PANORAMA STORIES
「家族があってこそ、ぼくは、新天地に立つ」 Posted on 2022/09/05 岡崎 慎司 プロサッカー選手 スペイン・カルタヘナ
先日、ベルギーリーグの1部のシントトロイデンというチームの一員としてピッチに立ちました。
前日まで、登録されるのは絶望的だと聞いていたのに、クラブの素早い対応で直前にリーグ登録され、不意に、試合出場可能になったのです。
しかも、試合の日にスタメン入りを告げられ、思わず、昂ぶってしまいました。
思えば昨シーズンは、自分がやりたいポジションで出場できず、結果も残せず、悔しい思いをしていたのです。
次のシーズンはこの悔しさをぶつけるぞ、と決意して、この夏は、早くからチームを探していました。
エージェントを通して欧州の様々なクラブに話をしてもらいました。
ところが、興味を持って貰えても、監督のところで、年齢や結果で判断され、思うように話がまとまらないのでした。
このような厳しい内実を、エージェントから聞かされるたび、ぼくは自分が置かれた、今、現在の立場、状況を思い知らされるようになってきました。
しかし、ここで終わらせるわけにはいきません。
その不撓不屈の気持ちが、日々の孤独なトレーニングのモチベーションへと、変わっていきました。
去年はチームが決まるギリギリまで日本で過ごしていましたが、今年はヨーロッパにいて、まずはチームを決める覚悟で、家族とも離れて一人孤独な練習をして過ごしてきました。バルセロナを拠点にしながらも、ドイツ、イタリア、イギリス、フランスのサッカー関係者や知り合いに会いに行きました。それが、コロナ後、初めてのヨーロッパ旅行になったのです。
気分を変えながら沢山の人から刺激を貰いました。
そして、旅先の色んな場所でとにかく走り込みをしました。
特にバルセロナでは、日本の方々が組織するサッカー・チームがあり、そこに誘ってもらい、ボールに触れさせてもらいました。
サッカーをした後に毎回2時間ぐらいみんなで語り合う時間がありました。このひと時が、自分の気持ちをすごく支えてくれたのです。
一方、妻はいつもぼくの事を客観的に見ています。
「チームがなかなか決まらない事や、結果が出てない事など最初から分かってたやん」
と言います。
「でも、ここまで来たんだから最後まで後悔ないようにやってよね」
と最後は一番の応援団長になってくれます。
今回のように、チームが決まらない状況、家族を安心させてあげられない状況は、これで3回目となります。
それでも、こんなぼくの夢に付き合ってくれて、いつも後ろで応援してくれる妻や家族には、真実、感謝しかありません。
ヨーロッパで、しつこく、こうやって頑張っていられるのも家族のおかげなのです。
これは、いつも、家族のおかげなのです。
ありがたいことです。
今回は「自分からもっと行動を起こさないと終わる」という直感がありました。
沢山のクラブや様々な監督からの評価を自分は逃げずに受け止めることから始めました。
崖っぷちにいることをきちんと理解して、挑んでいるのです。
すくなくとも、その決意が、今のチームの監督に伝わったのでしょう。
だから、ぼくはとにかく走り、行動し、練習をしました。
それしか、今の自分にできることはないからです。
過去の栄光も名誉もかなぐり捨てて、素の自分で挑んでいます。
もう一度自分の評価を高めて、這い上がりたい。
けれど、何故だかこの裸で何も持たずに戦う状態が何より心地良く感じます。
自分は自分が思うがままに生きたい。
それをサッカー選手として最後の最後まで貫くつもりでいます。
そんな事をピッチに出る前にずっと考えていました。
念願かなって、デビュー戦でフル出場することが出来ました。
まだ、戦いははじまったばかりです。
ベルギーという国で、ぼくはもう一度、戦います。
でも、家族は、ぼくの幸せしか願ってないのです。
その家族を喜ばせたい。
ぼく自身、まだ出来るんだと、新天地でのチャンスや期待に応えられるよう、全力を尽くす覚悟でいます。
Posted by 岡崎 慎司
岡崎 慎司
▷記事一覧Shinji Okazaki
プロサッカー選手。1986年4月16日、兵庫県宝塚市生まれ。滝川第二高校を経て2005年、Jリーグ清水エスパルスに入団。チームの中心選手として活躍する。2011年ドイツ・ブンデスリーガのVfBシュツットガルトへ移籍。2013年マインツでプレー後、2015年イングランド・プレミアリーグのレスター・シティに移籍。レスターがプレミアリーグ初優勝。現在はFC CARTAGENA、カルタヘナ活躍中。ポジションはFW。