PANORAMA STORIES

「クオッカに会いたい!」 英語が苦手な中年パパの 西オーストラリア専業主夫日記 Posted on 2017/04/21 佐藤 カナメ 主夫 オーストラリア・パース

南半球のパースでは、4月の中盤はスクールホリデー。
秋の我が家のお気に入りは、パースからインド洋を西へフェリーで1時間のところある小さな島。
南北5キロ、東西12キロのロットネスト島。
パースの人々にとって非常に身近なリゾートで「ロットー」と呼んだりする。

この国立公園である島内への自家用車乗り入れは禁止で、主な移動手段は自転車か巡回バス。
自転車は持ち込むこともできるし、レンタルもできる。自転車に乗れない幼児は、自転車の後ろにつないだトレーラーに乗ってご機嫌だし、シニア組は巡回バスを使ってお気に入りのビーチでゆっくり過ごす。
 

「クオッカに会いたい!」 英語が苦手な中年パパの 西オーストラリア専業主夫日記

自然保護が徹底しているなかで、この島にはとてもフレンドリーな野生動物「クオッカ」がいる。
カンガルーと同じ有袋類で40センチほど。
この島以外では出会うことのできない、つまりこの島以外ではほぼ絶滅してしまった彼らだが、島のあちこちにいて、人を全く恐れない。
エサを与えたり、触れたりすることはもちろん禁じられているが、気軽に記念撮影に応じて? くれる。
 

「クオッカに会いたい!」 英語が苦手な中年パパの 西オーストラリア専業主夫日記

最初に家族でこの島を訪れたのは3年前。はじめの頃は、クオッカを見つけるたびに「うぁ-! いたー!」と興奮して自転車を飛び下りていた我が家の少年2人も、最近はフッと笑みを浮かべて通り過ぎるようになった。
私も、稀少動物が日常生活のすぐ先にいるという不思議な感覚を味わっている。

この島に来るたびに、少しずつ成長してきた息子たちだが、実は前々から持ち越されていた「宿題」があった。
それは「島内1周サイクリング!」インフォメーションセンターでもらった地図によれば、1周22キロで3~5時間のコース。海岸沿いの道とはいえ、多少のアップダウンはある、といっても大げさなものではない。
ただ、初めて島を訪れた当時、まだオーストラリアでの生活に戸惑いも多かった11歳と7歳の少年たちに、それはいつかチャレンジする冒険として記憶されていた。そして今回、とうとう「その日」がやって来た。

すでに彼らも14歳と11歳。学校へは自転車で通っているし、体力の心配もない。朝一番で長男に全員分のランチを買いに行かせ、各自リュックに500ccの水ボトルを2本ずつ、その他それぞれ必要な装備を揃え、確認作業! 島の中心を離れたら、トイレ以外の施設はない。長男のリュックにはお気に入りの撮影機材がギッシリ、私のリュックは予備の水ボトルがさらに数本と、パンク修理キット&その他諸々、次男の背中にはみんなのお弁当。妻の準備が整ったところで、いざ出発!
 

「クオッカに会いたい!」 英語が苦手な中年パパの 西オーストラリア専業主夫日記

この時期は暑くもなく、寒くもなく、絶好のサイクリング日和。

快調に海岸線を進む。海側から丘へ目をやると、大きな風力発電の風車が見える。
島内には、ソーラーパネルが並ぶ地域や、塩水を淡水化する施設などもあり、島の自然を守りつつ最新の技術を積極的に取り入れながら生活している様子がわかる。
 

「クオッカに会いたい!」 英語が苦手な中年パパの 西オーストラリア専業主夫日記

一方で、19世紀にはオーストラリア先住民、アボリジナルの人々の流刑地とされ、第2次大戦時中には軍事要塞だったロットネスト島には数々の史跡も残る。

丘の上の砲台に弾薬を運ぶために引かれた線路に、今は観光列車が走る。
 

「クオッカに会いたい!」 英語が苦手な中年パパの 西オーストラリア専業主夫日記

息子たちの走り方は、東京で自転車通勤をしていた私から見れば決して賢い走り方ではない。
下り坂は何もせずにただ風を楽しみ、登りになると必死にペダルを踏み込む。
何回か走り方を教えたが、一向に変える気配もない。案の定バテてきた。
ただ、そんな中彼らには気づいたことがあった。自分たちよりさらに後ろで、母親が苦しそうに、必死にペダルを踏んでいたのだ。少し前まで、体の大きさも、体力も、明らかに自分たちより母親の方が勝っていた。でも、その母親が自分たちと同じように苦しそうにペダルを踏んでいる。
坂の上で、母親を待つ彼らの表情を見た。毎日の生活の中で「もう、早くしなさい!」と言われ続けてきた少年2人が、今は坂の上で母親を待っている。こうやって、親を振り返ることが増えるたびに、自分たちの成長を感じ、自信を深めていくのだろうか。
風を受けながら母親を待つ彼らの表情は優しかった。
 

「クオッカに会いたい!」 英語が苦手な中年パパの 西オーストラリア専業主夫日記

スタートから4時間ちょっとで島内1周サイクリングは無事終了!
街に戻ると、クオッカたちがまた笑顔で迎えてくれた。
 

Posted by 佐藤 カナメ

佐藤 カナメ

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Kaname Sato
主夫。プロダクションに籍を置き、テレビ番組をひたすら作り続けて20余年。2013年に退職。2014年に家族とともにオーストラリアへ渡る。妻、息子2人の4人家族。現在は妻が日本で働きながら日豪を往復。本人は英語に四苦八苦しながら、子供の世話に追われる毎日。