PANORAMA STORIES

封鎖から新しい世界へ Posted on 2020/03/23 エロチカ・バンブー バーレスクダンサー ベルリン

世界がすごい勢いで動いてる。ヨーロッパ中が国境封鎖だったり、外出禁止だったり、なんだか目まぐるしい。ここベルリンも感染者は増え、スーパーからパスタが消え、トイレットペーパーが消え、、、って言いたいところなんだけど、私には全く信憑性がないの。

もちろんベルリンでも嘆いている人々は多い。ドイツでは買い占めのことを「ハムスター買い」と呼ぶ。ハムスターは、ほっぺにいっぱい食べ物を溜め込むから。裕福層の住むエリア、ミッテ地区やプレンツラウアーベルグ地区からは人が消え町が空っぽだとかスーパーに行っても何も手に入らない、と、ハムスターへの嘆きと共に虚しい写真がSNSに飛んでくる。そこには怒りや不安のエネルギーも、もれなくついて来る。

封鎖から新しい世界へ



ところが、私の住むエリアは毎回スーパーに行けば、パスタも余るほど売っていて食品も生鮮食品も艶々と並んでいる。「今に無くなるよ」と言われて、私もそうなるのかなあと漠然とは思うけれど、今日も同じようにそこにある。まあ、もしパスタが無ければ(マリー・アントワネット風に)ケーキを食べれば良いじゃないの。お金もちだったら、そうするわよ!これ、皮肉よ、ぷんぷん。

ここは毎日スーパーが空っぽの地域に比べると、お金に縛られていない人達が多いのかな? だいたい、お金そのものがないのだから縛られないし買い占めもできない。
このエリアに住むのは精神的に自立した人達が多い。芸術家、ヒッピー、ミュージシャン、DJ、癖のある学者、命ひとつで逃げてきた移民などが混じり合って住んでる。ロックダウンされてもされなくても、もともと”9 to 5”の仕事があるわけじゃなし。生活のリズムは同じなので日常と変わらない。

ストリートミュージシャンはカッコいいギターでジミヘンを流し、その横にホームレスの若いカップルが笑顔で座っている。素敵な音楽は免疫力を上げるのよ。

封鎖から新しい世界へ

ベルリンの夜の世界がシャットダウンされてかれこれ1週間。この街のアイデンティティでもある世界一のテクノクラブ、ベルグハインも閉まった。この世界検疫によって9000人以上の人たちが職を失っている。

こうなったら、黙っていないのがベルリナー。色々なクラブで毎日DJ達が無観客ライブストリーミングを始めた。なんだろうこのワクワク感。私がよく行く、ベルリンを見渡せる屋上にあるクラブからもストリーミングが流れてきた。夕焼けをバックに髪をなびかせ気持ち良さそうにプレイする女性DJ。その気持ちよさが画面を通して伝わって来る。無くなった食品棚の画像見るより、こちらの映像を見る方がどれだけ健全か。このクラブから新型コロナ陽性者も出たけれど、音楽は誰にも止められない。なるようになるわよってDJの彼女に言われているよう。

https://en.unitedwestream.berlin/? fbclid=IwAR0BY61Ix8pWJ_hVNt7LHQ9fy2Vsop9iWhsSa6I-zNeNaE0j10e1qfpIUv0

大切なのは、この文化を絶やさず継続すること。ドイツは「私たちはあなたたち芸術家を見捨てたりはしない」という声明をいち早く発表し、経済的支援を約束してくれたし、東時代を経験したベルリンには強さがある。そこには、分かち合い、助け合いの精神が見えるの。

アパートの入り口のドアにこんな貼り紙があった。
「もしあなたが体調が悪く買い物に行けない場合は、私が代わりに行くので下に電話番号と名前を書いてください」
ベルリンらしく様々な言語で書かれている。なんだか長屋のあった良き時代の日本のよう。

封鎖から新しい世界へ

せっかく頂いた人生の小休止、堂々と照れずに他人に親切にしたり、家でゆっくり自分を見つめ直す時間到来。
いつか、みんな自由になって、嫉妬心なんてバカらしくなって、愛と芸術にあふれた世界になる! きっとね。乾杯!

封鎖から新しい世界へ



Posted by エロチカ・バンブー

エロチカ・バンブー

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Erochica Bamboo
バーレスクダンサー。日本の各都市のクラブやキャバレーでショー活動した後、2003年にラスベガスにある世界で唯一のバーレスクミュージアム、Burlesque Hall of Fameで開かれるバーレスクの祭典で最優秀賞を獲得。それを機にLAに拠点を移す。2011年よりベルリンへ移りヨーロッパ、北欧で活動中。ドイツのキャバレー音楽ショー”Let’s Burlesque”のメンバーとしてドイツ各地をツアー中。