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「子供たちと料理をしよう」 Posted on 2020/02/19 辻 仁成 作家 パリ

神戸市のこども家庭センター、いわゆる児童相談所で、親から追い出された小6の女の子が深夜三時過ぎに保護を求めたというのに「警察に行って」とインターホン越しに追い返した児相の職員、あなた、何やってんの、と怒りが収まらない。なんでこういう応対が人間としてできるのか、と思う。一歩間違えていたら、大変なことが起きていた可能性もある。大人が子供に対して育児放棄したり、暴力をふるったり、無関心になったり、あげくは児相の職員が助けを求めてきた小学6年生の女の子をインターホン越しに追い返す、世も末だ。この職員だけの問題じゃなく、児相や神戸市、あるいはそもそもこの子の親とか、周囲の大人たちにも少しずつ問題がある、ということだろう。

「子供たちと料理をしよう」



たしかに育児は難しいし、小6くらいの子の扱いは大変だと思う。親だって大変なことは理解できる。でも、そういう時には子供と何かを一緒にするのがいい。子育てに不安を感じるならば、いい提案がある。子供が幼いうちに、一緒にキッチンに立ち、料理をしたらいいのだ。あえて危険な包丁とかナイフを持たせて、あえて肉や魚を切らせてみたらいい。ぼくは子育ての一環に料理を置いてきた。お米の研ぎ方や卵焼きの作り方などから教えた。包丁は危険だけど、その危険具合をきちんと丁寧に教えた。もっとも子供は危険が好きなので、真剣になる。真剣にさせるということも大事だ。火を使う料理も心配になるけれど、火のつけ方、消し方を子供は必至に覚えていく。ガスコンロを使いこなせるようになることで大きな達成感を子供は持つことが出来る。親がいない時には包丁もコンロも使っちゃだめだよ、と強く言い聞かせる。ルールが生まれる。これも大事である。次第に、大人と子供の立場の違いも鮮明になってくる。子供は自分よりもいろいろと知っている人に興味を持つので、親子の関係も安定してくる。魚の切り身しか知らない子供が多い現代だからこそ、ぼくはあえて、幼い息子の目の前で魚を捌いてみせたことがあった。鶏肉を解体してみせたことがあった。その肉を切り、骨でダシを取った。あますところなく生き物を食べること。こういうことをきちんと教えることで子供は世の中のことを知っていく。料理くらい親子の絆を強くさせるものはないのだ。

最近はうちの子にかわって、たまに遊びに来る(逃げてくる)ニコラ君にぼくは料理を教えている。一緒にピザを作ったり、スパゲティを作ったり、グラタンを作ったり、お菓子も作る。そうやって出来たものをみんなで食べる。「はい、今日のシェフはニコラだよ」というと拍手が起きる。子供は恥ずかしそうにしながらも自信をつけていく。こういうことがとっても大事なのである。



自分流×帝京大学