JINSEI STORIES
パリあるある情報「サヨナライツカとイツカサヨナラ」 Posted on 2023/01/02 辻 仁成 作家 パリ
1月のパリの風物詩といえば、そこら中に捨てられたクリスマスツリーでしょうか?
フランスは本物のモミの木を家に飾ります。うちの子の学校でも12月頭に販売のお知らせが。
で、12月いっぱい活躍したモミの木は年が明けると、捨てられちゃうんです。
モミの木のことを仏語で「サパン」と言いますよ。
大小様々なサパンが道端に投棄されていきます。ボロボロあのギザギザがとれるので、巨大なビニール袋が買った時についています。でも、そんなものに入れて捨てる人は少ない。
なぜなら、入れる時にボロボロ家の中で枝みたいなギザギザ葉っぱが落ちていくからです。
だから、みんな外まで神経質に運んで、外出た途端、ボン! ずるずると引きずります(笑)。
投棄されたサパンを収集車が回収していきます。
1月になると公園なんかにサパン投棄所が出現。
太い幹の方を掴んで、お父さん方がずるずると引きずるようにして持ってきては、ポイ。
なんか、クリスマスあとの儚さを物語ってますね。
街角に捨てられたサパン、抱きしめたくなるんです。涙が出そうになったり、拝んだり、手をふったり・・・。
きっと家族の幸せをたくさん一緒に眺めてきたのにね、ずるずる、ポイ。
現代詩でも書きたくなるような光景じゃないすか? そこにとっても人間の人間らしいものが横たわっている。
そういえば日本の門松は神社などで焚き上げしますよね? フランスはどうなってるんだろう? 調べました。
やはり、このままじゃよくない、と言うことで・・・。
フランスでは役目を終えたサパンは集められ、粉砕されて腐葉土になって再利用されています。
よかった。安心しました。腐葉土か・・・。う、これも切ない。
クリスマスの朝にはサパンの袂にプレゼントが並びます。子供たちはサパンの夢を見て育ってるんです。
でも、1月になると、もうその夢は終わっています。
それが人生というものかなぁ。
うちはプラスティック製のサパンを使ってましたよ。投棄するのが嫌だったからじゃなく、経済的だったから。
カトリックのフランスではやはり本物のモミの木じゃないとだめなんでしょうね。
この時期、ずるずる、ポイが真っ盛りです。
サヨナラサパン! サヨナライツカ!
お知らせです。
地球カレッジからのお知らせです。
今月の文章教室は1月29日になります。
「エッセイの書き方教室、第1回」
今回の地球カレッジ「文章教室」は、どうやってエッセイを構想し、実際に書き、また、推敲をしていくのか、についての講座となります。課題応募されたエッセイの中から選ばれた数本のエッセイを、辻仁成が細かく指導、推敲、研磨していきます。
「エッセイ依頼内容」
今年最初の課題は、また一から、食にまつわるエッセイとなります。
「お子さんやパートナー、家族、同居人に日々作る、作ってもらっている、頂いている、ごはん。外食も含め」について、その人生の深部、喜怒哀楽を書いてください。題して、「日々のごはん」です。字数は1000字前後、1500字以内、とします。締め切りは1月22日とさせていただきます。
詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックくださいませ。