PANORAMA STORIES
日本とこんなに違う、フランスのたてものデザイン、かわいい郵便受け Posted on 2023/12/04 ルイヤール 聖子 ライター パリ
さて、フランスの建物の外観は、ほぼ“非日常的”といえるほど美しいものばかりです。
とはいえ北フランスと南フランス、それから首都パリとでは雰囲気がまったく異なっていて、それぞれが歩んできた歴史・天候ととても深く関わっています。
パリの街並みが綺麗、とされているのは、色や高さに統一感があるからだと思います。
もちろん統一感だけではありません。
シックな色合いに突然くる赤の差し色(一階のカフェによくある雨よけテント)や、壁をつたうツタの葉なども、素のセンスが本当に良くて、曇り空にどう映えるか? というのを予め計算していたんじゃないかと思われます。
※昨年10月、秋は葉のグラデーションが綺麗です
パリを離れると統一感は少しなくなりますが、今度は逆に可愛らしい一軒家が現れてきます。
またフランスには電柱・電線がほとんどありません。(地中に埋められています)
地震のないフランスだからできる技、とはいえ、美意識がここまで徹底しているとやはり、「さすが!」という一言に尽きます。
前置きが長くなりましたがここからが本題です。
さて、今までの写真で、フランスの建物の“ある特徴”にお気づきでしょうか。
「家どうしがくっついている!」
これは、渡仏したての頃からいつも疑問に思っていました。
個人主義の国なのに、家どうしがくっついている……のは、なぜ? どんなメリットがあって、どんな目的があるの? と、ずっと不思議だったのです。
個人主義が通らない複雑な事情でもあるのでしょうか。
※お隣がスーパーマーケットであっても、くっつけます。
しかしこれは、個人主義とはまったく関係なく、むしろメリット多めの「石造境界壁」と呼ばれるものでした。
家と家のあいだには厚さ30cmほどの壁があり、それを隣どうしで共有するということです。
歴史的にフランスの各都市は、城壁都市でありました。
住宅を隙間なく建てることで、外からの攻撃(砲撃)にも耐えやすくなったというわけです。
建築的にその風潮が残っているのと、「外気に触れる面積を減らすことで断熱効果を高める」という狙いが今日ではあるそうです。
また、都市部は土地の値段が高いため、ぎりぎりまで土地を有効活用します。
フランスらしい合理的視点ですね。
ですので、フランスでは日本より角部屋の比率が低く、窓が大きめでないと採光が難しい、といった難点があります。
ただ冬の室内は、断熱効果が高く確かに暖かいです。
※私のアパート(1階)もお隣のビルト・イン・ガレージにくっつかれていますが、騒音対策はばっちりで、車の音は今まで一度も聴こえていません。
※ちなみにこちらの家は、昨年夏からずっと骨組みのままです。建築スピードは日本に比べてゆっくり。
パリ郊外ですと前述したようにアパルトマンが減って、一軒家が多くなります。
パリ郊外は100%安全ではないため、堀や門などが結構高めに、頑丈にできています。
しかしこれらには柔らかで攻撃的でない色が使用されているので、「圧迫感がない」というのが利点ですね。
南仏になると、青い空に映えるよう外構がもっとカラフルになります。
※郵便受けも可愛い。
※雨戸周りのデザインも凝っています。
では話をパリに戻させてください。
ほとんどが石造りのパリでは、重厚感にマチュアな魅力が加わっています。
なので建物に「色」を感じる機会は少ないのですが、感じる部分といえば、アパルトマンの「玄関扉」がまず思い浮かびます。
これは建物の総合出入り口、と言えるでしょうか。
ビルのエントランスのようなものです。
古い建物が多いパリでは、ここをくぐって内部に入るわけですが、扉にはシックな色が多く採用されており、実は取っ手も素敵なデザインをしているのです。
※このハンドルタイプがいちばん多い。次いで、丸い形の握り玉タイプも多いです。
※ドアノッカータイプ。
フランスは地域によってまったく外観の雰囲気が異なります。
代々の家主が修復しながら使い続けており、住宅ごとにそれぞれの個性が光っている。
外観の差はあっても、家の寿命は大変長く、リノベーションしながらずっと住む、というのが共通点であります。
※フランスのカンパーニュ(田舎)では石積み住宅が特徴的です。
Posted by ルイヤール 聖子
ルイヤール 聖子
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猫と香りとアルザスの白ワインが好き。