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「カルロスゴーン氏、パリ最新速報」 Posted on 2020/01/02 Design Stories  

ストが続くパリで、ストのニュースより、日本から逃亡したゴーンさんのニュースが多く、しかも、元気がいい。ほぼすべてのニュースメディアでこの問題が討議されている。たった今、飛び込んできたニュースがとっても興味深い。フランス経済省の高官、アニエス・パルメ・ルナシャーさんが
「ゴーンさんがフランスに戻って来たとしても、フランス政府は日本に彼を引き渡すことはない。なぜなら、彼はフランス国民だからである」
と発言し、緊急速報としてフランスアンフォが報じた。
ぼくはこのニュースでたたき起こされ、えええ、となった。日本でよく報道されているレバノンとの間の二国間引き渡し条約がないことについてだけど、そもそも日本はアメリカと韓国くらいしか身柄引き渡しの条約を結んでないので、フランスは論外となる。EUの国同士ではこのような法令が存在するらしい。つまり、日本はお手上げなのである。
実はこのアニエスさんは、ゴーンさん逃亡劇直後には正反対の意見を言っていた。
「カルロス・ゴーンは法律を超越することはできない。全ての国民と同じで、法を犯したのであれば調査され、裁かれるべきだ」
そのわずか二日後に、同じ人間の意見が180度変更になっているところが興味深い。これは同時にフランス国内、もしくは欧州で、ゴーンさんの立場がじわっと変化している証拠でもある。

ラジオを付けてみた。RTLのラジオの生放送でベイルートの弁護士とのやりとりが流れているけれど(彼はゴーンさんの弁護士ではない)によると、
「日本の案件がレバノンで引き続き捜査されることはない」
と言い切っている。ま、そうだろう、という意見でしかないけれど…。
レバノンの政府関係者は
「カルロス・ゴーンは法を犯さず、レバノンに入った」
とこの事件を一蹴した。レバノンの法律を犯していないし、日本の脱税問題をレバノンで裁判することは不可能、と語っている。

今、飛び込んできたニュースによると、フランスアンフォのジャーナリストがこの事件のまとめとして、
「日本は事件後、非常にうろたえ、どうしていいのかわからず、家宅捜査くらいしかできていない」
と報じている。つまり、もたもたしている、と言いたいのであろう。とっても悔しい。この最後の情報が正直、現時点の状態ではないか、と思う。1月8日に、ゴーンさんが記者会見を開くそうだけど、日本は世界的にだけど相当厳しい事態に立たされるだろう。自由の身を手に入れたカルロス・ゴーンが日本への復讐を開始する。司法制度への批判だけでは終わらず、もっと深い所への批判が始まる。そして、ゴーンさんはもう二度と日本で裁かれる可能性が、現時点では絶望的な状態になった、と言い切ることが出来るのではないか。

ゴーンさんが黄色いベストを着て、拘置所を出た時から、今回の脱出劇まで、彼は一貫した芸風を貫いており、この大スペクタクルニュースに世界は面白いくらいに飛びついている。残念なことに、役者が一枚上なのである。そして世界というものをどう操れば自分に有利に動かせるかを心得ている。このニュースが報じられたその日、大晦日にぼくがツイートで予言した、仏レバノン合作映画「逃亡者、カルロス・ゴーン」が製作されないことを祈るばかりだ。これ以上の恥をさらされたくない。しかし、もしこれが実現となれば、映画は世界的にヒットをするかもしれない。1月8日に、ゴーンさんが主張することはきっと日本国民には初耳のような事柄がある程度含まれているのじゃないか、と想像している。フランスのメディア(あるいはBBCなど)がそれをどのように報告するか、またここで検証してみたい。

オリンピックが近い今の日本が、このような脱出劇を許してしまったことは手痛い。まずはオリンピック会場にテロリストが紛れ込まないよう、政府には万全を期してもらいたい。

「カルロスゴーン氏、パリ最新速報」



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デザインストーリーズ編集部(Paris/Tokyo)。
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