PANORAMA STORIES
いにしえの意志を受け継ぐ、パリの可愛い看板 Posted on 2023/09/01 ルイヤール 聖子 ライター パリ
パリを歩いていて、目線を少し上にあげてみると、可愛らしい看板があることに気づきます。
建物にぶら下がるこの看板は、ブティックやホテル、レストラン、スーパーマーケットや薬局などに使用されています。
看板にはそのお店を象徴するロゴ、店名、シンボルマークなどが描かれていて、デザインもキャッチーなものばかり。
たとえば、オペラ地区のカフェの看板にはバレリーナが描かれていました。
地域をリスペクトした看板デザインがとても素敵です。
※オペラ地区のカフェ。オペラだけに、バレリーナがコーヒーを運んでくれています。
※フランスのスーパー、モノプリ(monoprix)の看板にはシンボルマークが。
※消防署(pompiers)は街灯に赤いフィルムと文字のデコレーションを。パリの街並みにも馴染んでいます。
こうした素敵な看板文化は、いつ頃から始まったのでしょうか。
パリ3区にあるカルナヴァレ博物館で看板の歴史が見られるというので、実際に足を運んでみました。
すると、カルナヴァレ博物館に入ってすぐのところに、18〜19世紀の看板コレクションがずらりと並んでいました。
なんでも当時は、今のような住所がきちんと設定されておらず、この看板が住民の道しるべになっていたそうです。
そのほかにも看板は住人の職業、アイデンティティを表す大切なシンボルだったといいます。
※現在、パリの住所表記は「○○通り19番」とシンプルなもの。しかし番号がふられるようになったのは19世紀に入ってからでした。
※牛の看板は肉屋、ではなく宿屋(オーベルジュ)。後ろの王冠も宿屋の看板です。
つまり昔は、待ち合わせの時に「あの王冠の看板の下で、15時に」などという会話があったのかもしれませんね。
当然電気がなかった時代なので、看板はほとんどがアイアン製でした。
実は今でもそんな面影を残す看板がパリにはあって、老舗のワイン屋さんなどによく使用されています。
※パリ3区にあるワイン屋さん、ブドウが目印。
※同じくパリ3区のホテル、アイアン製の鍵がマークです。
グーグルマップと看板が一致していないのも、パリのあるあるです。
というのは、お店のファサードと店内に置かれている商品が全然違う・・・なんてことがよくあるためです。
写真の「CORDENNERIE」が意味するのは靴修理。
赤いブーツの看板にあるように、ここは靴修理のお店でした。
しかし現在ではお洒落なカフェがこの中に!
これはお店が辿ってきた歴史を消さずに、現代まで活かしているとのことです。
古い時代にも経緯を払う、フランスの素敵な一面です。
※もともとはパン屋だったアパレルブティック。アールヌーボーのデザインもそのままです。
パリだけでなく、歴史ある地方都市でも素敵な看板を見ることができます。
薬局の一例を見てみましょう。
ブルゴーニュ地方にある、20世紀初頭にできた薬局/ハーブ屋さんの店構えと看板です。
当時は薬局の看板も、他所に負けないほど目立っていたそうです。
※現代の薬局は緑の十字マークが目印。気温と時刻表示もあって、ちょっと便利です。
パリには規制があるからでしょうか、看板・広告の色合いは日本に比べ、穏やかです。
ところどころ配電ケーブルが剥き出しのお店もありますが、それも何だかパリらしくて味わい深いですね。
では最後に毎年恒例、パリ市の「年始の挨拶」看板を。
これは毎年1月にシャンゼリゼ大通りをはじめ、パリのあちこちに飾られる年始の挨拶看板です。
水彩画のような優しいカラーに癒されます。
この色合いからも分かるように、パリでは看板一つとっても景観に馴染むよう設定されています。
Posted by ルイヤール 聖子
ルイヤール 聖子
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猫と香りとアルザスの白ワインが好き。