PANORAMA STORIES
お皿と料理の舞台演出 Posted on 2016/12/03 小林 圭 シェフ パリ
僕はお客様にお出しするお皿にとくに強いこだわりをもっています。
レストランKEIでは個性豊かな3人の素晴らしい職人の方々にオリジナルのお皿を作って頂いております。
まずは、Jaune de Chromeさん。きわめて色使いが得意な職人さんです。
日本ではなかなか見ることのできない深い色合いの配色でお皿を作ってくれます。
レストランKEIのオープン時から一緒に仕事をしています。
もう一人はKamachiさん。日本を代表する有田焼のKamachiさんです。
独創的なお皿や色を提案してくれます。日本を意識した色合いや、ヨーロッパにはないような金や銀を加えたデザインなど斬新なお皿を提案してくださいます。
最後に、もう一人、Sylvie Coquetさん。
彼女は創造性が高く、僕の料理やまたはそこから想起されるインスピレーションから、創造性を広げて形にするのが得意な方です。とくに 自然からのインスピレーションを大事にされています。
これらの職人さんたちが僕の料理のイメージを大切に考えて毎回コラボレーションしてくださっています。
お皿の重要性についてお話をしましょう。
彼らのお皿を使うことで、僕の料理はさらに映え、お客様の食欲を視覚からも刺激することができます。
もっと料理を美味しそうに見せること、舞台のように演出が大事です。
日々試行錯誤の中にありました。
もっといいお皿はないものか? 日々のプレゼンテーションの中で悩んできました。それは今現在も続いています。
メニューが変わるたび、果たしてこのお皿でいいものだろうか、と常に演出家の僕は悩んでいるのです。
その日々の苦悩の中で僕はこの職人さんたちと出会いました。
レストランKEIでは特に素晴らしいお皿とコラボしていると思います。
毎日スタッフと話し合い、その日の人数、その日の料理に使うお皿を常にピカピカにして、まるでカンバスに絵を描くように、舞台を演出するように、お皿に料理を盛り付けていくのです。
このような素晴らしいお皿を使っていると、つい遊び心も入れてしまいたくなるものです。
同じ焼き方、同じ味付けの料理でも、お客様一人一人に、色が違がったり、形が違ったお皿に盛り付けたいと思うこともあります。
たとえば、うちで大変好評なスペシャリテ、スズキの鱗焼きなどは、あえて他の魚料理とは異なるお皿を使います。
お皿の深さや幅を変えることによって、ワインのように香りの立ち方が変わるからです。
この料理に白い平たいお皿だったらどうなるだろう、と考えると面白いですね。
お皿と向かい合って、
その日の気分やコンディションを鑑み、
料理の演出方法をいろいろと創意工夫しているわけです。
どうやったらよりエレガントに見せることができるのか?
どうやって盛り付けるとお客様により深い感動を提供できるのか?
お皿職人の方々の思いが詰まったこのような素晴らしいお皿と僕の料理とのコラボレーションが、
まるで舞台のようにそこで演出され、演じられ、
お客様の味覚に新しい感動をお届けしているというわけです。
Posted by 小林 圭
小林 圭
▷記事一覧Kei Kobayashi
シェフ。長野県生まれ。長野で料理人として第一歩を踏み出し、次いで東京へ。東京のフランス料理店に勤務する間に本場で学びたくなり、1999年渡仏。フランスでは地方の豊かさを知ろうと、南仏やアルザス地方の有名レストランを回る。2003年パリへ行き、世界的なシェフ、アラン・デュカス氏のレストラン「アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ」に職を得て7年間働く。この間最後の4年はスーシェフであった。2011年3月に自分のレストラン「Restaurant Kei (レストラン・ケイ)」をオープン。