PANORAMA STORIES
マダム・アコのパリジェンヌ通信”クールなパリジェンヌの温かい本質” Posted on 2023/06/03 Ako アーティスト/フリージャーナリスト パリ
パリジャン、パリジェンヌは個人主義で冷たい、という印象を持つ人がいます。
確かに目があっても笑顔をくれるわけではありませんが、見えない彼らの壁をこえてみると、人間としての優しさ、温かさを、際限なく持つ人々ばかりです。
四半世紀を共にする我が愛するパリジェンヌの、いつもの独断と偏見ですが、今回も本当のお話です。
特にパリジェンヌ(パリジャンではなく)の優しさや温かさが、壁をこえないとすぐには分からないのは、彼女たちがそれをわざわざ振りかざすことをしないから。
またその行動に、こちらが有難くて涙が出そうになっても、彼女たちは「それがなんなのよÇa fait rien 」「大丈夫よÇa va y aller 」とクールな態度のままなのですから。
確かに本当の優しさや温かさは、見せびらかすものではないし、少し隠れ気味だったりするもの。そこに私は、彼女たちからの強くあれというメッセージ、真実の応援さえ感じます。
パリジェンヌが個人主義で冷たいという意見に私は大反対ですが、そんな温かさ、優しさを含めて、パリジェンヌたちが自己中心的であるということは本当です。
彼女たちは、まず他人のことを最初に考えるわけではありませんから。
パリジェンヌにとっては、あくまで「自分がどうしたいか」「自分がどうありたいか」が行動の基本です。
よって彼女たちの優しく温かな行動も「自分がこうしたい」というピュアな心の欲求から来る、自己中心的なもの。
自己中心から来る優しさ、温かさのすごいところは、「他人のために」ではなく、あくまで「自分がしたい」が動機なので 、自己犠牲の感情がなく、見返りも求めないこと。
(女性の皆さま注意! これはあくまで“パリジェンヌ”のことで、“優しいパリジャン”についてはまた違います…!)
自分の思いに正直なパリジェンヌたちは、したがってあまり裏表がなく、思ったことを言いあい、お互いに「こうしたい」「こうしてほしい」などのお願いも気軽にし合います。
私も、日本ではファミリーや親友にしかお願いできないようなことを、あの友人にも、この友人にも、ぽん、とお願いしてみることができ、ここでは友人という存在がファミリーに近いことを感じます。
では何をお願いしあうのか?
例えば頻繁にあること、最近あったことでは…
「私のバカンス中に、家の中にある植木に水をあげてくれる?」「仕事が長引いて、子供のお迎えにいけないの!代わりに行ってもらえる?」「デザートにとびきり美味しいチョコレートケーキをお願い」(時にこれがワインになったり、シャンパンになったり)「あなたのバカンス中に、あなたのパリのアパルトマンを貸してくれない?外国からパリに来る友達の泊まる場所がないのよ」「あなたの田舎のお家を開放してくれない?隣人のない素敵な場所だから、夜中まで続けたい私の誕生日パーティを開くのにぴったりな気がして」「新しい恋人と旅に出たいのだけど、私の子供二人を2、3日預かってくれないかしら?」(小さな子供の預かり合いは1週間や2週間も普通です)。
これらのお願いは、決して自己中心のわがままではないのです。
頼り頼られる信頼関係にあるということ。
けれどできないことにはちゃんとノンと言う。
もちろんできる限りウイと言える努力をしたいけれど、無理な場合には。
そして一緒に解決策を探ってみたりもします。
もし私がある夜、旦那さんと大喧嘩をして家を飛び出し、友人のお家のドアを泣きながら叩けば、それが真夜中でも、彼女たちの誰であれ、起き上がって扉を開けてくれ、ハーブティーを淹れてくれるでしょう。
そして「適当にやってね。私、朝が早いから、明日話を聞くわ。まず今夜は眠りましょう」と言ってハグしてくれ、居間のソファーを提供してくれると確信しています。
と、書きながら、10年以上前に、そんな風に恋人と喧嘩した友人を我がアパルトマンに迎えた夜があったことを思い出しました。
パリジェンヌたちは、人生を、笑いも涙も、シェアしながら歩んでいます。
Posted by Ako
Ako
▷記事一覧東京生まれ。1996年よりパリ在住。セツモードセミナー在学中にフリーライターとして活動を始める。パリ左岸に住みアートシーン、ライフスタイルなど、生のフランスを取材執筆。光のオブジェ作家、ダンスパフォーマーとしても日々活動。