JINSEI STORIES
人生は後始末「本日公開」 Posted on 2017/05/20 辻 仁成 作家 パリ
映画「TOKYOデシベル」が本日公開となります。
今日、主演の松岡充さんとユナイテッド・シネマ豊洲で舞台挨拶をやります。
そのあと、名古屋に移動し、ユナイテッド・シネマ豊橋18でも。
さらに翌日、博多のユナイテッド・シネマキャナルシティ13でも舞台挨拶を行う予定です。
その先のことはこの記事を書いている現段階ではわかりませんが、全部の公開館で毎上映前に観客の皆さんにご挨拶をしたい気分です。
あるいは、こっそり一番後ろの席で一緒に観ているかもしれません。
観客の皆さんと一緒に映画を観るのは緊張します。
コメディ映画であれば笑い声で受けたかどうかがわかりますが、
TOKYOデシベルのような文芸作品はまったくわかりません。
昔、前列のお客さんがうたたねをされていたことがあって、ショックを受けたことがありました(笑)。
逆に、食い入るように前かがみになって見入っているお客さんもいました。
その人の瞳の輝きがいまだ忘れられません。
映画が終わり、灯りが劇場に点ったとき、うっすらと微笑むその人の横顔。
嬉しかったです。
1999年、最初の劇場映画「千年旅人」がベネチア国際映画祭の批評家週間にノミネートされ一番大きな劇場で上映されたとき、小生は人生で一番の緊張を抱え観客席の中心に座しておりました。満席でした。
お客さんの顔など見えません。受けているのかどうかさえわからない。
死をテーマにした重たい作品でしたから、暗い感じ。逃げ出したかった。
しかし、エンディングロールがはじまってもお客さんは立ち上がらなかった。
劇場に灯りが点ると皆さんが一斉に小生を振り返り、立ち上がりはじめたのです。
そして、拍手。数分も続いた暖かい拍手でした。
ホテルまでの沿道にもたくさんの人が並び、握手を求められました。
何か魂の内側にうっすらと光りが明滅する感じを覚えたのです。
―人の心に何かを残す―
自分はそういう映画や小説や作品を作っていかなきゃ、と思ったのでした。
気が付くと、この作品で9本目の監督作品…。
今日、明日、小生は映画館のどこかから、お客さんの姿を見ています。ええ、ドキドキしながら。
わずか90分の作品ですけど、
劇場に灯りが点ったとき、皆さんの心に何かが残る映画であればいいなぁと願ってやみません。
静かで、見逃されそうな、ささやかな世界を扱った小さな映画なのです。
でも、小生はそういう世界観を愛してやみません。
この映画に関わったすべての役者、スタッフ、関係者の思いが投影されています。
皆さんに映画館でこの作品をご覧頂けたらそれ以上の励みはありません。
今日の後始末。
「そして10本目の映画にきっと向かうのだろう。生きてる間に」
「TOKYOデシベル」2017年 5月20日(土)ユナイテッドシネマ系列にて全国一斉ロードショー!
◎ユナイテッド・シネマ豊洲(東京)
◎ユナイテッド・シネマ札幌(北海道)
◎ユナイテッド・シネマ豊橋18(愛知)
◎シネプレックス枚方(大阪)
◎ユナイテッド・シネマキャナルシティ13(福岡) にて上映。
【舞台挨拶のお知らせ】
以下の劇場で舞台挨拶をやります。ぜひ、お近くの皆さん、足を運んでください。
すがすがしい顔でお会いできると思います。
◎5/20(土)ユナイテッド・シネマ豊洲 10:00の回上映終了後 登壇者:松岡充、辻仁成監督
◎5/20(土)ユナイテッド・シネマ豊橋18 14:50の回上映終了後 登壇者:辻仁成監督
◎5/21(日)ユナイテッド・シネマキャナルシティ13 10:00の回上映終了後 登壇者:辻仁成監督
舞台挨拶のチケットは下記にてお求め下さい。
※インターネットオンライン販売:上記、各劇場の公式サイトよりご購入下さい。
※劇場チケット売場:各劇場窓口にてご購入下さい。
※先着販売のため、規定枚数に達し次第販売を終了させていただきます。予めご了承ください。
よろしくお願いいたします。