PANORAMA STORIES

フリマにやみつき親子の週末商人生活 Posted on 2017/08/23 松尾三保子 デザイン&コーディネーター 韓国・ソウル

一人娘の子育てにひと段落ついた2年ほど前から、月1回程度でフリーマーケットに参加するようになった。
韓国に住んで10年以上経っていたが、それまではなにかと生活に追われ、趣味生活や社会的交流を楽しむゆとりなどなかった。

その日は週末ごとに出向く大型ショッピングモールでフリーマーケットが開催されていた。
1階の野外イベント会場では子供たち主役のキッズマーケット、吹き抜けの2階のテラスでは個性溢れる大人たちが集り別のマーケットも催されていた。娘と一緒の私は早速キッズフリマに足を向けた。
よく見ると小学生以下の子供たちが店長となり、古着や読み終わった本、おもちゃなどを随分楽しそうに売り買いしている。瞬間、我が家にも明らかに存在する娘のお古たちが脳裏をよぎる。すでに娘の眼差しは私を直視していた。「あたしもお店やる! 社長やる!」てなノリで翌月のキッズフリマから私たち親子が週末商人と化したのは言うまでもない。
 

フリマにやみつき親子の週末商人生活

昼過ぎから5~6時間開催されるキッズフリマの場所代は1,000円。子供たちが小銭の入ったポシェットを肩に提げ意気揚々と自慢の商品を売る。ママも頑張る。捨てきれない古着、靴、バッグが山ほどあった。

フリマ開始の1時間前になるとseller(売り手)たちが大きな荷物を持って集まる。場所取りをし、商品をひろげる。
実はこの瞬間が最大のショッピングチャンスだということを知っている他の売り手さんや常連さんたちはすでに物色を始め、目玉商品はこの時点で随分売れてしまう。商品の陳列と同時に怒涛のごとく売れる・・・売れる。
ちょっと落ち着いた頃、2階のフリマを覘いてみる・・・。
 

フリマにやみつき親子の週末商人生活

センスの光る手作りの商品たち。キッズフリマのざっくばらんな感じとは異なり、皮工芸品、木材工芸品、手作りのアクセサリーやおしゃれなインテリア雑貨に至るまで、洗練された商品たちが小奇麗に陳列されていた。
 

フリマにやみつき親子の週末商人生活

数回に渡るキッズフリマ参加の挙句、そろそろ次に売る商品が品薄になってきた。売れ残り…要は今後も売れそうにない数点だけが残っている。物売りの快感に魅了された私は、すでに「次は何を売ろう?」と悩んでいた。
私が作れるものを悩んだ結果、ふと手を出した糸と針。こうして小学3年生の時に手芸クラブで学んだ「編み物」の趣味が復活したのだ。
どんな商品が売れるかを考えながら仕入れては作る。日常生活に「創作」と「販売」という目標ができたことで、生活に楽しい変化が訪れた。
 

フリマにやみつき親子の週末商人生活

ここ数年、ソウルや釜山などの大都市を中心に文化イベントとしてのフリマ開催が多くなった。売り手として審査を受け若干高めの場所代を要する専門的なマーケットでは、すでに事業者登録をしているプロの売り手も少なくない。
一方小さな地域の自治体や個人が主催する場合は、地域住民参加型のガレージセール的イベントが多いため、中古商品の販売もできるし場所代も安い。ちなみに私は娘と一緒に歩いていける近所のフリマ限定で参加する方だ。
 

フリマにやみつき親子の週末商人生活

韓国文化ならではの特徴として現金を持ち合わせていない客も多く、商品代金が1000円以上だとキャッシュカードやモバイルバンキングでの支払いも頻繁だ。個性溢れる商品を特別な場所で「売って買う」快感に両者の笑みは耐えない。仕事と子育てオンリーの生活から、いまや地域に顔見知りも増え、社交性も高まった。特に娘は町内の人気看板娘だ。
 

フリマにやみつき親子の週末商人生活

私の場合、あくまで娘との「楽しい週末」を過ごすための趣味活動の一環なので「作った分売り、売った分作る」がモットー。それ以上に売り上げが上がった日には「さらに楽しい週末の外食」などがおまけでついてくる。いまでは客の少ない時間帯に目玉商品を出品し客引きする技も身に着けた。

かくして親子商人のフリマライフはまだまだ続く。
 
 

Posted by 松尾三保子

松尾三保子

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佐賀県生まれ。2004年より韓国ソウルに在住。映画、出版、音楽、旅行業界など、多彩な分野でデザイナー&コーディネーターとして活躍中。夫は韓国人の音楽家。