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佐伯幸太郎の美女と美食三昧「妻子に頭が上がらない男たちへの挽歌」 Posted on 2017/05/24 佐伯 幸太郎 ライター パリ

わおーん。
どうも、佐伯幸太郎です。前回、紹介したクレージーホースでの密会がね、妻の順子にばれちゃったの。
茜美鈴ちゃんからのライン盗み見られちゃって。

「こらゲス佐伯!」と朝早くに叩き起こされて、ボコボコに。なんと妻は合気道2段。俺はそろばん3級。
通りかかった娘の理沙が「あ、その子、私の友達だよ。パパにパリを案内してもらったの」と嘘の助け舟。
おかげで一命をとりとめたんだけど、絆創膏が痛々しいっす。

理沙が「パパ~、美味しいもの食べたいなぁ」と猫なで声で言うものだからさ、今日は家族サービス。
妻子をパリで一番美味い鉄板焼きレストラン ”ル・コンセール・ド・キュイジーヌ” に連れて行くことになっちまった。えへへ。セーフ。
 

佐伯幸太郎の美女と美食三昧「妻子に頭が上がらない男たちへの挽歌」

旧ホテル日航のメインダイニングだった「弁慶」のスターシェフ、Naoto Masumoto氏が7年前に15区、ビル・ハケムにオープンさせたレストラン。
大きな鉄板調理台(グリドル)が店の中央にで~ん。お客さんがそれを囲む格好だ。外国人はやっぱり鉄板が好きだよね~。

スピード感もあるし、豪快、スペクタクルとしても面白い。その上、ここは料理も満点。
オフィス街だがらか日本人観光客はほぼゼロ。常連のフランス人ばかりなので、女の子と2人で来てもバレないよ~。えへへ。
昼も夜も満席大人気の穴場レストランなのです。その上、安い!
 

佐伯幸太郎の美女と美食三昧「妻子に頭が上がらない男たちへの挽歌」

日本の鉄板レストランは超高級というイメージ、一人数万円なんて店もざら。
しかし、こちらはフルコース(ランチ)で34ユーロ(4千円)。いいね、いいね。
順子の機嫌をとるために奮発してペルナンベルジュレスの白を1本頼んじゃいましたよ~。
もちろん、スタートはシャンぺーンときた。

「あのさ、ゲスくん」不意に妻が口火を切ったぁ。ぎょっ。
「ラインは一応全部読んだからね。理沙の友達だとしてもあの馴れ馴れしさは怪しいでしょ」
「怪しくない、怪しくない」と理沙が笑いながら助け舟。
「ママ、よく考えてよ、20歳だよ。こんな中年男、相手にする?」

順子が私の顔をまじまじと覗き込む。マジマジ? 
シェフがサっと前菜を出してくれたぁ。グッドタイミング! 話題変えるなら今がチャンスだ! 
しかし、話題って変えづらいね。
 

佐伯幸太郎の美女と美食三昧「妻子に頭が上がらない男たちへの挽歌」

佐伯幸太郎の美女と美食三昧「妻子に頭が上がらない男たちへの挽歌」

佐伯幸太郎の美女と美食三昧「妻子に頭が上がらない男たちへの挽歌」

「たとえあの子が理沙の友人だとしても、20歳の子とクレージーホースで手を繋いでシャンパン飲んでいいの?」と順子が料理を頬張りながら攻め込んでくる。
理沙が「あの子、誰とでも手を繋ぎたがるし、誰とでもいちゃいちゃした写真撮りたがるの。パパのせいじゃないわよ」と救いの手。ん? なんか、おかしいな。
理沙が私を振り返り、「ね~、そうよね?」
「ああ、そうだよ。困った子だった。でも、お前の友達だからね。しゃーね~な~」

あはは、あはは。あははは。あははは。おかしい。
順子が私を睨んでいる。
理沙は調子よく笑っている。

すると、その時、ボンっと派手な音が、鉄板が燃え上がったぁ。順子が、わあ、と声を張り上げた。火柱が天井まで登っていく。今だ、話題を変えるチャンス! 

「すげえ、さすが鉄板焼きは凄いっすね。和食のエンターテインメント~」
 

佐伯幸太郎の美女と美食三昧「妻子に頭が上がらない男たちへの挽歌」

メインは私が「鮪の叩き風」、理沙が「鴨の味噌ソース」そして順子が「ガンバス海老のパセリソース」を注文。

燃え上がったのは順子が頼んだ海老であった。
お前も一緒に~。燃えろ~、いい女~。世良公則~。
 

佐伯幸太郎の美女と美食三昧「妻子に頭が上がらない男たちへの挽歌」

佐伯幸太郎の美女と美食三昧「妻子に頭が上がらない男たちへの挽歌」

佐伯幸太郎の美女と美食三昧「妻子に頭が上がらない男たちへの挽歌」

それにしても「ゲス」はないでしょ? 
ゲス不倫が流行ってるけど、実際、俺の場合、そういう関係になった子なんていないんだよ。その手前ってのはあるけど、最後の最後は愛妻家、佐伯幸太郎じゃん。
読者の皆さんが一番知ってますよね? ね? ただちょい悪なだけだよ。嘘がない。そこんとこ、勘違いしてほしくないなぁ。世の中のゲスと一緒にされちゃ佐伯幸太郎の名が泣きますって。
悪いけど、口説く気はある、女も口説かれたい、でも、これは遊びだぜ、ベイビー。本気になったらみんな悲しくなるじゃん。それが最初からわかってのお約束デートなんだよ。
だから俺はゲスの手前で踏みとどまることができている。小ゲスです。ゲスもどきと呼ばれたってかまわない。
しかし、ゲスじゃない!
 

佐伯幸太郎の美女と美食三昧「妻子に頭が上がらない男たちへの挽歌」

佐伯幸太郎の美女と美食三昧「妻子に頭が上がらない男たちへの挽歌」

「あのね、何一人でぶつぶつ言ってるの? ママ、トイレに行ったよ」
「あ、ほんとだ」 ん? 何? 理沙が鉄板の下で手を伸ばす。
「なに?」
「だから、出せよって」
「は? お前、親を脅かすのか?」
「うるさいんだよ。離婚とかなったら大変でしょ? パパの味方だから、早く。100でいいから」
「100?」

理沙が俺の鞄から財布を取り出し、100ユーロ札を引き抜いた。
うう、なんて娘だ。親が親なら子も子だ。茜美鈴が懐かしい。
そこに妻が帰って来た。

「どしたの? 暗い顔して。あんたがゲスじゃなくてよかったわ」

あはは、恐ろしい世界です。

「パパ、理沙、デザート食べたい~」
 

佐伯幸太郎の美女と美食三昧「妻子に頭が上がらない男たちへの挽歌」

Posted by 佐伯 幸太郎

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Kotaro Saeki
ライター。渡欧25年のベテラン異邦人。ワインの輸入業からはじまり、旅行代理店勤務、某有名ホテルの広報を得て、現在はフリーランスのライター。妻子持ちだが、美しい女性と冒険には目がない。モットー、滅びゆくその瞬間まで欲深く。