PANORAMA STORIES
ロックダウン全面解除、レストラン再始動 Posted on 2020/06/26 尾崎 景都 日本語教師 パリ
3月15日から始まった飲食店などの閉鎖から丸3ヶ月経った6月14日、マクロン大統領の演説があり、条件付きではあるものの翌15日からの再開が認められた。6月2日からテラス席のみでの営業再開が認められていたが、テラス席のないレストランは当然再開できないため、6月15日は多くの飲食店にとって待ちに待ったXデーとなった。
夫の働いているレストランは、5月11日からの外出禁止解除を受け、5月12日からお持ち帰り限定で営業を再開させていた。とは言え、レストランのオーナーでもあるメートル(サービスの責任者)とオーナーシェフ、共同経営2人のみでの再開であったため、夫は引き続き自宅待機をしていた。偶然にも私の産休が6月15日からだったので、それまでは夫が全面的に家事と育児をメインでこなし、私は随分助けられた。
そして、6月14日の仏政府の会見。14日に会見をして、15日から営業再開OKと言うのだから、さすがに少し横暴じゃないかと感じた。飲食店のオーナーたちからしてみれば、再開しても良いと言うならすぐにでも再開したい気持ちと、そんなに急に言われてもという気持ちがあっただろうと思う。テラス席でオープンを始めていたレストランならまだしも、お持ち帰りしかやっていなかったレストラン、お持ち帰りすらせずに閉めていたレストランの焦りは相当だっただろう。夫には早速、会見翌日にオーナーから、16日に仕込み、17日にはもう営業を再開できるようにしたい、という旨の連絡が入った。夫は、「3ヶ月も働かないなんて、社会人になってから初めてのこと」と苦笑しながら初日の仕込みに向かったが、半日仕事しただけで膝が笑ってしまったとぐったりして帰ってきた。
レストラン再開の条件として、客同士の距離を取ること、10名以上の団体は入れないこと、従業員全員がマスクを着用すること、基本的に手渡しのメニューは使用せず、黒板やQRコード読み取りでの閲覧にすること、止むを得ずメニューを客へ渡す場合は、都度消毒すること、などの措置が取られた。夫曰く、席数を減らしているものの久しぶりの仕事で身体がすぐに反応しない上、勤務中キッチンでずっとマスクをしているのは想像以上にしんどい、らしかった。広いキッチンではないので熱がこもるし、6月に入って外の気温も上がってきて、息苦しいほどだったという。また、パリジャンたちの気の緩み方にも不安を覚えたと言っていた。再開初日、レストランは満席。しかも、マスクを着用していない人ばかりだったらしい。食事中マスクを取るのは仕方ないが、来店時既にマスクをしていないというのはいかがなものか、と零していた。連日満席というのは喜ばしい。久しぶりの娯楽に頬を緩ませているお客さんたちも微笑ましい。だが反面、我慢してきた反動のようにレストランに人が集まるという事態に、一抹の不安を覚えずにはいられなかった。
ドタバタの営業再開をひとまず乗り切った週末、夫は「長かった……」と身体をさすった。そんな夫を労いつつ、徐々に普段通りの日常へ戻っていく街へ複雑な思いを抱くのだった。
Posted by 尾崎 景都
尾崎 景都
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パリ第7大学 言語音声学科 修士課程修了後、日本語教師として活動中。夫は料理人。