PANORAMA STORIES
日本とこんなに違う、近くて遠い、フランス人の距離感 Posted on 2023/10/11 ルイヤール 聖子 ライター パリ
「最近、めっきり見かけなくなったな」というフランスの習慣に、「ビズ」があります。
ビズとは、頬と頬を合わせて唇でチュッと音を出す、フランス式の挨拶です。
この儀式はパンデミックで一時的に消失しましたが、3年経った今でも“完全復活”とはなっていません。
フランス人が今でもビズをするのは、家族か親しい友人だけで、知らない人&職場ではほとんどなくなりました。
以前はそこら中で見かけていたビズも、いざなくなると寂しいものだな・・・と外国人ながら思ってしまうのですが、実際のフランス人はこれをどう思っているのでしょうか。
「文化だから完全に消えるのは悲しいけど、職場でのビズはなくなって良かった」のだそうです。
事実、2021年には91%のフランス人が職場でビズをしなくなった、とのこと。
そしてその新習慣は今でも続いていて、したとしても拳を“ごっつんこ”とくっ付ける、より距離感のあるものに変わってしまったそうです。
フランス人はもとから、家族との距離はとても近く、しかし職場の人間とはかなりの距離を保っているなという印象を受けます。
友人同士の距離でさえ、意外とさっぱり・あっさりしているものです。(パリか地方か、人にもよります)
これがビズ問題でさらに明確になった、というわけですが、家族間の濃厚な距離感には今でも「ひええ」となるくらいです。
ではどのくらい近いのか。
毎日のメールのやり取り(それもチャットのようにポンポンと)、顔と顔をかなり近づけて話す、用事がなくても電話をしたり、何かにつけてホウレンソウ(報告・連絡・相談)していたり。
そして「ありがとう」と言うときも、ビズの嵐・・・だったりします。
私がいちばん驚いたのは、母親がキッチンで料理をしているときに、息子が後ろからハグをして、さらにほっぺにチュッとしていたこと。
まるで付き合いたての恋人同士のような光景に、日本人の私は「・・・」となってしまいました。
仏人夫や義理家族からも、「ヤッホー、今どうしてる?」という内容のメッセージが仕事先から送られてきたりします。
仕事中に私用のメールをばんばん送る、とは日本人の私からはとても考えられないことです。
「大丈夫なのか?」と訊くと、「大丈夫。家族にもしものことがあったらいけないから」と返ってきました。
“もしものこと”なんてそう多くはありませんが、彼らが本当に家族ベースなんだな、というのは伝わってきます。
このように、仕事中でも私用で携帯を見ていることが多いフランス人。
これは主に家族や恋人と会話しているのだと思われます。
※しかし職種にもよります
この距離感が、職場だと一気に遠くなります。
たとえば18時が終業時刻だとしたら、ピタッと定時で帰ります。
飲みにケーションは一切なし。
あるとしても、就業時間内に会社のカフェテリアで「Pot(ポ)」を。(納涼会のようなものです)
歓送迎会もランチだったり、夜はほんのたまに、気の合う同僚とアペロだけ、というような具合です。
それも金曜日は友だちや家族との時間だから、職場の人間とは金曜日を避けるといいます。
土日祝日をともにすることはまずありません。
このように、「近い」と「遠い」がはっきりしているフランス人の距離感。
パーソナルスペースは広いようで狭く、その切り替えスイッチも早いという印象を受けます。
特に、家族と他人のあいだはスパっと線引きしているため、ほかの誰かについて干渉する、なんてことはほとんどないようです。
逆を言えば、家族については日本より干渉が多いかもしれません。
また、自分の機嫌は自分でとる、というフランス人も多いです。
自分との距離感の取り方が上手だな、と思うことは本当によくあります。
Posted by ルイヤール 聖子
ルイヤール 聖子
▷記事一覧2018年渡仏。パリのディープな情報を発信。
猫と香りとアルザスの白ワインが好き。