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フランスで大流行、しかも、進化し続ける近未来豆腐(TOFU) Posted on 2022/06/27 辻 仁成 作家 パリ

 
週末は市場に買い物に行くが、ウイークデイはBIO(有機食材専門)スーパーに行くことが多い。
ほぼ週4から5の割合で顔を出しているので間違いなく常連である。
数年前まで、東京で有機食材専門店を探すのは結構至難の業で、日本滞在中は新宿にある有機専門店まで何度か足を運ばなければならなかった。
ここ最近は有機系スーパーが各地に出来、日本にもついに有機系スーパーの時代が訪れつつある。
フランスのBIOスーパー、ビオセボンが都内に展開しはじめたのも、嬉しいニュースであった。
でも、パリのBIOスーパーの数は驚くほどに多い。
一つの地区に必ず一つは見つけることが出来るし、普通のスーパーの中にBIOコーナーもあれば、BIOを謳う野菜などが普通の野菜と混ざって売られている。
フランスではBIOはkなり定着している。ちなみにBIOと書いて、ビオと読む。

ぼくがとくに最近ハマっているのが豆腐だ。
通常のスーパーではほとんどお見掛けしない豆腐も、ビオショップに行けば冷蔵ケースの半分ほどが豆腐で埋まっている。
しかもその種類の豊富さに驚かされる。
豆腐の概念をここまで破壊されると面白くなる。
ぼくのお気に入りはFilets de Tohu a L’ail des Ours つまり野性のニンニク豆腐の揚げたやつ。
軽くオーブンとかフライパンで温めて食べるのだけど、意外な美味さで、癖になる。
ニンニク入りの揚げ豆腐ってのは、確かにありだな、と唸ってしまった。
もっと上の凄いやつは、Tohu Pizza。
ピザ味の豆腐であった。
買うのに相当勇気が必要だったが、これが味はピザなんだけど、触感が揚げ豆腐なので、ううむ、なんとコメントしていいのか悩む味、・・・邪道中の邪道なのであーる。
昔、柔道部だったぼくが、生まれて初めてカラー柔道着を着たフランス人を見て、なんだこいつら馬鹿にしてんのか、と思った、あの時の感じに近かった。
でも、食べてみたらイタリアン! 
ファラフェルとか魚介の揚げ物ケーキなど中東の揚げ物に近いテイスト。もはや、豆腐などと思わないで食べれば、これはこれで、納得の味かもしれない。
息子は喜んでピザ豆腐を食べている。
BIOだし、これ食わせる方が本物のピザより断然身体にはいいのかもしれない、と思っていたら、息子がぽつんと、いける、と小さな声で呟いた。
なーるほど・・・。
 

フランスで大流行、しかも、進化し続ける近未来豆腐(TOFU)



フランスで大流行、しかも、進化し続ける近未来豆腐(TOFU)

 
さらに、BIOショップの普通の豆腐ももちろん、絹ごしから木綿まで、様々なバリエーションがあり、ちょっとイメージは異なるけど、まあ、まあ、美味しい。
けれども、進化した豆腐の方が圧倒的に数は多い。
豆腐ハンバーグ、豆腐コロッケ系はかなり充実している。
これらも各種の味があり、もはや、豆腐というのは名ばかり・・・。
豆腐ソーセージや豆腐ウインナーまであり、その上、魚介の豆腐ソーセージまで・・・。
あってもいいけど、それをさらに燻製にしていたりして、終わりが見えない。
まだ怖くて出が出せないのが、「豆腐よう」のようなもの。
「完全に腐った豆腐をハーブで包んだもの」という名前のものまである。
発酵食品なのだろうが、タイトルに二の足を踏んでおり、さすがにいまだ手が出せずにいる。
怖いもの食べたさにはほどがある。(誰が食べてるんだろう? フランス人の好奇心の強さに圧倒されてしまう)
そもそも、この豆腐ようのような物体は、得体のしれないハーブで包まれているので、本来の豆腐が何色かわからないし、その緑の部分も腐葉土のような状態で、超不気味だ。

フランスで大流行、しかも、進化し続ける近未来豆腐(TOFU)

でも、辻家は近所にいくつものBIO系のお店があって助かっている。
田舎のアパルトマンの近くにも、数件の有機系スーパーが乱立しているので、まさに、フランス人の有機食への関心の高さには目を見張るものがある。
日本食材そのものは少ないけれど、味噌にしてもゴマ油にしても彼らが開発したものは、どれも、健康を意識しているだけに、安全で、まあ、まあまあ、美味しい。
しかも値段は普通の食材と変わらないのだから、辻家のBIO運動は続くのだ。
このテーマは今後も追跡していきたいと思う。
 

フランスで大流行、しかも、進化し続ける近未来豆腐(TOFU)



フランスで大流行、しかも、進化し続ける近未来豆腐(TOFU)

フランスで大流行、しかも、進化し続ける近未来豆腐(TOFU)



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Posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。