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名盤再読・愛すべきフランス・デザイン「謎めくフレンチインテリア『好奇心の小部屋』とは…?」 Posted on 2023/05/27 ウエマツチヱ プロダクトデザイナー フランス・パリ
「好奇心の小部屋(les cabinets de curiosités:レ・キャビネ・ド・キュリオジテ)」という、ちょっと不思議なインテリア様式は、ルネッサンス時代に始まり、今でも愛好家たちの間で根強い人気だ。
好奇心の小部屋を構成するものは、剥製、鉱物の結晶、植物標本、昆虫標本、貝殻、骨などの自然物を中心としたもので、さながら学者の書斎のような雰囲気。
そこに、レトロな科学機器や、エキゾチックなものなど、怪しげなアイテムが加わることで、よりその魅力が増す。
※標本は円筒のガラスドームに入っていることが多い
16世紀、自然科学が今よりも解明されていなかった時代、「ドラゴンの舌」、「ユニコーンの角」などが、実在するものだと思われていた。
それらは水晶を削ったり、実在する海洋生物イッカクの角だったが、詐欺師によって神秘的に仕立て上げられた。
実在しない色に塗られた、まやかしの植物標本なども。
そして、それを本物と信じ、魅力に取り憑かれた時の権力者たちは、法外な価格で購入し、城の中に「好奇心の小部屋」を作った。
現代の博物館や美術館の原型になったものといわれているが、自然物に人の手が加わった、科学と芸術の間のものという印象も受ける。
※1655年に描かれた「ワームの好奇心の小部屋」
※この子の殻ではないけれど…
18世紀後半をピークにその人気は衰えていったが、20世紀になり再燃。
現代は、ギリシャ神話の怪獣キメラを再現するために、複数の動物を組み合わせて剥製を作ることも。
あえてまやかしを楽しんでいるのだ。
この不思議なインテリア「好奇心の小部屋」の秘密に迫るために、パリにある2つの場所を紹介したい。
※ミステリアスな魅力
まずは、1831年開業の剥製専門店「Deyrolle」。
剥製専門店といっても、ただの剥製が売られているわけではない。
ペガサスの剥製や、幾何学的に並ぶ虫たちなど、アートに昇華された動物たちに出会える。
昆虫の標本も充実しており、その場で好きなものを選べば、オリジナルのひと箱に仕立ててくれる。
この日は、素敵なマダムが来店し、自身が施した刺繍に合う玉虫を探していた。
刺繍と昆虫は意外な組み合わせだが、出来上がったら素敵そうだ。
※友人が仕立ててもらった昆虫標本
※マダムの刺繍と玉虫
2つ目は、「狩猟自然博物館(Musée de la Chasse et Nature)」。
こちらは剥製や、猟銃の展示が主だが、全ての展示室がインテリアデザインの参考にしたい! と思うような細部まで凝った作り。
美術館がたくさんあるパリで、「ここが一番好き!」というデザイン業界の人は多い。
標本の陳列棚が整然と並ぶ様はアカデミックな空気に包まれているのに、中に並ぶのはちょっと不思議なものだったりして、遊び心を感じる。
※猟がテーマの部屋
※樹木のような照明
※金ピカのワニがひっくり返った照明
「猿の間(Salon des Singes)」にあった、猿の惑星のワンシーン写真や、猿が人間の頭蓋骨を持つ小さなフィギュアは、人間と猿の関係のパラダイムシフトを表現している。
その横には、人のお尻を模した彫刻のような、世界最大の種、オオミヤシの種が並ぶ。
※猿の惑星のワンシーンの写真と、猿が人間の頭蓋骨を持つ小さなフィギュア
※世界最大の種、オオミヤシの種はまるでお尻
一方で、「トロフィーの間(Salle des Trophées )」では、狩猟の際に狩ることができたら表彰モノという大物の、王道の剥製がズラリと展示されている。
常設展に企画展の作品が潜んでいるのだが、それも見つけるのも楽しい。
ここの空間では、狩猟反対を訴えるような現代作品も並び、博物館は狩猟をメインに展示しつつも、世の中の様々な意見を汲み上げていると感じた。
動物たちの鳴き声や、唸り声も音声として流れていて、色々考えさせられる。
※トロフィーの間には、大型動物の剥製と天井のモダンなペイント
※陳列棚にひっそりと、Christian Gonzenbach氏の作品「safari」
キレイな石や、貝殻、鳥の羽など、子どもの頃、好奇心いっぱいにワクワクしながら集めていたことを思い出す空間。「好奇心の小部屋」をつくるという名目で、またそういったものを集めてみたくなった。
※トゲトゲの実を置き、「座るべからず」というメッセージの遊び心
※好奇心を満たしてくれる解説箱が館内のあちこちに
常設展はほぼ全室バーチャル訪問(https://www.chassenature.org/visite-virtuelle)ができるので、日本からでも覗き見ることが可能だ。
※バーチャル訪問でのトロフィーの間
Posted by ウエマツチヱ
ウエマツチヱ
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フランスで企業デザイナーとして働きながら、パリ生まれだけど純日本人の娘を子育て中。 本当は日本にいるんじゃないかと疑われるぐらい、日本のワイドショーネタをつかむのが速い。