PANORAMA STORIES

MIMOZA WAYS 〜 私たちの道〜 Posted on 2023/02/20 カルドネル ルウ 晨乃 劇団「La Cabane」所属 フランス・モンペリエ

 
私は京都生まれの京都育ちだ。
幼い頃に話していた言語はベタベタの京都弁で、フランス語を喋れないまま育ってしまわないかと心配するフランス人の父の意向で、京都国際フランス学園に入学した。
3歳の時からバレエを習い、13年間続けたが、型にはまった踊りより、シンデレラの意地悪な義姉のような演技力を必要とする役柄の方が得意だった。
 

MIMOZA WAYS 〜 私たちの道〜



 
中等部の演劇の授業で、担当していた教師ピエール・ターラーに出会う。
彼は哲学と演劇の教師であり、作家、僧侶、マジシャンでもある。
彼に習ったことがきっかけで、本格的に演劇を始めた。
演劇であろうと哲学であろうと彼の授業は対話や議論が多く、真の意味で人生の学びの場であった。
17世紀に生きたモリエールの作品を稽古する度に、「いや、この場面のシチュエーションは現代社会でも一緒だよ」と、思春期の私たちに演劇を通して、様々な社会問題を教えてくれた。
ただ楽しく演じるのではなく、社会に疑問を投げかけることができる空間を作ってくれたのがピエール先生だった。

演劇はそういった議論を生む場で、ある視点から作られた作品は、観客の視点とぶつかり、観客は共感したり、より深く思考を巡らせることになる。
演劇とはそのようなきっかけになるものなのだと気づいた。観客だけではなく制作している側も、新たに作品に関わる度に、自分の観ている世界に問いかけることができる。
進路を決めるときに「演劇は奥深いものだ」と考え、とことんその世界を突き詰めたいと思い、高校卒業後、私はフランスのCours Florentという演劇学校に進学することにした。
 

地球カレッジ



 
日本に生まれ育ったため、それまでどっぷりフランス社会に浸かったことはなかった。
18歳の時にフランスに渡り、フランス人である自分でもカルチャーショックを受けた。
とは言え、とてもポジティブなショックだった。
とにかく女性である私は解放感を感じた。
「可愛く、おとなしくしていろ」という日本社会で求められているような規範から解放された。日本では、好きなことをしていると「好き勝手している自由人」とネガティブにみられるが、フランスに来て他人の視線から解放された。
ここでは思っていることをはっきり言ってもいいし、感情をぶつけ合ってもいい。
自分らしく、自分の人間味を大切にしていい。
このようにフランス生活は心地よく、楽しく過ぎて行った。
演劇学校でも色々な人に出会い、卒業してからも多くのプロジェクトに関わり続けている仲間たちにも出会えた。
そして、私は母国を離れてから、日本で自分らしく生きるのはとても難しかったことに気がついた。
 

MIMOZA WAYS 〜 私たちの道〜



 
2020年、日本での公演に出演しないかとのお話をいただいた。
それはフランス人の俳優・脚本・演出家、トリニダード・ガルシアが書いた、日本の女性史についての作品だった。
コロナ禍で、フランスから日本に帰国しようと、空港で飛行機を待っている3人の女性の出会いをきっかけに、2020年から1910年にタイムスリップ、3人の家系を遡る旅に出るという物語だ。
私は、20歳の日仏ハーフで両国に引き裂かれているマリを演じることになった。
まさに私だ、と共感した。

2022年2月に京都で、2023年2月には東京と福岡で公演がある。
この作品は日本の歴史がふんだんに盛り込まれている喜劇である。
私もこの作品に関わってから色々なことを学んだ。
自分らしく生きにくい、と感じていたことを言葉にすることもできた。
言語化することの大切さを再び実感した。
思想を言葉にしたり、形にしたり。

演劇とは、その場限りの芸術で、一度観たものに再び出逢うことはない。
我々人間の生命と同じように儚く、作品は時空と共に進化していく。

私たちが一歩前へ進むために、伝統や社会の常識への尊重の限界に気づき、そこに縛られず、芸術を架け橋に多様性を活かしていく社会の実現を切に願っている。
 

MIMOZA WAYS 〜 私たちの道〜



 
【公演情報】

MIMOZA WAYS 1910-2020 私たちの道
脚本・演出 トリニダード・ガルシア

東京公演
日程 2023年2月22日(水) ・23日(木・祝)
会場 東京都福生市民会館
主催 日仏女性の人権架け橋 ミモザ実行委員会

福岡公演
日程 2023年2月27日(月) ・28日(火)
会場 クローバープラザ クローバーホール
主催 日仏女性の人権架け橋 ミモザ実行委員会
共催 福岡県男女共同参画センター「あすばる」

詳細 https://www.woman-engeki.com/
 

自分流×帝京大学



Posted by カルドネル ルウ 晨乃

カルドネル ルウ 晨乃

▷記事一覧

2000年 京都生まれ
2018年 京都国際フランス学園卒業
2018年よりフランス モンペリエ在住
2021年 Cours Florent 演劇学校 卒業
2021年よりステファン・ロディエの作品に出演
現在、 ロマン・ルイーズに師事。
演劇の他、写真家としても活動中。