PANORAMA STORIES
マダム・アコのパリジェンヌ通信”素敵なラ・ブーム” Posted on 2023/08/06 Ako アーティスト/フリージャーナリスト パリ
「ラ・ブーム」と言うフランス映画をご存知ですか?
80年代に世界中で大ヒットした、フランスを代表するナチュラルビューティな女優ソフィー・マルソー13歳のデビュー作品。
ティーンの恋愛映画なのですが、音楽の素晴らしさと相まって、忘れられない映画の一つになっている方(特に女性!)も多いのではないかしら?
フランス映画であることなど知りもせず、映画館に観に行った当時10代になったばかりの私は、同世代の世界中の女の子たち同様、ビック(ソフィー・マルソー )の、初めての両思いや、お家でのダンスパーティのシーンに、キューンと心捕まれ、憧れたものでした。
親にねだって買ってもらった映画のパンフレットと、テーマソングのハート形レコードは、今でも大切にパリのアパルトマンの棚にあります。
何年か前に、パリ生まれの娘と久しぶりにビデオで観ましたが、やっぱり素敵。
しかも10代の時には気づきもしなかった映画の中に描かれていたもう一つのストーリー、脇役であるビックの両親の危うい恋愛模様も発見し、今度はこちらにジーンとさせられて。
監督はクロード・ピノトーです。
さて。このタイトル「ラ・ブーム」とは「パーティ」を意味。
映画の中でそれは示唆されていますが、フランスに住んでわかったは、このブームが “ティーンのパーティ“ であること。
フランスでは中学生にもなると、誕生日や学期末などのパーティが、大人たちのように夜に開かれるようになります。
日本では親が「そんな時間に外出なんてけしからん!」と言いそうな夜も9時くらいから。
それは“子供”だった今までのようなおやつやお食事のパーティではなく、ダンスとお喋りのパーティ=ブーム=青春の始まりです。
ティーンたちは男子も女子もおめかしをして、男子はボタンダウンシャツを着て、女の子はママンにちょっぴり口紅やマスカラをつけてもらい、星の輝きの下、パーティ会場に向かいます。
会場とは多くが「ラ・ブーム」のシーンのように自宅。
パーティ会場まで親が送り、会場になっているお家のご両親にご挨拶をし、夜中0時ちょっと前に再び迎えに行きます。
仕事で疲れていて早くベッドにもぐり込みたいからと早目に迎えに行っても、子供は盛り上がっているパーティを自分だけ一足早く抜けたがらず、親は車の中などで待つ羽目になります。
車のシート倒して半分眠りながら…。
ちなみにブームの会場であるダイニングルームから親は姿を消す=寝室にこもること、が暗黙の了解。
だからこそ、繰り広げられる、素敵なラ・ブーム。
そして新しい親子の信頼関係もつくられます。
ティーンのパーティ「ブーム」は、18歳を過ぎるころ「フェット」と言う名に変わります。
何が違うかといえば、パーティにお酒が登場するのです。そして完全に親の姿は消えます。
それまでは一応パーティ責任者として寝室に篭りながらも聞き耳を立てていた親たちは、田舎の家や、週末旅行に半強制的に旅立たなければなりません。
またはその時かかっている一番長い映画を選んで、夜中まで映画館で過ごしたり。
ともかく、フェットは仲間たちだけのもので親の存在はノーサンキュー。
親が田舎の家や週末旅行に発つことを知るやいなや、この時とばかりにフェットが開催されることもしばしばです…。
けれど私の知る限り、親たちは、我が子がハイティーンになって、素敵な友人を持ち、フェットをオーガナイズすることを誇らしく思っているもの。
なぜならフェットとは、なかなか大変な人生の中の素晴らしいひと時であることを、よく知っているからです。
だから「悪さをしちゃだめよ!」と言う言葉を一応残して、こちらはこちらの素敵な時間を過ごそうと田舎の休日へ旅立ちます。
とはいえ、我が愛するプライベート空間のスイートアパルトマンが、リビングルームのみならずキッチンからバスルームに至るまで、子供の友人たち(友人の友人や友人の恋人なども含め)に解放され、土足パーティ会場になる少々の覚悟は必要です。
そして、フェット明けに帰ってきた我が家にサプライズがないよう願います。
しかし実のところ私たち“大人”も、 年に一度くらい×友人の数、そんなフェット=ホームパーティを「子供はなしよ」と(子供たちをおばあちゃんの家や友達の家などに預け)開くので、 お相子。
そんな大人のフェットについてはまたの機会に!
Posted by Ako
Ako
▷記事一覧東京生まれ。1996年よりパリ在住。セツモードセミナー在学中にフリーライターとして活動を始める。パリ左岸に住みアートシーン、ライフスタイルなど、生のフランスを取材執筆。光のオブジェ作家、ダンスパフォーマーとしても日々活動。