PANORAMA STORIES
美食の宝庫、ノルマンディー。パリジャンの避暑地といえばこちら! Posted on 2022/07/21 ルイヤール 聖子 ライター パリ
パリジャン定番の避暑地といえば、フランス北西部のノルマンディー地方です。
パリからは電車で2時間ちょっと。
海を持たないパリに暮らす人々が、最も気軽に訪れることのできるビーチリゾートとなっています。
ノルマンディー地方は結構広く、英仏海峡に臨むコタンタン半島の沿岸部から、世界的観光地のモンサンミッシェル辺りまでの地域を指します。
そんなノルマンディーの玄関口は、高級リゾート地でもあるドーヴィル。
ドーヴィルは名画『男と女』の舞台となった場所でもあります。
“ダバダバダ、ダバダバダ…”というアンニュイな曲を一度は聞いたことがあると思います。
その名曲をBGMに、主演のふたりが歩いた町がドーヴィルなんです。
※ドーヴィルから車で30分ほど行った所にある、とても可愛らしい街ウルガット
ノルマンディーには写真のように素敵な街が各所に点在していて、コロンバージュと呼ばれる木組みの家がトレードマークになっています。
普段の気温はパリよりずっと低く、朝晩はジャケットが必要になるほど冷えます。
ただ私が訪れた時は熱波が北上中でしたから、ノルマンディーらしからぬ暑さが続いていました。
ここではとにかく時間がゆっくりと過ぎていき、一日が26時間くらいに設定されているのではないかと思うほど、皆さんゆったりしています。
とはいえ夏の間はホテルもレストランもフル回転。
海水浴の後、ノルマンディー名物のシーフードに舌鼓を打つ…といった人々で大変賑わっていました。
さてノルマンディーは美食の宝庫でもあります。
代表されるのは、あのカマンベールチーズでしょうか。
というのも、この地域は雨が多いことで有名です。
そのため牧草がよく育ち、牛も立派になります。こうしてノルマンディー地方はフランスでも有数の酪農地帯となり、カマンベールチーズ発祥の地ともなりました。
イワシや平目などのお魚もパリよりずっと安く、当然のことながら新鮮です。
ノルマンディーのお宅では、贅沢にシーフードだけのバーべーキューが開催されることも。
パリでは魚介類はちょっと高級品なので、やはりこれは海沿いに暮らす人の特権ですね。
またこちらはリンゴ酒の聖地です。
シードルを食前酒に、カルバドスを食後酒にいただくムッシュたちの姿は多く見られます。
ちなみにカルバドスはこちらのリンゴタルトにも使用されていて、お酒入りのものをタルト・ノルマンドと呼んだりもします。
名物料理でいえば、「ムール・フリット」が一番にあるでしょう。
これはムール貝の酒蒸しにフライドポテトがついてくる一品なのですが、フランスでは白ワイン+バターでムール貝を料理し、ほとんど鍋ごと出てきます。
味は二種類あって、ベーシックなタイプと、なんとロックフォール(青かびチーズ)タイプがあります。
※ロックフォール味のムール・フリット。ポテトはサクッとしています
この時ばかりは、フランスの方々はフォークを使わず手で食べます。
これは空になった貝で次のムールの身を挟み、そのまま口に入れていくという方法です。
慣れないと難しいのですが、それでもフランス人は鍋一杯のムール貝を慣れた手つきで平らげてしまいます。
※残ったソースにポテトを浸して食べるのもフランス流
味はもちろん最高です。
ベーシックなタイプはあっさりしていて、冷えた白ワインとの相性も抜群でした。
ロックフォールタイプはやはり濃厚なのですが、デザートに生クリームがたっぷりのったタルト・ノルマンド&カフェ・クレームを注文する仏人夫やその家族を見て、フランス人の乳製品の耐性がすごい…と思ってしまいました。
※牡蠣は「さっき海から引き揚げたばかり」のように新鮮で、身が引き締まっています
海・美食の他には、各地で開催されるマルシェや蚤の市も魅力的です。
いずれもパリでは味わえないほどの規模と種類で、掘り出し物もたくさん見つかります。
このように、ノルマンディー地方には豊かな自然に加え、心地よい衣食住のアイデアが詰まっています。
ココ・シャネルやマルセル・プルーストをはじめ、数々のパリジャンがノルマンディー地方に魅了された理由がよく分かりました。
Posted by ルイヤール 聖子
ルイヤール 聖子
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猫と香りとアルザスの白ワインが好き。