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「今だからこそ叫びたい、夢の意味を」 Posted on 2021/11/20 岡崎 慎司 プロサッカー選手 スペイン・カルタヘナ

地球カレッジ

正直言って僕は「夢を語る人間」が苦手で、実はずっと「口先だけのやつに何が出来るんだ」と思っていたし、そういう連中を冷ややかに見ていた。
だいたい、夢が大き過ぎたら逆に目の前の事を頑張れなくなるし、もしダメだった場合、逆に立ち上がれなくなり諦めてしまうことも増えるのじゃないか。
目標を立てて地道に結果を積み重ねていく方が、ぼくにとっては現実的で大事な事だったからだ。
いつからそういう考えになったのかは分からないけど、大人になり、プロのサッカー選手になって世界に飛び出した頃のぼくには、そもそも、夢なんか描ける余裕もなかった。
とにかく、勝負の世界で生き残る事だけを考えて毎試合頑張るのが、精いっぱいであった。
もしくは北京オリンピックで金メダルを取りたいと言って意気揚々と臨んでの3連敗、ブラジルワールドカップで世界を驚かせるはずが予選敗退・・・。
自分が夢を語った時ほど結果はボロボロで恥ずかしい経験の繰り返しだったからだ。
ただ、夢を語りたがらない自分だったが、最近、ふっと、サッカー選手として夢がなくなる事のつまらなさにも、気が付き始めた。
サッカー選手として夢が無くなることは、つまり、終わりを意味するのじゃないか、とさえ、思うようになってきた。

「今だからこそ叫びたい、夢の意味を」

「今だからこそ叫びたい、夢の意味を」



そんな時に日本代表戦を見ながら、俺も試合に出たい、と改めて思うようになった。
同時に、日本代表戦での選手、監督がちょっと辛そうな印象を受けた。
みんな「ワールドカップ予選通過は義務」だと言っている。
若い選手が次の世代の人たちのために、と責任を口にしたり、キャプテンの吉田麻也が日本国民の為めと口にし、「敗退したら僕達が責任を負う」と語る、その言葉がぼくの中に何かを残した。
同じことを日本のサッカー選手に問えば、もしかすると、みんなが同じようなことを口にするのじゃないか・・・。
多分、自分も聞かれれば、きっと同じようなことを言うだろう。
そうならば、日本代表選手達の本当の夢はいったい何なのか?
代表選手たちは誰かの為にサッカーやってるのだろうか?
サッカーだけに限らない問題を含んでいるのかもしれない。
もしかすると、選手が夢を語れない状況にあるんじゃないか、と思った。
夢を語り、夢を追いかける日本代表をファンやサポーターがまた追いかける。
それを見てきた子供達が「日本代表になりたい、あそこでプレーしたい」と憧れる。サッカーをする子供達は、間違いなく、その時、夢を持つことの大切さに気付いている。
日本のサッカーの歴史を振り返るならば、5回のワールドカップを戦い、何度も世界の壁の高さという現実を目の当たりにしてきた。
僕も南アフリカ、ブラジル、ロシアと3大会に出場したけど、近いようで遠いベスト8の壁と優勝への道のりだった。
そういう中で、自分の考えや思いもより、世界は次第に現実的になっていった。
しかし、萎縮した自分が現実を知ってきたことで逆に、これからの日本サッカーが小さくまとめてしまうんじゃないか、と思った。
正直、日本のサッカーが民放で観ることができなくなっても、特に、ぼくは問題はないと思ってる。
その代わり、専門チャンネルで観ればいいし、その方が区別がつく。

「今だからこそ叫びたい、夢の意味を」

「今だからこそ叫びたい、夢の意味を」



それよりも、もっと大事なことがある。
サッカーというスポーツは、ものすごく魅力あるものだ、と伝えなきゃいけない。
だからこそここで叫びたい、夢が持つ意味を。
現実を知る大人だからこそ、夢をみていかないといけない時代なのかもしれない。
それは、まさに、今の自分だ。今のぼくは甘んじてはいけない。現実の世界で生き抜いてきたぼくが、まるくなっちゃいけないのだ。

「今だからこそ叫びたい、夢の意味を」



ぼくこそ、もっと夢を持たないと。
だからこそここで叫びたい、夢が持つ意味を。
現実を知る大人が夢を見ていかないといけない時代なのだ。
新しい人たちには情報があふれている。
そして現実を知ってるからからこそ本当の夢との向き合い方を若い世代に伝えていけるんじゃないか、と今、ぼくは思う。
ただ夢をみるだけの時代じゃなく夢や希望をより実現させていける確かな道筋
をみつけたい。
僕は一サッカー選手としてはもしかすると終わりに向かっているのかもしれないと思うことがある。
だからこそ、ぼくはいま、もう一度、あの頃の夢を取り戻したいのだ。
だからこそ選手として最後まで夢を語り、夢を追いかける姿をみせたいと強く思う。

「今だからこそ叫びたい、夢の意味を」



自分流×帝京大学

Posted by 岡崎 慎司

岡崎 慎司

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Shinji Okazaki
プロサッカー選手。1986年4月16日、兵庫県宝塚市生まれ。滝川第二高校を経て2005年、Jリーグ清水エスパルスに入団。チームの中心選手として活躍する。2011年ドイツ・ブンデスリーガのVfBシュツットガルトへ移籍。2013年マインツでプレー後、2015年イングランド・プレミアリーグのレスター・シティに移籍。レスターがプレミアリーグ初優勝。現在はFC CARTAGENA、カルタヘナ活躍中。ポジションはFW。