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主役がホストでおもてなし。フランスのバースデーイベントとは Posted on 2024/04/19 尾崎 景都 日本語教師 パリ

 
アラフォーの自分にとって誕生日は嬉しいイベントでもなくなったけれど、子供時代の誕生日は特に心が躍る日だった。クリスマスのようなみんなのイベントではなく、誕生日は「自分だけが主役」と思える特別感がある。
自分が日本で過ごしてきた子供時代、友達数人と会ったり、数人からプレゼントをもらったくらいの想い出はあるものの、大々的に誕生日会を開催した記憶はない。
 

主役がホストでおもてなし。フランスのバースデーイベントとは



 
渡仏後、フランス人の友人に招待されて誕生日会へ行ったことがある。パーティー好きなお国柄のフランスでは、30、40歳などの節目で大きなバースデーイベントを開く人が多い。私が参加したパーティーはパリ市内のバーを貸し切って行われ、自由参加型の気楽なものだった。フランスでは誕生日会の主役である本人がパーティーをオーガナイズするのが通常。その日も最初の段階でかなりの量のシャンパンが準備されており、ハムやチーズなど十分な量のおつまみもテーブルに並べられていた。店の貸切料を含めた全ての料金は開催者=誕生日を迎えた本人が負担しているはずだった。ゲストは、プレゼントを贈る人もいれば手ぶらな人もいる。フランスで言う誕生日の主役は、プレゼントと祝辞を一身に受けるだけの立場ではなく、誕生日会をプロデュースし、来てくれた招待客をもてなし、楽しませ、それでいて自分も楽しむのが一番と考えている。
 

主役がホストでおもてなし。フランスのバースデーイベントとは



 
出産後はそういったパーティーから疎遠になっていたのですっかり忘れていたけれど、子供が大きくなるにつれて子供の同級生の誕生日会に誘われたり、我が子の誕生日会を開催する機会が増えた。そこで私は、フランス人のバースデー習慣を知っておいて本当に良かったと実感した。子供の世界でも同じ、「主役がおもてなし」なのだった。
会場の検討、招待客の選択、招待状の作成。出欠を取り、当日までにケーキの手配、軽食やスナック、お礼の品の準備。主役(の親)の仕事は尽きない。幼稚園~小学校低学年の誕生日会では、室内アスレチック、主役の家、公園でピクニックなどがポピュラーな会場だ。
室内アスレチックの場合は、遊び場は考えなくていいものの、会場代がかかる分、費用が上がる。
自分の家の場合は、安全に配慮した配置換えを第一に考える。そして、イベントやゲームを考えたり、時にはアニマトリス(アニマーター)と呼ばれる、子供の相手をするプロに依頼して場を盛り上げてもらう。
 

主役がホストでおもてなし。フランスのバースデーイベントとは



 
ピクニックの場合は、どれだけ走り回って大声を上げても問題ないという開放感がある反面、屋外なので季節や天候に左右されるというリスクがある。20人を超える大人数の場合には、市に問い合わせて公園の使用許可を取った方が良いのでご注意を。
小学生以上になると、映画館や美術館、プールやスケートへ招待することもある。年齢や季節に合ったレクリエーションで、来てくれた招待客に楽しんでもらう。
 

主役がホストでおもてなし。フランスのバースデーイベントとは



 
そして最後には、結婚式の引き出物さながら、主役から来てくれたみんなへ小さなプレゼントを渡す。中身はお菓子や小さなおもちゃなど。大きくなってくると文房具やカードゲームなどが入っている。「今日は来てくれてありがとう。ほんの気持ちです」と、主役がどこまでも皆さんへ「おもてなし」なのだ。
誕生日の主役がホストとなるフランス。子供の誕生日会では、子供に代わって親がほとんどの準備や配慮をする。誕生日会が終わった後は、達成感を上回る疲労感で心身共にぐったり。それでも、プレゼントに囲まれながら目を輝かせて今日の楽しかったことを語る我が子を見ると、やって良かったとこちらまで笑顔になるのだった。
 

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Posted by 尾崎 景都

尾崎 景都

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Keito Ozaki
パリ第7大学 言語音声学科 修士課程修了後、日本語教師として活動中。夫は料理人。