PANORAMA STORIES

黄色い春のお便り。ミモザがパリにやってきた Posted on 2025/02/15 NANA メイクアップアーティスト パリ

 
フランスの二月。キリッとした寒さが続くなか、パリの花屋さんには黄色くて可愛らしいミモザが並ぶようになりました。
普段はあまり黄色という色に目を留めることはないのですが、不思議とこの季節のミモザだけは別格。見つけた途端、背中に小さな羽が生えたように心が弾むのです
 

黄色い春のお便り。ミモザがパリにやってきた



 
冬の北フランスは、どんよりとした曇り空が日常です。散歩をしていても、「自然のカラーってこんなにモノトーンだったっけ?」と、色の感覚を失ってしまいそうになります。
そんな寒くて暗い冬の終わりを、一足早く知らせてくれるのがミモザ。日照時間の短いこの国で、ミモザが人々にとってどれほど特別な存在か、暮らしているうちに少しずつ分かるようになってきました。
 

黄色い春のお便り。ミモザがパリにやってきた



 
たくさんの人を笑顔にしてくれるミモザは、主に南仏・コートダジュール地方が産地として知られています。今季は開花がとくに早く、スペインとの国境近くであるピレネー=オリエンタル地方では、12月のクリスマス前にはすでに咲き始めていたそうです。
そんな収穫の様子がテレビで放送されるのも、フランスの冬の風物詩です。取材を受けたミモザ農家さんが、「日照時間が短い土地に暮らす人たちに、ちょっとした陽ざしを届けたいと思って」と、ニコニコしながら答えていたのが印象的でした。
気づけば私も画面に向かって「うん、うん」と頷いていたのですが、もしフランスの冬がカラッと晴れていたら、ミモザの色にここまで反応しなかったのかもしれません。
 

黄色い春のお便り。ミモザがパリにやってきた



 
現在のパリでは、ブティックやホテルのロビーにも「季節の花」としてミモザが飾られるようになりました。
そんな飾りつけを目にするたび、私はふと、あることに気づきます。フランスでは、ミモザをほかの花と組み合わせることなく、ミモザだけを主役にして堂々と飾っているのです。
たしかに花屋さんで目にするブーケも、ほとんどがミモザ単体。たまにグリーンの葉が添えられているくらいでしょうか。
きっと、そんな潔い飾り方がフランスで長く受け継がれてきたのでしょう。冬の終わりを告げるミモザの、あの鮮やかな黄色を余すことなく楽しもうとする気持ちが伝わってくるようで、こちらまで嬉しくなります。
 

黄色い春のお便り。ミモザがパリにやってきた

※野生のミモザ

 
ミモザの便りは、パリや南仏だけにとどまりません。フランスのほかの地域からも、春の予感を運んできてくれます。
たとえば大西洋沿岸、フランス西部で暮らす友人からは、「野生のミモザが満開になっているよ!」と素敵な写真をいただきました。
野生のミモザなんて、パリでは滅多にお目にかかれないものです。花屋さんで手にするブーケとはまた違う、力強さを感じさせる佇まいに「こんなミモザもあるんだ」と、しばし見入ってしまいました。
 



 
地方から届く、自然のままの伸びやかなミモザ。そしてパリから贈る、インテリアとしてのミモザ。お互いにその土地ならではのミモザを贈り合う――そんなやりとりも、この季節ならではの楽しみです。
 

黄色い春のお便り。ミモザがパリにやってきた

※花屋さんにはミモザの苗木も並んでいます

 
こうしてフランスで過ごす年月を重ねるうちに、私もミモザを心から愛おしく思うようになりました。日照時間が短いことが理由の一つだと思いますが、その黄色くてふわふわで健気な姿に惹かれる人は多いのではないかと想像します。
「喜び」「優しさ」「安らぎ」という花言葉のほかに、「私があなたを愛していることを誰も知らない」といった意味が込められているのも素敵。普段はなかなか口にできない想いを、ミモザにそっと託す方がいるのでしょう。
 

自分流×帝京大学



Posted by NANA

パリ在住。世界の美容とコスメのトレンドを追いかける