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パリジャンにとって最高のおやつ「ファラフェル」って?! Posted on 2022/04/28 akisa 大学院修士課程 フランス・パリ
ひとくちにパリといえども、その街の中にある一つ一つのカルチエ(地区)に現れる表情の違い、その国際色の豊かさにはいつも驚かされる。パリと言えばまず最初にフランスパンやマカロン、チーズを思い浮かべる人が多いだろう。しかし実際にフランスに住んでみると、フランス料理だけに限らず、意外にもいろいろな国のレストランが存在していることに驚く。その料理のレパートリーの多さには感動してしまうほどだ。
アフリカ料理、モロッコ料理、中華料理……そしてどの料理もとにかくおいしい。
学生の間で人気な外国料理の一つとして挙げられるのは値段もお手頃な「ファラフェル」だろう。ファラフェルとはひよこ豆、またはソラマメを香辛料と練り上げてコロッケにしたレバノンの料理であり、エジプトをはじめとする中東ではとても頻繁に食されるポピュラーな料理だ。パリではサン・ミッシェルとマレは特にファラフェルで有名な地区であり、ここを散歩すると必ずファラフェルを食べながらぶらぶらと歩いている人を見かけることができる。(面白いことに、おいしいファラフェルを巡ってサン・ミッシェル地区派とマレ地区派がいつも刃を交える。まったくフランス人はどんな小さなことでも議論をしたがる)
パリではもっちりとしたピタパンやトルティーヤにたっぷりの野菜をはさみ、サンドイッチのように食べることが多い。飲み物をつけてもだいたい10ユーロ前後で済ませることができる。外食が高いパリではなるほど、学生の強い味方でもある。
ファラフェルのもう一つの魅力は、肉が一切使われていないこと。ベジタリアンが急速に増えているパリでは、多くのベジタリアンレストランが存在するが、手軽に楽しめるファストフードのような店は依然として少ない。
本当にお肉が一切入っていないの? と疑ってしまうほどのボリュームなのに、気が付けばペロッと食べ終えてしまうファラフェルは、パリジャンにとって最高のおやつだ。
授業の休憩時間、「パリで一番評判のファラフェルはどこ?」と大学の友人たちに尋ねると、そこにいた誰もが口々に「L’As du Fallafel」を挙げた。どうやらマレ地区にあるお店で、お昼時になるといつも長蛇の列らしい。さっそくそのまま授業終わりに行ってみることにした。
Saint-Paul駅で降りてすこし歩くと、目の前に緑色のお店が現れた。平日の三時過ぎだというのに列ができていた。覗いてみると、店の中も満席だ。店員さんが列に並んでいる人に注文を取り、受け取る前に先に会計をすませ、チケットをもらう。とりあえず普通のファラフェルを頼んだ。
やっと自分たちの番になると、店員さんがピタパンにたっぷりの野菜をつめ、それに揚げたてのファラフェルを挟んでくれた。唐辛子のソースはかけるかかけないか選ぶことができる。辛い物が大好きな私は「かけないという選択肢はないです」と答えて笑われてしまった。
待ちに待ったファラフェルをようやく受け取り、道を歩きながらかぶりつく。ファラフェルがピタパンの中にごろごろと入っている。ふっくらとした生地と、揚げナスの甘さとトマトの酸味がなんとも絶妙だ。パリで一番のファラフェルという称号にも頷ける。
L’As du Fallafelのあるマレ地区は、古くからユダヤ人街としても有名で、歩いていると、”キーパ”というユダヤ教の人がかぶる小さな帽子を頭にのせた子供たちがぞろぞろと学校から出てくるのを見かける。お店から離れる時も、キーパをかぶった家族連れが並び始めており、ファラフェルは観光客やパリジャンのおやつである前に、彼らの民族食なのだということも実感した。
パリにいながら、さまざまな国の料理を味わい、見果てぬ土地に想いを馳せる。
これほど贅沢なことはあるのだろうか。パリという街は様々な国が寄せ集まってできた、ビックリ箱のような街だなぁとしみじみ思う。どこを歩いていても不意に見たことのない表情を浮かべる。そのたびに「まだパリにはこんな場所があったのか」と、私はいつも、素直に感動してしまうのだ。
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フランス文学が好きで、休みの日はどこかの美術館に入り浸っています。