PANORAMA STORIES
スウェーデンで大学生活が始まる Posted on 2020/10/08 木枝 萌 学生 スウェーデン・ダーラナ地方
8月から、スウェーデンでの大学生活が始まった。期待と不安を胸に、大きなスーツケースを持って日本を飛び立った。家族とはしばしのお別れ。こんな状況だから、次にいつ会えるのか分からない。
「ゆるい」と言われ続けてきたスウェーデンのコロナ規制、確かにここに住んでいて日本との差に驚くことはあった。レストランやお店は、コロナが流行る前と同じように開かれているし、街ではマスクをつけて歩いている人を見かけない。
スウェーデンでは、ほとんどの大学がオンライン授業を取り入れている。私の通っている大学は、大学1年生だけがオンラインと構内授業の2つの選択肢を与えられる。構内授業が行われているのは、スウェーデン政府が50人以内の小規模の集まりを許可しているからだ。
大学で授業を受けるにはオンライン予約が必要なのだが、人気コンサートのチケット争奪戦のように、予約がとても難しい。予約サイトのリンクが送られてきて、毎回わずか10分ほどで全ての席が予約済みになってしまうので、なかなか取ることができない。一日に二回にわたって開かれる授業で、予約できるのは全部で98人。1/4の確率だ。学校が始まって1か月が過ぎた今、残念ながら、一度も席を獲得したことがない。
そういうわけで、普段はオンライン授業を受け、ほとんどパソコンとにらめっこの毎日を送っている。同じ空間で他の生徒と共に学ぶのが大学の授業の本当の面白さだが、オンラインだと、他の生徒の反応は分からないし会話も生まれない。教授は実際の教室に集まっている生徒に向かって話すので、疎外感を感じてしまうこともしばしば。両方に気を配りながら教えるというのは困難なのだろう。このように、オンライン授業にしても、構内授業を受けるにしても、様々な問題が生じてくる。
この悩みをクラスメイトに打ち明けると、「オンライン授業は、実際の教室で受ける授業のように完璧にはできないよ。オンライン授業の良いところを強いて言えば、起きてすぐパジャマを着たまま授業を受けられるところかな」と楽観的な答えが返ってきた。
たしかに、パジャマ姿で大学の授業を受けられるのは、自分の人生で貴重な経験なのかもしれない。今学期は、この授業スタイルが続くが、次の学期から学校側がどんな方針を出すのか、気になるところである。
スウェーデンで暮らしていく中で、大きな発見があった。それは、スウェーデン人が極度の人見知りだということ。それに気が付いたのは、住んでいる寮でのことだった。多くの生徒が寮で暮らしているが、この一ヶ月間、廊下で人とすれ違うことが滅多になかった。共有スペースで人を見かけることもほとんどない。不思議に思ったので、近所に住むスウェーデン人の知り合いに聞いてみた。すると彼女は「スウェーデン人はね、廊下に誰かがいるときには絶対に外に出ないよ。みんなシャイだから、他の人と顔を合わせたくないだ。誰もいないことを確かめてから外に出るのがスウェーデン人。知ってた? スウェーデンは世界で最も孤独な国と言われるほど、内向きな人が多いんだ」と言った。
世界で最も孤独な国かどうかは確かではないが、そこまで内向的な性格だとは、知らなかった。このままだと、自分から積極的に人に会おうしない限り、友達ができないまま寂しい冬を迎えることになる、と少し焦りを感じた。スウェーデン人のコミュニティに入っていくことは、スウェーデン語を話せない人にとってかなりハードルが高い。
学生の身で、人と接する機会が激減している中、どうやってこの孤独感と寒い冬を乗り切ることができるだろうか。現在の私の大きな課題だ。
先日、私を心配した母から電話がかかってきた。心の蓋を開いて素直な気持ちを話すことで、弱くなっていた気持ちは、もう少し踏ん張ろうという気持ちに変わっていった。しばらくはこの状況が続くだろうけど、また大きな教室で生徒が集まるときが来ると信じて、今与えられている大きな試練を乗り越えたいと思う。
Posted by 木枝 萌
木枝 萌
▷記事一覧神奈川県出身。2020年よりスウェーデンに移住。ダーラナ地方にある工芸学校で陶芸を学ぶ。