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パリの老舗ワインカーブが東京に!「ルグラン・フィーユ・エ・フィス東京」 Posted on 2023/03/26 前川 大輔 ワイン商 パリ
「レストランと小売店はもうやらないよ~、はぁ」2009年フランスに降り立った僕はその当時ちょっと疲れていた。日本を離れ新天地での生活にはワクワクはしていたけれど、その前の4年間は今思えば、過労死ラインって言っても冗談には聞こえなかった。当時の僕は不振店の立て直しを任されていて、店長として文字通り朝から晩まで働いていた。ワインショップとレストランを備えたそのお店は年中無休で、ショップは昼前から営業が始まって、レストランはランチからディナーまで。ショップの営業を終えた頃になると、レストランは丁度ディナーで大盛り上がり。帰宅はほぼ毎日日付変わって25時を過ぎていた。一応日曜日はお休みだったけど、午前中は休日出勤してワイン教室をしたっけ。その午後に妻とレストランでランチするのが唯一の楽しみだった。とあるクリスマスの冬、14日連勤の合間たまたま20時に帰宅できた時に、「こんな早く帰宅できるなんてまるで今日は祝日だ、シャンパンで乾杯」って言ったら、妻にはすっかり呆れらていたな(笑)。経験を積んで体力的にも自信があった当時の僕は、それでも店舗の掃除から後片付けまでなんでも自分でこなして、何とか立て直しに道筋が見えるところまで来た。けど、ある時ピーンと張っていた糸が突然切れた、ぷっつん。
フランスのシャンパーニュ地方にあるビジネス・スクールで1年を過ごした僕は、2010年、パリに本社を構えるグループ・ルグランに入社。そこでの僕の仕事は、レストランや収集家から買い付けた古いワインや貴重なワインを日本の輸入業者に販売する、いわゆる卸売り。日本とフランスの時差があるので早い時間から仕事に取り掛かる必要があったけど、私生活を大切にするフランスだけあって、帰宅は遅くとも19時。プロを相手にする卸売りだから土日はたいてい休みで、休日出勤ももちろんなし。フランス人の同僚からは「ダイスケは朝一番に出勤して、最後まで事務所で残って仕事して、土日だってバカンス中だって仕事してるよね、働きすぎよっ、それってまじジャパニーズ・スタイル?」なんて言われることもあったけど、一日16時間、週6日は働いていた頃とは別世界だ。
そんなワーク&ライフ・バランスに充実するフランスでの10年が過ぎた頃、僕に新たなミッションが舞い込んだ。「ダイスケ、今度日本にルグランのショップを作りたい。フランスと日本の両方を知っていて、小売業の経験もあるおまえにこのプロジェクトを任せたい」。パリのルグランは1880年に創業した老舗ワインショップで、ショップにレストランが併設されている。そう何を隠そう、僕がかつて日本で立て直しを図っていたあのショップ兼レストランのモデルだったのだ。なんという、運命のいたずらか。僕は正直迷った。でも心のどこかで、何か新しいチャレンジも欲していた。コロナ禍の影響でこのプロジェクトは一時凍結になっていたけど、コロナからの出口に薄日が差し始めた2021年、僕はこのプロジェクトを受けることを決心した。かつて立て直しに奔走して、ショップとレストランを兼ねたこのビジネスモデルの酸いも甘いも舐めた僕が、日本で同じようなプロジェクトを推進する。僕のためにあるプロジェクトと感じたし、これまでの経験を全て注ぎ込むことができるまたとない機会だった。
2021年、また僕は奔走した。そして2022年12月、東京・広尾にルグラン初の海外旗艦店ルグラン・フィーユ・エ・フィス東京が開業した。ショップがあってバーカウンターとテラス席があり、店舗面積350平米を超える文字通り日本での旗艦店。フランスワインのみ約500種類を扱っていて、ワインを購入するだけでなくワインやおつまみも楽しめる空間だ。パリ本店をイメージした外観と内観は、パリへプチ旅行した気分にもなれるはず。地下にあるサロンでは生産者を招いてのセミナーや音楽とワインの会など、楽しいイベントも行っていきたい。個人の愛好家向けのお店だから、土日も営業しているし、夜も21時まで営業している。でもお客様とのワインの話はやっぱり楽しいよね、この間ちょうどお店でワイン会を開催した時にそう思った。10年前は「レストランと小売店はもうやらないよ~」なんて思っていたけど、今は「レストランと小売店はやっぱり楽しいね~」かな。
ルグラン・フィーユ・エ・フィス東京は、多くのメンバーの協力を得ながら、ルグランの歴史とエスプリに加えて、僕のこれまでの経験を注ぎ込んだ集大成のお店です。僕の過去の経験から、お客様だけでなく、働くスタッフにも優しいお店作りをしてきました。開店早々には多くのお客様にご来店いただきまして、ありがとうございます。が、人生そんなに甘くない(泣)。ここでもまた試行錯誤しながら奔走していますので、デザインストーリーズの読者の皆さま、是非お店まで足を運んでくださいませ!
ルグラン・フィーユ・エ・フィス東京
住所:〒106-0047東京都港区南麻布5丁目1-27アジア教育福祉財団ビル
電話:03-5424-6041
メールアドレス:contactjp@caves-legrand.com
月火:定休日(祝日の場合は営業)
水木金:12:00から21:00(バーLO 20:30)
土日祝日:11:00から20:00(バーLO 19:30)
https://www.caves-legrand.com/la-cave-tokyo
https://www.instagram.com/caveslegrand_jp/