PANORAMA STORIES
DESIGN STORIES × ISETAN ~世界で挑戦する日本人の物語~ 「挑戦の街、パリ」 Posted on 2017/10/29 Design Stories
9月末のパリ、ファッションウィーク真っ只中。ISETANとのコラボイベント DESIGN STORIES × ISETAN ~世界で挑戦する日本人の物語~ に参加の若きデザイナー田中崇順さんがパリで展示会をしているとの情報を聞きつけ、田中さんがパリに賭ける想いを聞いてきた。ファッションとパリの関係とは?
辻 divkaを立ち上げてからはどれくらいになりますか? divkaの特徴を聞かせてください。
田中 divkaを立ち上げてからは6年経ちました。僕はデザイン画は描かず、ドレーピングで服を作っています。ボディーに布をあてて作っていくという方法です。デザイン画があると、どうしても頭にある画のイメージが先行してしまってその枠から出られないのですが、ドレーピングだと自分の枠を少し超えたものを生むことができる。その喜びがあるからドレーピングを続けています。原点はロンドンですね。ロンドンの芸術大学 セントラル・セント・マーチンで勉強をしましたが、学生のときには絵を描くのが好きでしたし、かっこよくデザイン画を描くというのが学生の間ではステイタスでもありました。だけど、ある日、パターンの先生が、「君のデザインは彫刻のように作ってみたらいいんじゃないか」という提案してくれて、それ以来、立体で作るようになりました。そうすると、自分が思ってもいなかったようなものができちゃったりする。それが楽しくて、そこから今のような服作りをするようになりました。
辻 確かに、田中さんのデザインは着るというより纏うという感じがします。
田中 体ありきの服なのでハンガーにかかっていると良さが全然出ないんですが、実際に着てもらって「あ、素敵」となるのが一番の喜びですね。その驚きみたいなものを大切にしています。着てもらうまでが大変なんですけど、着てもらうと購買率が上がりますね。
辻 パリでは毎年展示会をされているのですか?
田中 毎年2回、パリにショールームを出すようになって今回で10回目になりました。最初の3回はTORANOIという合同展に出していて、そのあと、ギャラリーを借りて先輩のブランド「nude」と一緒に出させてもらい、数年前から単独でやるようになりました。僕が出しているマレ地区には小さいショールームがたくさんあります。同じ通りには世界中からdivkaと同じような規模のブランドが並びますね。期間中は世界各国から3、40人のバイヤーがきて、そのうち半分決まればいいかな、というところです。今年も30くらいですね。ここ数シーズン元気が無くなってきていますが……。
辻 ファッションが画一化されて、自分の好きなスタイル、ブランドを見つけるということがなくなってきている。どこも同じような服を売っているし。ブランドやモードの価値観が変わってきていますね。頑張っている若手のデザイナーとして、どうして、それでもパリに? どういう意気込みでパリに来てるのですか?
田中 続けるしかないと思っています。僕らは毎年パリに来て「どうだっ!」って自分たちのブランドを披露して、まだまだだな… と、落ち込んで帰っていますが(笑)。本気でクリエーションに没頭してぶつかれる相手が ”パリ” という街だと思うんです。日本のマーケットもどんどん小さくなっていますし、「売りやすいもの、みんなが着やすいもの」という方向性になっている。僕らの世代の日本のデザイナーはあまり世界に出ていかないし、勢いもないんです。一度イタリアで世界40カ国くらいから新人デザイナーを集めたイベントに参加したことがありますが、みんな自国にマーケットがないので、ミラノやパリに出てくるのが当たり前。英語も話せるし、「世界に出てきている」という特別意識はなく、ごく普通にそこにいます。日本には「売れてから世界に出る」という常識のようなものがあるし、小さくなったとはいえ、未だに日本国内にマーケットがあるから日本だけでも成り立ってしまう。パリに来ると感じますが、韓国、中国勢が押し寄せてきていて日本は負けています。昔は ”made in Japan” というのがある種のブランドだったけれど、今はもう通用しない。お客さんによっては、「あ、韓国じゃないんだ」と言われたりもします。輸入するのに関税や送料の問題がありますから、そうなると韓国のブランドは日本のブランドより安いので…… そちらの方が人気になってしまう。頑張りたいですね。
辻 でも、この5年間、世界のどこかでdivkaの服が並んでるのかと思うと素晴らしいですね。
田中 そうなんです。パリに来ないと今までの顧客もゼロになってしまう。「このコートはすぐ売れた」とか、「この服の着方が難しかった」とか、お客様からのフィードバックも頂けるのでありがたいです。
辻 しかし、今の人たちはファッションから離れていってる気がしないでもない。ファッションは個性を見せるための最初のツールなんです。人間は裸になればみんな一緒だけど、髪型と服で個性が生まれてくるわけだから、とても大切。どうしても、みんなと同じものを着てない人に目が行きますよね。今は画一化されて個性がでていないのが寂しいですね。
田中 そうですね。辻さんのおっしゃる通り、明らかに服にお金をかけなくなってます。今、ファッションが画一化されてきていて個性が出ていないというのは、女性が気合いを入れて服を着るというようなシーンが少なくなってきているからなのかも知れませんね。僕たちの作る服は “ドラマティックだ” と評されることが良くあります。その点は制作をしていく上でブランドをスタートした当初からずっと意識してきたことでもあります。divkaの服を纏うとそれだけで何者かになれるような、何か特別な体験ができるというようなそんな感覚を感じて頂けるような服作りを目指していきたいと思っています。
divkaは以下のイベントに参加します。
DESIGN STORIES × ISETAN ~世界で挑戦する日本人の物語~
■2017年 11/1(水)~ 11/7(火)
■10:30-20:00
■伊勢丹新宿店本館4階=センターパーク ステージ#4
■お問い合わせ:伊勢丹新宿店 ☎03-3352-1111(大代表) コンテンポラリースタイル2
【詳細に関して】ISETAN SHINJUKUニュースにて10月25日(水)よりご案内予定。
>>> http://isetanparknet.com/news_event/sort/park4f/
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