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名前に込めるアムール。フランスと日本、猫の名づけ事情 Posted on 2025/02/09 ルイヤール 聖子 ライター パリ

 
モカちゃん、ルナちゃん、リンちゃん……。猫ちゃんの名前は、できるだけ短くて覚えやすいものが良いとされています。実はフランスでも、この「2音節」の名前が近年のトレンドに。シンプルでオリジナリティがあり、短くて覚えやすい──そんな名前が、最近のフランスで多く見られるようになりました。
 

名前に込めるアムール。フランスと日本、猫の名づけ事情

※フランスの地域猫ちゃん



 
とはいえ、日本とフランスでは、猫の名前にちょっとした違いがあります。フランスの人々は呼びやすさに加えて、ディズニーアニメや外国風の名前を好む傾向が。参考までに、2024年のオス猫の人気ランキングは、シンバ、ティグルー、ミロ、ウィロー、ゼウス、ヨーダ、ユキ、スノー、ミミ、ヴォルトの順でした。「ユキ」は日本の名前から取ったもので、とくに白猫ちゃんに人気があったとか。
一方、メス猫では、ナラ、ヴァニーユ(フランス語でバニラの意味)、ルナ、ウィロー、ユミ、ヴィーナス、ミア、ヴィオレット、ベラ、イシスがランクイン。中でも「ユミ」は、日本語の「美」に由来する名前として選ばれたそうです!
 

名前に込めるアムール。フランスと日本、猫の名づけ事情

※日本の看板猫ちゃん



 
わたしがフランスで一緒に暮らしている猫の名前は、ウンベルト(Umberto)。あまり見かけない名前ですが、これは保護施設で最初から付けられていたものでした。というのも、フランスでは犬や猫の名前にユニークなルールがあり、生まれた年ごとに決められたアルファベットで始まる名前を付けることになっています。
ウンベルトが生まれた2023年は「U」の年だったため、施設には「U」から始まる名前の子猫がたくさんいました。ちなみに、昨年2024年は「V」の年でしたので、「ビタミン(Vitamine)」や「ヴェスパ(Vespa)」などと名付けられた子猫が多く譲渡されたそうです。名前はもちろん、家族になってから自由に変更することが可能です。
 

名前に込めるアムール。フランスと日本、猫の名づけ事情

※黒猫ウンベルト



 
ウンベルトという名前は、イタリア語圏の男性名に由来しています。最初は少し長いかな? と思い、別の名前で呼んでみたのですが、彼は反応する素振りも見せません。ウンベルトと呼ばれて初めてクルッと振り返ったときには、わたしたち家族も少し笑ってしまいました。
というわけで、わたしたちは保護施設で付けられた名前をそのまま使うことに。慣れてみると、その個性的な名前さえも愛おしく感じられるようになりました。
今ではウンベルトと名の付く現地イタリアのレストランをグーグルマップで探してみたり、「いつか旅行で訪れてみたいね」と妄想話に花を咲かせてみたり。飼い猫を愛するあまり、その名前にも特別な思い入れを持っています。

しかし名前を呼ばれたからといって、人間の相手をするかどうかは猫さま次第。自由気ままで自分優先な猫だからこそ、こんなにも追いかけてしまうのかもしれません。なので名前を呼んで目を細められたとき(猫なりの愛情表現)や、ニャーと返事してくれたときには、嬉しくて思わず撫でに行ってしまいます。名前だけでなく飼い主の顔をちゃんと認識してくれていることも、たまらなく嬉しいポイントです。

ウンベルトと暮らしはじめて、まもなく一年が経ちます。今では、わたしが帰宅するときの足音やドアを開ける音を聞き分け、玄関まで迎えに来てくれるようになりました。
臆病で、最初は物陰に隠れてばかりいたウンベルト。しかし愛情を込めて名前を呼んだ回数分だけ、仲良くなれたかなと思っています。
 

自分流×帝京大学



Posted by ルイヤール 聖子

ルイヤール 聖子

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2018年渡仏。パリのディープな情報を発信。
猫と香りとアルザスの白ワインが好き。