１１月１日、テレビをつけたらびっくりした。クリスマスに向けての商業戦争がすでに始まっていた。
最新のスマホを囲んでギラギラ目を光らせるテレビの中の家族達は本当に幸せそう。街を歩けば煌びやかな照明、お店に入れば手頃価格の品揃え。フランス人も買い物ラッシュに走る。

だがクリスマス当日、フランス人は聖なる夜をどう過ごす？
 

 
伝統的にクリスチャンのフランス人はクリスマスを家族で過ごす。ノエル当日の１２月２５日、もしくはイヴの１２月２４日に親戚そろって集まったり、核家族だけで過ごしたり。自分の家族と祝ったら、配偶者側の義理家族と再び祝ったりで、ノエルのスケジュールはとにかく忙しい。そう、スタイルは様々だが共通点は多い。

先ずは、豪華なディナー：シャンパン、スモークサーモンとフォアグラで腹ごしらえ。続いて、少し大きめのローストチキンに舌鼓を打つ。デザートはブッシュドノエル、ロールケーキだ。この食事が二度三度続くとさすがのフランス人もおなかを壊してしまう。消化不良は避けられないこの時期、パーティーには体を張って参加する。
年に一度、家族と和やかに過ごす夜なので、素敵なキャンドルやナプキンが施されたテーブルを毎年懲りずに囲む。
そして、お約束のプレゼント交換。家族の人達は頭を抱える。出席者の全員に配らなければいけないので、予算もバカにならない。誰に何をあげる？　誕生日にも何かを贈っているので、そうそう思い浮かばないものだ。年に何度もモノを贈る機会があるので毎回が当たる訳でもない。
実際、嬉しいふりをして翌日はいらないかわいそうな贈り物達をインターネットで売りさばくモノもいるとか……。
 

 
美味しいご飯、欲しかったプレゼントはさておき、肝心のノエルとはそもそも何なのか？

紀元前のローマ帝国では冬至を前後して華やかに宴を重ねていた。常時付きまとう身分はこの時だけなくなり、市民が混じり合い共同意識を確認し合う。やがてキリスト教が広まり、伝道活動を考えた当時のローマ天皇はキリストの誕生を祝う日を当時市民も馴染み深かったイラン神話の英雄ミスラの誕生日（１２月２５日）と一致させた。
このようないきさつでキリスト教徒は１２月２５日にイエスの誕生を祝うに至った。この日だけ贅沢をして、お祭り好きのローマ人たちは神様の誕生を盛大に祝うようになったとか。
 

 
今ではすっかり還俗化したクリスマスだが、覚えておいた方がいいと思う。信念のために迫害され処刑されたキリストの生涯を祝う日だという事を。消耗品を買い、飽きたら捨て、又新しい何かを買う。経済は豊かになる一方だが、人の心は時に置いてきぼりだなと感じる時を思い出す。

２０１７年現在、２５億人の希望になっている貧しく生きた人がいた。なぜこんな事を急にここに書くかというと、少し前に教会に入った時、あまりに美しかったので写真を撮った。そしたらパートナーに注意された。「お祈りしてる人がいるよ、慎もう」と。お互い無神論者なのだが心に響いた。以来、カメラは使わず心に刻む。美しい建造物や芸術、目に見えない信念や希望を培ってきた人間も捨てたものではない。
そろそろ趣旨に戻ろう。ノエルはまずキリスト教のお祝い。だから信者の多くは宴のあと、ミサに行く。私の母も信仰はないのだが讃美歌が好きなので、いつか一緒にサン・ジェルマン・デ・プレ教会に行った。オルガンで奏でられ聖堂の音響効果で響く讃美歌に、どこかで共感してしまう神父の説教に、心の耳を傾ける自分がいた。
 

綺麗に包装された箱の中にはずっと欲しかったモノが入っている。私の喜ぶ顔を想像しながらプレゼントを選んでくれた家族が目に浮かぶ。巷の照明やキラキラ輝くプレゼントはエネルギー消費と生産汚染で成り立つ。そして人間の物欲を象徴している。
そんな事ばかり言っていたらキリがないけれども自覚したい。ノエルにいただくプレゼントを開けながら。