
いわばキメの粗いカステラのよう。そして断面にブラックカラントのように見えている黒い粒々はローストしたクルミだ。
真っ黒の見た目とは裏腹に苦味は全くなく、軽く心地よい歯触りが楽しめる。
そして、口の中でにんじんの甘さがほんのりと広がる。
この店のキャロットケーキのもう一つのポイントは、スポンジを引き立てるために、アイシングは薄くだけ塗られていることだ。
だから上品な味わいで、かなりのボリュームだけれど最後までおいしくいただける。
ニンジンがたっぷり、さらにアイシングが少ないからヘルシーで罪悪感が少ないことも、ここのキャロットケーキの人気の秘訣かもしれない。
この日は、リンゴとバナナ、ブルーベリー、ラズベリーが材料のスムージーの季節商品「ベリーズベリーズ(Berries Berries)」(3.95ポンド)も注文。
ビアジョッキほどの量で、心ゆくまでフレッシュフルーツのおいしさが楽しめる。
おいしいおやつの後は、すぐ近くの広大なウォルポールパークで散歩を楽しみたい。
さて、キャロットケーキはこの店に限らず、イギリスでは定番中の定番といえる焼き菓子で、手作りする人も多い。
デリア・スミス、ジェイミー・オリバー、オットレンギといった大御所から、ジェマ・ウィルソンら人気ユーチューバーまで、この国の料理研究家は必ず自分だけのキャロットケーキのレシピを公開しているから、ウェブでチェックしてみるのもおすすめ。
基本的な作り方は、細かくおろした生のニンジンをたっぷり入れてスポンジを焼く。
スポンジにはシナモンやナツメグ、オールスパイスなどのスパイスと、細かく刻んだクルミやレーズン、ときにはオレンジの皮のすり下ろしなどを入れて、風味と食感のアクセントにするが、この辺はシンプルなレシピとの好みが分かれるところだ。
さらに、クリームチーズにバターと砂糖を加えてすり混ぜて作る濃厚なアイシングをトッピングしたらできあがり。コーヒーにも紅茶にも合うが、もっちりした食感はちょっと和菓子のようでもあり、緑茶にもぴったりだ。
(清)
Posted by 清水 玲奈
清水 玲奈
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ジャーナリスト・翻訳家。東京大学大学院総合文化研究科修了(表象文化論)。著書に『世界の美しい本屋さん』など。ウェブサイトDOTPLACEで「英国書店探訪」を連載中。ブログ「清水玲奈の英語絵本深読み術」。