PANORAMA STORIES
q.b.レシピのないレシピ帳~クリスマスのサラダ~ Posted on 2023/12/20 八重樫 圭輔 シェフ イタリア・イスキア
イスキア島で過ごす、20数回目の雪のない冬。
もともと温暖な気候の島ですが、今年はまだストーブをつけるような日も少なく、暖冬のような気がします。
5月から休みなく咲き続けているカーネーションや日日草、こぼれ種から次々と顔を出すカモミールなどがシクラメンと並んでいる、交錯する季節感。
でも先日、クリスマスのイルミネーションが一気に点灯されると、もう年末なのだという実感がやっとわいてきました。
今年のイルミネーションは例年と違うらしい、と噂には聞いていましたが、実際とても華やかです。
(町の中心の広場)
(噴水に設置されたキリスト生誕の場面のジオラマ、プレゼーピオ)
わが町フォリオは数か月前に若い町長が就任したばかりで、その意気込みが伝わってきます。
有名な歌手を招いて街中でコンサートを企画したり、数件のレストランを集めてチャリティーの屋台を開いたり、中でも目玉は港の脇に設置されたスケートリンク!ほんの小さなものですが、娯楽施設の殆どない島の子供たちは大喜びです。
この時期は観光客も殆ど無くホテルも大半が閉まっているのですが、こうしたムーブメントを続けていけば将来的には島外からも人が集まり、街にも活気が生まれるかもしれません。
さて、こちらのクリスマスは家族や親せき同士で集まり、家で過ごすのが主流です。
24日は魚料理、25日は肉料理を食べるのがならわしで、ここは各家庭の料理番の腕の見せ所。
何日も前から準備や買い物に大忙しです。
そしてイタリアの他の州と同様、ここカンパーニア州にもクリスマスシーズンには欠かすことのできない伝統料理が幾つかあります。
今回はその中からインサラータ・ディ・リンフォルツォというサラダをご紹介いたしましょう。
大事なディナーで慣れない料理にチャレンジするのは、ちょっと勇気がいるもの。
そこでメイン料理は作り慣れたものにしていただいて、そこに気の利いたサラダがあると良いのではないかと思いました。
本来のレシピはジャルディニエーラと呼ばれる、複数の野菜のピクルスが入っていて、これは瓶詰め後ひと月ほどの熟成期間が必要です。
また、パパッチェッレと呼ばれるパプリカの一種の酢漬けも欠かせません。
しかし、固いことは言わず、身近に手に入る野菜を使って即席ジャルディニエーラを作り、代用しましょう。それではレシピです。
クリスマスのサラダ~インサラータ・ディ・リンフォルツォ~
材料
○カリフラワー1株○塩漬けケイパー(無ければ酢漬けのもの)20g程
○オリーブ100g程(グリーンとブラックの両方、もしくはどちらか)
○アンチョビ50g程○ワインビネガー、オリーブ油q.b.(適量)
(注)イタリアのカリフラワーは1株800g前後あります。日本のものは400~500g程とあったので、それに合わせて分量を調整してください。)
(即席ジャルディニエーラ用)
○人参150g ○パプリカ(赤か黄色、もしくは両方)150g○塩10g ○砂糖20g○ワインビネガー150ml ○白ワイン150ml(無ければ水でも可)○ローリエの葉1枚(無くても可)
作り方
①まずは即席ジャルディニエーラを作ります。
小さめの鍋にワインビネガー、ワイン(または水)、塩、砂糖、オリーブ油、ローリエを入れてひと煮たちさせます。
小さめのスティック状に切った人参を入れて5分間煮ます。
5分経ったら短めのくし切りにしたパプリカを加えてすぐ火を消します。
粗熱が取れたら他の容器に移して半日、できれば1日おきます。
②カリフラワーをきれいに洗い、蒸し器または塩水で茹でます。
火の通しすぎに注意しますが、イタリアでは野菜を日本よりもしっかり茹でるので、皆さんが思うよりも若干やわらかめかもしれません。
今回は蒸し器で10分蒸しました
③カリフラワーが冷めたらお気に入りのサラダボールに入れて軽く塩をし、ワインビネガー、オリーブオイルをひと回し入れて混ぜます。
お好みで胡椒も。
④オリーブ、塩抜きしたケイパー、食べやすい大きさに切ったアンチョビ、水気を切ったジャルディニエーラを3分の2程加えます。
味見をして塩、ビネガー、オリーブオイルを適量足します。
酸味のきいたさっぱりとした味わいです。
ジャルディニエーラは半分くらいの大きさに切っても良いです。
全体をよく混ぜ、冷蔵庫で2時間ほど休ませて完成です。
簡単に書くと、カリフラワーを茹でて、すべての材料を適量、彩りよく加えて味付けする、ですね。
使う食材は、イタリアではどの家庭でも常備されているものばかりです。
リンフォルツォには補強、強化という意味があって、このサラダの名前の由来には諸説あります。
一つは、クリスマスイブに作られた後、数日間にわたり他の材料を加え、補強しつつ食べるからというもの。
また、昔のイブの魚料理は現在よりも質素なものだったため、それを補うためだったという説も。
いずれにせよ、カラフルでさっぱりとしたこのサラダは時間が経つにつれ味がなじみ、数日間にわたって冷蔵庫で保存がききます。
ぜひ挑戦してクリスマスの食卓を補強してくださいね!
それではまた、普段着の食卓で。
Posted by 八重樫 圭輔
八重樫 圭輔
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シェフ。函館市生まれ。大学在学中に料理人になることを決め、2000年に渡伊。現在は家族とともにイスキア島に在住。