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「食品ロスにNON!パリで話題の『みんなの冷蔵庫』」 Posted on 2022/06/17 ルイヤール 聖子 ライター パリ
売れ残りや賞味期限が近いなどの理由で、食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」問題が、先進国のあいだで盛んに叫ばれるようになった。
現在フランスでは2025年までに食品廃棄物を50%削減するという目標を掲げており、2016年には「食品廃棄禁止法」が成立した。
今では、床面積400㎡ 以上のスーパーは売れ残った食品を寄付することなどが義務付けられ、民間レベルでの取り組みも活発化している。
スーパー、アプリ、レストランと、多方面で食品ロスに対する対策がなされているが、パリ18区にあるレストラン「La cantine du 18」が思いついたのは、「みんなの冷蔵庫」。
食品ロスを減らすだけでなく、お金がなくて困っている人たちへの救済措置でもあるという。
母と娘で経営するレストラン「La cantine du 18」の店前には、何が入っているか一目で分かるガラスの冷蔵庫が常に置かれている。
これは、娘のドゥニア・メベトゥルさんが発案したもので、2017年から続く「les frigos solidaires」(連帯冷蔵庫=みんなの冷蔵庫)だ。
システムはとてもシンプル。家庭、商店、レストランなどで余った食品を自由に持ち込む。
NG食材には、家で調理されたもの(レストランはOK)、肉や魚、開封済みのパッケージ食品、アルコールなどがあるが、厳しいルールはほかに設けておらず、誰もが気軽に利用できるという。
高校生の頃から自分のレストランを開くのが夢だったというドゥニアさんは、2016年に自身が経営する「La cantine du 18」を母親とスタートさせた。
ホールサービスと経営は娘のドゥニアさんが、調理は母のマリカさんが担当し、あっという間に地元18区で人気のレストランとなった。
食事を提供するだけでなく、レストランではそのスペースを活かし、フリーマーケットや音楽ライブ、外国人向けのフランス語レッスンなど、さまざまな種類のイベントが定期的に行われるそうだ。
そんな地域とのつながりを重視するドゥニアさんは、「地元のために何か出来ることはないか」と考え、「みんなの冷蔵庫」を設置するに至った。
たった一人で始めた活動だったが、2019年にはなんとパリ市が協力を申し出た。
今ではフランス全土に広まり、パリ市内で15か所、国内で70か所に冷蔵庫が設置されているという。
さらに、今年9月にはトゥール大学の構内にも置かれた。
これは大学側の「学食廃棄」問題にも大いに貢献したそうで、手持ちの少ない大学生、留学生にも大好評だったそうだ。
仏紙Le Parisienや、テレビ番組France Infoなどもこの「ストリート冷蔵庫」に着目し、これまでに多くのメディアがドゥニアさんの活動を取り上げた。
彼女はインタビューで「食品ロスを無くすだけではありません。地域の助け合い制度を作り、ひとり親家庭、お年寄り、失業者といった人々と社会的な関係を結ぶことも目的です」と繰り返し語っている。
現在「みんなの冷蔵庫」は、1台につき1日約40~50人が寄付し、70人ほどが消費するそうだ。
本家のレストラン「La cantine du 18」前の冷蔵庫では、料理人である母マリカさんが作るスープがこの時期特に人気だという(もちろん消費しきれなかったもの)。
周辺にはレストランが多くあるため、団体からの寄付がほとんどだが、個人では旅行前に余ってしまった食材を届けに来る人が多いとのこと。
食品ロス問題は、大事と思いながらも、どこか「企業がやること」「個人の責任」といった冷たい風潮がある。
しかしドゥニアさんは、こうして地元の人たちと気軽に交流できる場を作り、「参加しやすい雰囲気」を出すことに成功したのだ。
フランスでは年間ひとりあたり29kgもの食料が捨てられる。
焼却時のCO2は地球温暖化を助長するし、まず食べ物を「捨てる」という行為自体を減らしたい。このように、食品ロス解決については国の指示を待たず、各自が、そして地域の人たちと協力するのが一番の近道なのではないかと思った。
Posted by ルイヤール 聖子
ルイヤール 聖子
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猫と香りとアルザスの白ワインが好き。