PANORAMA STORIES
教会で聴く、パイプオルガンコンサート Posted on 2024/12/11 堀内 ありさ 学生 サンジェルマン・アン・レー
日曜日、サンジェルマン教会ではパイプオルガンのコンサートが開かれた。サンジェルマン・アン・レーの町新聞にお知らせが載っており、ホストマザーから教えてもらって一緒に聴きに行くことにした。
クリスマスシーズンになると、フランスでは色々な教会でコンサートが開かれる。ここでも、12月は毎週日曜日の16時から、それぞれ異なるオルガニストによる演奏会が予定されている。予約などの必要もなく、誰もが無料で聴きに行くことができる。
席はほとんど満席状態。見渡すと、家族や恋人と来ている人もいれば、1人で静かに聴きに来ている人など、老若男女問わず集まっていた。4〜5歳くらいの小さな子たちも来ていて、みんなお行儀よく座っていた。
この日のプログラムはメンデルスゾーン、ブラームス、バッハなど。全部で小一時間。奏者は、モンペリエを中心に活躍している女性のオルガニストだった。パイプオルガン自体は教会後方、扉の上部に設置されている。私たち観客はオルガンに背を向けて座る形になり、振り返っても奏者の演奏している様子は見えないのだが、音は教会内で反響し、360度すっぽりと音楽に包み込まれた。高い天井や石造りの壁、四方八方で心地良くサウンドが共鳴し合う。教会の中で厳かに鳴り渡る音楽に、魂が浄化されていくようだった。
ブラームスのプレリュードとフーガは、同時に何層にも重なる旋律がとても美しく響いていた。聴いているうちに、ピアノを習っていたときのことをふと思い出した。バッハなど、この手の練習曲は基礎なので昔色々と弾いてきたのだが、単調で平坦な感じがどうしても好きになれず、ついつい練習をサボりがちだった。しかし、教会で、パイプオルガンで聴くバッハはそれとまるっきり違う。瞬時にそれを悟った。やはり、オルガン作品を楽しむには、室内のグランドピアノではなく教会のパイプオルガンなのだ。本物に触れた気がした。いつまでも聴いていられる、荘厳で優しい音楽だった。
教会で開かれる音楽会には、普通のコンサート会場ではちょっと味わえない雰囲気がどこか漂っている。祈りの場である教会という神聖な空間で聴く音楽は、何人をも優しく包み込んでくれる、そんな温かさを与えてくれるように思う。素敵な演奏に耳も心も癒された、幸せなひとときであった。
Posted by 堀内 ありさ
堀内 ありさ
▷記事一覧大学4年生、文学部。フランス、サンジェルマン・アン・レーに交換留学(2024-2025)。
ピアノと外国の児童文学が好き。