PANORAMA STORIES
ロックダウン終了から半年もかかった営業再開について! Posted on 2020/10/08 久田 恵理 チーズ熟成士 パリ
Bonjour à tous !!
私はチーズ屋の家業を継ぎ、チーズ熟成士という仕事に誇りを持って、日々お客様と向き合っております。
パリがロックダウンとなった3月17日以降も、頑張って店を閉めずに営業を続けました。
しかし、いくら私たちが店を開けても、コロナウイルスのせいで、今までのように気軽に来店できる状態にはありませんでした。
そこで、店を一時的に閉める苦渋の選択をしました。
常連のお客様からの篤い応援を頂き、残っていたチーズだけは完売させる事もできました。
チーズを選ぶ時に1番肝心な事は、そのチーズの特徴が最大限味わえる状態にあるかどうか、に尽きます。
私は常に、これまで扱ってきた約1000種類以上のチーズの情報を持っています。
これは長年の経験の蓄積によって出来るチーズ熟成士としての誇りでもあるわけです。
コンテやボーフォールなど1玉40kg前後のチーズは専用の「ソンド」と呼ばれる道具でチーズを抜き取り、僅かな味見で選びます。
選ぶ瞬間は、すべての五感を研ぎ澄まし、吟味していきます。
年月を重ねても塩気がなく、優しい風味とノアゼット感が心地よく、押し寄せてくる後味にこそ、コンテのコンテらしい所以があると言えるのです。
私はチーズを買いつける時はいつも自分の中に、「外見」「組織」「食感」「風味」や「味わい」「余韻」などいくつかの判断基準を設け、20点満点でジャッジをしています。
Fromagerie Hisadaに招かれるチーズたちは、厳正な審査で16点以上の高得点を獲得したエリートばかり。選び抜かれた最高級チーズだけが私の店の舞台の上に立つことが出来るのです。
コンクールで言えば17点以上はゴールドメダル、チーズの質の最高峰にランクインするものばかり、と言っても過言ではありません。
チーズ王国フランスでチーズを語る以上、しかも、日本人である私がここで認められるためには、さらには、ここパリでチーズ屋を経営するからこそ、一切の妥協は許されません。
16点以上のチーズが見つけられない時は、その週の買い付けは断念します。
自分が美味しいと思えない物が店頭に並ぶことは耐えられません。
お客様に提供するのに、なんでもいいわけがないからです。それが私の誇りでり、熟成士としての意地なのです。
2004年に、母である初代マダムHisadaと共にパリにチーズ専門店を開いたあの日から早くも16年、私はこの信念を変えずにチーズと向き合ってきました。
「Hisadaのチーズは味が違うね」
「いつもハズレがなくて本当に美味しい」
「シェーブルやブルーチーズが苦手だと思っていたけど、Hisadaのは食べられる」
このようなお言葉をお客様に頂くことがいつしか、自分の喜びになってきました。その言葉に恥じないよう、一生懸命チーズを選んでいます。
コロナ禍の中で、私にできる事は美味しいチーズを提供し続けることだけです。
美味しいチーズは人の心に元気と笑顔を与えます。
そして、再び店を開けた今、
この5ヶ月間の長い沈黙に負けない成果を出したいと思って頑張っています。
Hisadaのチーズを待ちわびてくれたお客様との再会は、私に新たなエネルギーを与えてくれました。
買い付けの画像を添付します。
フランスはサヴォア地方を巡った気分でご覧くださいね。
Posted by 久田 恵理
久田 恵理
▷記事一覧短大卒業後、(株)久田に新卒で入社。2004年、Fromagerie HISADAのOPEN準備スタッフとしてフランス店勤務となり、その後 約2年間フランスにて、製造、販売、熟成、輸出業務に携わる。2006年、輸入会社 KEN INTERNATIONAL JP 設立。代表に就任し、現在は、輸入者の代表として各国(フランス・イタリア・オランダ・スイス・オーストリア・スペインなどのヨーロッパ、オーストラリアなどの南半球)への出張、食材探し、及び、(株)久田 副社長代理を務める。またチーズを広めるための普及活動として、各地チーズのイベント業務、チーズ講師として活躍中。