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パリの美味いもの日記「ミュージシャンに愛される、大行列のクルドサンド」 Posted on 2023/03/04 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ぼくがバンドの練習で頻繁に利用する、パリ10区のスタジオ・ブルー。
そのすぐそばにあり、そのスタジオに集まるミュージシャンたちで溢れかえる、クルド人のサンドイッチ屋が、ほんとうに、美味しいのです。
サンドイッチといっても、日本の上品な食パンサンドではありません。
石焼きの窯で作られたピタパンのようなものに、肉や野菜を挟んで、ソースをかけたものなのですが、ひゃああ、これが、肉汁が口腔に溢れて、大変なうまさなのであります。

クルド人とは、イラン、イラク、トルコ、シリア、旧ソ連の国境山岳地帯,いわゆるクルディスターン地方に住む民族のことで、全世界で2000万人ほどがいると言われています。国を持たない民族としては最大の人口をほこっています。

この大行列が出来るサンドイッチ屋、並ぶこと十分、出来上がったサンドにかぶりついて、超びっくり。なに、これ~~~、食べたことない触感っ~、美味すぎる!!!!!

パリの美味いもの日記「ミュージシャンに愛される、大行列のクルドサンド」

パリ10区のフォーブル・サン・ドニ通りにこの名店「Urfa Dürüm」があります。
昼時ともなれば長蛇の列で大混雑。ケバブとも違うし、アメリカのラップサンドとも違うし、ユダヤ人のファラフェルでもないし、似てるけどレバノンサンドとも違うし、なんと評していいのでしょう。これがクルドサンドなるものなのです。
インド料理に出てくるナン、あれをもう少し柔らかくもちもちに焼いたものに、いろいろな具材を挟んでぐるぐると丸めて、つまりラップして食べるサンドウッチなのです!!! 
美味い!

パリの美味いもの日記「ミュージシャンに愛される、大行列のクルドサンド」



パリの美味いもの日記「ミュージシャンに愛される、大行列のクルドサンド」

窯焼きのナン風パンに野菜や肉を載せ、巻いて食べるのですが、もちもち感の絶妙の歯ごたえ、今まで、食べたことがなかった驚きの触感でした。こんなもの知らなかった。
ここが美味しいよ、と教えてくれたのは、ミュージシャンの仲間たちでした。
「ツジー、あのサンド食べないと」

この辺に暮らしているという常連のアフリカ出身のミュージシャンが得意顔で、「うまいだろ。やみつきさ」と微笑んで自慢しておりました。
この地区はインド、パキスタン、北アフリカ、中東、アラブ、中国などの料理店がひしめいていて、白人よりも、どちらかというと移民件の人たちが多く暮らす地区でもあります。
先日、この辺で大きなデモがあり、暴動に発展し、ニュースになっていました。血が熱い人たちの町です。
なので、在仏の日本人たちもこのサンドウィッチ屋の存在はあまり知られていないのです。

手打ちそばのように、店頭で職人がパン生地を練って作っているじゃありませんか、手打ちなんだ、すごいぞ!

パリの美味いもの日記「ミュージシャンに愛される、大行列のクルドサンド」

それをピザのような感じで、窯で焼くのです。
だいたい、5分くらいで焼きあがります。でも、何が入っているのだろう。あのもちもち感は他では味わったことがない。
ううう、知りたい。
きっと粉の配分とかがスペシャルなんでしょうね。
手打ちのパン、あの窯で焼くことで出る香ばしさが決めてかもしれません。



パリの美味いもの日記「ミュージシャンに愛される、大行列のクルドサンド」

ひき肉(つくね?)、若鳥(焼き鳥?)、子羊(ケバブ?)など、いろいろな具材を挟んで食べるのですが、パーカッショニストのジョゼが言ってましたが、ベジタリアンという野菜だけのサンドが一番人気なんだとか。
クレモンティーヌのマネージャーのルミさんが、店の軒先でサンドを頬張っていました。
おお、日本人おるやん!!!

値段も7ユーロから8.5ユーロの間で、若い子たちには有難い安さで、しかも、けっこうな量もあり食べ応え十分でした。
クルド人ってこんなに美味しいものを食べていたのか、という驚きのサンドウィッチでしたよ。これはおススメです。

パリの美味いもの日記「ミュージシャンに愛される、大行列のクルドサンド」

周囲を見ていると常連さんの中には、このラップされたサンドをわざと平いて、パンと中身を別々で上品に食べてる人もおりました。
真似してみたが、確かに、うまい。がぶりつくのもいいけど、フォークとナイフで上品に食べると、さらに別の世界が広がるという寸法です。(ただし、この店にはフォークとナイフはないのですが、あはは)

特製のラッシー風のヨーグルトドリンクが、塩味で、これがこのサンドとまた絶妙にあう。塩味のヨーグルトドリンクがクルド人の故郷を想像させます。きっと原野が続く、広大な場所なのでしょうね。そこでのどかに育った人たちの本当に贅沢なサンドウィッチでした。

国がないというのはいったいどういう感覚なのでしょうね。日本人にはクルドと聞くと「クルド難民」のイメージしかないのですけど、なかなか贅沢なものを食べている、素晴らしい文化を持った方々でした。なにより、店員さんがみなさん男前である上に超優しいのです。

パリの美味いもの日記「ミュージシャンに愛される、大行列のクルドサンド」

パリで大行列ができるクルド人トラディショナルサンドウィッチ、パリを訪れるならば、これは食べない手はないと思います。ちょっと中心地からは離れているけど、マレ地区のユダヤ人街で食べるファラフェルに負けない絶品サンドウィッチでしたよ。

父ちゃんの、おススメ!!!

パリの美味いもの日記「ミュージシャンに愛される、大行列のクルドサンド」



パリの美味いもの日記「ミュージシャンに愛される、大行列のクルドサンド」

エディットピアフも立った。ビートルズも立った。ローリングストーンズも、マドンナも、スティングも立った。オランピア劇場でのライブが近づいてきました。バンド内もこうやって切磋琢磨しております。ファイト!
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